2026年廃棄物処理法改正 マニフェストにPRTR物質の含有量記載が義務化される
2026年廃棄物処理法改正でマニフェストが変わる
私はこれまで多くの製造現場の担当者と対話を重ねてきましたが、産廃の書類管理というと「マニフェストを発行して、処理業者に渡せばいい」という認識が大半でした。 しかし2026年の廃棄物処理法施行規則の改正は、その前提を大きく塗り替えるものです。 改正の核心は、産業廃棄物の委託契約書とマニフェストに、PRTR対象化学物質の含有量を記載する義務が加わる点にあります。PRTRとは
PRTRとは、化学物質排出把握管理促進法(化管法)に基づく制度です。 事業者が対象化学物質の排出量・移動量を把握して行政に届け出る仕組みであり、現在約500物質が指定されています。 2026年の改正では、廃棄物として排出する汚泥や廃液の中に、こうしたPRTR対象物質が「どれだけ含まれているか」をマニフェストに明記することが求められるようになります。 つまり「処理業者に渡せば終わり」という管理から、「何を渡したかを自社で把握・記録する」管理への移行です。 この変化は、産廃の排出量が多い製造業において、特に対応工数の大きい義務となります。違反した場合の罰則
違反した場合の罰則についても確認しておきましょう。 廃棄物処理法では、マニフェスト記載義務の違反に対して行政指導・改善命令が発動されるケースがあり、繰り返し違反が認定された場合には業務停止命令や罰則規定の適用対象となる可能性があります。 義務化への対応を「いずれ」と先送りにするリスクは、法的コスト以上に大きいといえます。PRTR義務化で製造現場に求められる変化
今回の改正が製造現場に求めているのは、化学物質の管理を「排出後の記録」ではなく「排出前の把握」にシフトすることです。 これはどういうことか、具体的に整理します。 従来のマニフェスト管理は、廃棄物の種類と重量を記録すれば基本的に要件を満たしていました。 しかし改正後は、排出する産業廃棄物にPRTR対象物質が含まれる場合、その物質名と含有量を記載する必要があります。製造業で対象になりやすい物質と業種
製造業で汚泥・廃液として排出される産業廃棄物に多く含まれるPRTR対象物質の代表例としては、トルエン・キシレン・鉛化合物・六価クロム・ニッケル化合物・亜鉛化合物などが挙げられます。 表面処理・めっき・塗装・金属加工・化学合成といった製造プロセスを持つ工場では、こうした物質が汚泥中に混入しやすく、今後の記録管理の対象となる可能性が高いといえます。中小企業も対象になるのか
中小企業も適用対象になるのかという点は、多くの担当者が気にされる疑問です。 PRTR制度の届出義務については規模要件(従業員数や取扱量)がありますが、マニフェストへの含有量記載義務は廃棄物処理法の改正として課されるものであり、産業廃棄物を排出するすべての事業者が対象になります。 製造規模にかかわらず、汚泥や廃液にPRTR対象物質が含まれる場合は記載が必要になる点を見落とさないようにしてください。 「うちの汚泥に何が含まれているかを把握していない」という状態では、そもそもマニフェストに記載できません。 これが今回の改正の本質的な課題です。記録義務の整備よりも先に、汚泥の成分を「知る体制」を整えることが優先されます。汚泥の成分管理を「勘」から「記録」に変えるために必要なこと
成分把握のために何をすればよいかと問われたとき、多くの現場が最初に検討するのは定期的な汚泥分析(第三者機関への分析依頼)です。 これは確かに必要なステップですが、分析結果を継続的に活用するには、分析した汚泥の「状態」が安定していることが前提になります。 現実の製造現場では、生産品種の切り替えや季節変動、原材料のロット差などで汚泥の性状が変わりやすい状況があります。 性状がばらつく汚泥を1回分析しても、次回のマニフェスト記載に使える根拠にはなりにくいのです。固液分離の精度が成分把握の安定につながる
ここに、固液分離プロセスの精度を高めることが成分管理の安定化に直結するという構造があります。 固液分離の精度が高まると、汚泥(ケーキ)に含まれる成分が安定します。 液体側(ろ液)と固体側(脱水ケーキ)の分離がきちんとできていれば、「どの工程由来のどの成分がケーキ側に残るか」が再現性のある形で把握できるようになります。 逆にいえば、固液分離の精度が低く、ろ過の状態がバッチごとにばらつく現場では、汚泥の成分が安定せず、定期分析の結果を代表値として使うことが難しくなります。 PRTR義務化への対応を、分析費用の問題としてだけ捉えず、固液分離プロセス全体の管理精度の問題として見直すことが、実務的な対応の近道です。フィルタープレスによる固液分離がPRTR対応を合理化できる理由
