フィルタープレスとは?仕組み・種類・選び方を専門メーカーが徹底解説
脱水機の型番は分かっても、なぜその機種が自社の廃水に合うのかまで説明できる担当者は多くありません。
原因は、装置のカタログ値だけを見て、処理する液体の性質から選定を始めていないところにあります。
フィルタープレスの仕組みを工程ごとにほどき、種類ごとの到達点と、選ぶときに見る順番を並べます。
単純加圧式は構造が簡素で、導入費用も抑えられます。脱水しやすい性質のスラリーなら、これで十分に足ります。
圧搾式はろ室にダイヤフラムと呼ばれる膜を持ち、ろ過のあとに膜を膨らませてケーキを絞ります。
同じスラリーでも、圧搾を加えるだけで含水率が数パーセント下がります。年間の処理量が多い工場ほど、この差が金額になって効いてきます。
スクリュープレスや遠心分離機では届かない含水率50〜70%の領域まで水を抜けることが、フィルタープレスの立ち位置です。
遠心分離機からフィルタープレスに切り替えると、含水率で10ポイント以上の差が出る例があります。
年間1,000トンの汚泥を処理し、産廃処理費を1トンあたり2万円とすると、重量が15%減るだけで年300万円の差になります。
一方で、フィルタープレスは1サイクルごとに止まるバッチ運転です。24時間止めずに流し続けたい工程では、連続式のほうが合います。
フィルタープレスとは、圧力で固体と液体を分ける脱水装置のこと
フィルタープレスは、液体に微細な固体が混じったドロドロの液体(スラリー)に圧力をかけ、固体と液体を分ける装置です。 装置の中には、液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター(ろ布)を張ったろ過板が何十枚も並んでいます。 このろ過板を油圧で強く締め付け、密閉した空間にスラリーを押し込むと、液体だけがろ布を抜けて外に出ていきます。 残った固体は板状に固まって取り出されます。この固形物を、現場ではケーキと呼びます。 ケーキがどれだけ乾いているかを示す数字が、分離後の固形分に残る水分の割合(含水率)です。 産業廃棄物の処分費は重量で決まるため、含水率を下げることがそのまま費用の削減になります。沈殿や遠心分離との根本的な違い
沈殿槽は重力、遠心分離機は回転による遠心力を使います。どちらも「重さの差」で分ける方式です。 そのため粒子が細かく軽いスラリーでは、いつまでも分離が進まず、上澄みが濁ったままになります。 フィルタープレスは重さではなく、ろ布という物理的な壁で粒子を止めます。粒子が細かくても捕まえられる理由はここにあります。閉板から洗浄までの6工程で含水率が決まる
フィルタープレスの脱水は、6つの工程を順に通って1サイクルが完結します。どの工程で手を抜いても、最後の含水率に跳ね返ります。第1工程 閉板
油圧でろ過板を締め付け、板と板のあいだにろ室と呼ばれる密閉空間を作ります。 締め付けが甘いと、運転中にスラリーが板の隙間から漏れます。ここが全工程の土台です。第2工程 スラリーの圧入
ポンプでスラリーをろ室に送り込みます。ここで一気に高い圧力をかけると、粒子がろ布の目に食い込んで詰まります。 最初は低い圧力でゆっくり送り、ろ布の表面に固体の層を作ることから始めます。 この層ができてしまえば、あとは層そのものがフィルターの役目を果たします。第3工程 ろ過
圧入を続けると、ろ布の表面に積み重なる固体の層(ケーキ層)が厚くなっていきます。 層が厚くなるほど液体は通りにくくなり、ろ過の速度は落ちていきます。 速度が落ちきる前に次の工程へ移るか、もう少し粘るか。この見極めが1サイクルの時間を左右します。第4工程 圧搾
ろ過だけでは、ケーキの中の隙間に水が残ります。ここに外から力を加えて絞り上げるのが圧搾です。 マキノは大気圧の約15倍に相当する圧力(1.5MPa)まで圧搾できる設計を持っています。 ただし、常に最大圧力が正解ではありません。粘り気の強いスラリーに急な高圧をかけると、隙間が閉じてかえって水が抜けなくなります。第5工程 ケーキの剥離と排出
締め付けを解いてろ過板を開き、ケーキを落とします。ここで剥がれ残りが出ると、次のサイクルの圧入が不安定になります。 剥離のよさはろ布の素材と織り方で大きく変わるため、含水率と同じくらい選定に効いてきます。第6工程 ろ布の洗浄
ろ布に残った微細な粒子を高圧水で洗い流し、次のサイクルに備えます。 この洗浄を省くと目詰まりが進み、ろ過の速度が落ちて含水率も悪化します。 全自動機では、閉板からこの洗浄までを人手をかけずに回します。単純加圧式と圧搾式で到達できる含水率が変わる
フィルタープレスは大きく2つに分かれます。分かれ目は、第4工程の圧搾を行うかどうかです。| 方式 | 工程 | 向いている現場 |
|---|---|---|
| 単純加圧式 | 圧入とろ過のみ | 脱水しやすいスラリー・処理量が読める工程 |
| 圧搾式 | 圧入・ろ過に圧搾を追加 | 含水率を下げたい工程・産廃費の比重が大きい工場 |
自動化の度合いでも選択肢が分かれる
手動で1枚ずつろ過板を開く機種から、圧入からケーキ排出、ろ布洗浄までを無人で回す全自動機まで幅があります。 夜間も連続で運転したい現場では全自動機が前提になります。1日1回の運転で足りる現場なら、半自動機や手動機のほうが投資を抑えられます。 処理量だけでなく、何人が何時間その装置に張り付くかで選ぶ機種は変わります。遠心分離機やベルトプレスと比べて含水率で優位に立つ
脱水方式を横に並べると、フィルタープレスの位置づけがはっきりします。| 方式 | 脱水後の含水率 | 特徴 |
|---|---|---|
| フィルタープレス | 50〜70% | 加圧ろ過。微細粒子を捕まえ、含水率を最も下げられる |
| 遠心分離機 | 70〜85% | 連続運転に向く。細かい粒子は逃げやすい |
| ベルトプレス | 85%以上 | 大量処理に向く。脱水の深さは求めにくい |
選定は処理量ではなくスラリーの性状から決める
機種選定でつまずく原因のほとんどは、処理量だけを条件にして装置の大きさを決めてしまうところにあります。 同じ1日10トンでも、粒子が細かいスラリーと粗いスラリーではろ過にかかる時間がまるで違います。 先に測るべきは量ではなく、粒子径・粘度・pH・固形分濃度です。テクニカルセンターでのテストで条件を確定させる
マキノでは、愛知県常滑市の本社テクニカルセンターで実際のスラリーを使ったテストを行っています。 必要な量はスラリーの性質によりますが、おおむね10リットルからポリタンク1本ほどあればテストを進められます。 このテストで、最適な圧力の上げ方、ろ布の素材と織り方、1サイクルにかかる時間を数字で確定させます。導入後に「思ったより脱水できない」と気づく事態は、ここで防げます。ジャストサイズで選ぶと維持費まで下がる
大きめの機種を選んでおけば安心という考え方は、フィルタープレスでは裏目に出ます。 ろ過板の枚数が増えれば、交換するろ布の枚数も洗浄に使う水も増えます。設置スペースと動力費も膨らみます。 テストで1サイクルの時間が縮まると分かれば、小さい機種のままで目標の処理量に届きます。初期費用と維持費の両方が下がります。導入判断は産廃処理費の削減額で計算する
フィルタープレスの投資判断は、装置の価格ではなく、処分費がいくら減るかで組み立てます。 含水率が5%下がると、年間の廃棄物重量は数百トン単位で軽くなります。処分費を1トンあたり2万円とすれば、年数百万円が浮く計算です。 運搬便数と焼却燃料も同時に減るため、CO2排出量の削減としても数えられます。 投資回収の期間は、削減額の大きさ次第で1〜3年に収まる例が多くなっています。 適切に手入れをすれば20年から30年は動く設備なので、回収後の年月がそのまま利益として残ります。 マキノは1932年の創業以来、6,000例を超える納入を重ねてきました。化学・鉄鋼・半導体・食品・リサイクルと、業種ごとに違うスラリーへ向き合ってきた蓄積が、選定の精度を支えています。脱水機選びの精度は、スラリーを測ったかどうかで決まる
フィルタープレスは、圧力でスラリーから水を抜く装置です。閉板から圧入・ろ過・圧搾・剥離・ろ布洗浄までの6工程を回して、含水率50〜70%まで脱水します。 単純加圧式と圧搾式の違いは圧搾工程の有無にあり、産廃費の比重が大きい工場ほど圧搾式が効いてきます。 そして選定を決めるのは、処理量ではなくスラリーの性状です。粒子径・粘度・pHを測れば、必要な圧力もろ布も機種の大きさも決まります。 逆に測らずに選ぶと、過剰な設備を買うか、性能不足で作り直すかのどちらかになります。 現場のスラリーを10リットル送っていただければ、そこから先は数字で判断できます。ご質問・ご相談など お気軽にお問い合わせください
FAQ|よくある質問
Q:フィルタープレスの導入費用はどれくらいですか?
処理量・方式・自動化の度合いで大きく変わるため、一律の価格はありません。 判断の目安になるのは、産廃処理費がいくら減るかです。含水率が5%下がれば年数百万円の削減になる工場もあり、1〜3年で回収できる例が多くなっています。 処理量と現状の処分費をお知らせいただければ、試算とあわせて機種をご提案します。
Q:フィルタープレスは何年くらい使えますか?
手入れを続ければ20年から30年は稼働します。本体の骨格は長く持つ一方、ろ布・パッキン・油圧まわりは消耗品です。 消耗品を計画的に替えているかどうかで寿命は変わります。20年を超えた機械でも、オーバーホールで性能が戻る場合があります。
Q:どんなスラリーでも脱水できますか?
粒子が細かく脱水しにくいスラリーほど、フィルタープレスの出番になります。粘度が高いもの、酸やアルカリを含むものにも材質を変えて対応します。 ただし性状によって最適な圧力とろ布は変わります。実際のスラリーでテストしてから仕様を決めます。
Q:テストに出すサンプルはどれくらい必要ですか?
スラリーの性質によりますが、おおむね10リットルからポリタンク1本ほどで試験を進められます。 あわせて、1日の処理量・固形分濃度・pH・現在の脱水方法をお知らせください。テスト条件を絞り込めるぶん、結果が出るまでの日数が短くなります。