ここで、フィルタープレスによる固液分離がPRTR対応においてどう機能するかを整理します。 フィルタープレスは、加圧によってスラリー(液体に微細な固体が混じったドロドロの液体)を強制的に分離する設備です。 遠心分離機やベルトプレスと比較して、脱水ケーキの含水率(分離後の固形分に残る水分の割合)を低く抑えられることが最大の特徴です。 含水率でいえば、ベルトプレスが85%以上、遠心分離機が70〜85%程度なのに対し、フィルタープレスは50〜70%台での安定運転が可能です。 PRTR対応の文脈でこの性能が意味するのは、次の2点です。 第一に、液体と固体の分離が明確になるため、汚泥(脱水ケーキ)に残留する成分の同定がしやすくなります。 ろ液側に溶け出す成分とケーキ側に残る成分の境界が安定すれば、PRTR対象物質の含有量を合理的な根拠をもって記録できます。 第二に、含水率が低下することで廃棄物重量そのものが減り、PRTR対象物質の総量管理の負担が軽減されます。 含水率が5%低下すると、年間数百トン単位の重量削減につながるケースがあります。 産廃処理費の目安が1トンあたり約2万円であれば、年間数百万円規模のコスト削減にもなります。 さらに、マキノのフィルタープレスは一品一様の設計思想で作られています。 スラリーの粒径・粘度・温度に合わせて、ろ布(液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター)の選定・圧力・サイクル時間をそれぞれ最適化します。 画一的な設計では対応しきれない複雑な組成の汚泥でも、安定した固液分離を実現できるのはこの設計思想があるためです。 創業1932年・納入実績6,000例以上の中で、食品・化学・金属加工・表面処理など多様な製造プロセスの汚泥管理を手がけてきた経験が、PRTR義務化という新しい課題にも直接活きます。 2026年の義務化を機に設備の見直しを検討するなら、「汚泥の分析精度を上げるために、まず分離精度を上げる」という順序で考えることをお勧めします。 適切にメンテナンスを続ければ20〜30年の稼働が可能なフィルタープレスは、コンプライアンス対応の一時費用ではなく、長期の設備資産として位置づけることができます。まとめ
2026年の廃棄物処理法施行規則の改正により、マニフェストへのPRTR対象化学物質の含有量記載が義務化されます。 この改正が製造現場に求めているのは、産廃の書類整備だけでなく、「汚泥に何が含まれているかを自社で把握する体制」の構築です。 汚泥の成分把握を継続的に行うには、固液分離の精度を安定させることが前提になります。 フィルタープレスによる高精度な固液分離は、成分の安定化・廃棄物重量の削減・産廃コストの圧縮という三重の効果をもたらします。 PRTR義務化への対応を検討している環境担当・コンプライアンス担当の方は、現在の固液分離プロセスの状態から見直してみることが、実務上の近道になります。 現場の具体的な状況をお持ちの方は、ぜひ一度マキノにご相談ください。 「うちの汚泥に何が入っているか、正直よくわかっていない」という現場の声をよく聞きます。 それは珍しいことではなく、多くの製造現場が同じ出発点にいます。 PRTR義務化への対応で、どこから手をつければいいかわからないという方は、まず現場の状況をそのまま話してください。ご質問・ご相談など お気軽にお問い合わせください
FAQ|よくある質問
Q:PRTR義務化のマニフェスト記載義務はいつから施行され、今から準備できることはありますか。
2026年の廃棄物処理法施行規則改正による義務化の施行時期は、改正省令の公布・経過措置の内容によって確定しますが、現時点では2026年内の施行が見込まれています。 今から取り組める準備としては、まず自社の汚泥・廃液にPRTR対象物質が含まれる可能性の洗い出しと、定期的な汚泥分析の体制整備が挙げられます。 分析を依頼する前に、固液分離の安定性を確認しておくことで、分析結果の代表性が高まり、継続的な記録管理がしやすくなります。 最新の施行スケジュールは環境省の公式情報を確認してください。
Q:マニフェストへのPRTR物質の含有量記載は、どの程度の精度で書く必要がありますか。
改正後の記載要件の詳細は省令・通知で定められますが、一般的には分析証明書に基づく数値か、製造工程から合理的に推算できる数値を記録することが求められる見通しです。 「含まれていない」と判断できる根拠がある場合(例:対象物質を使用しない製造プロセス)は記載不要となるケースもあります。 現場の状況に応じた対応方針は、排出する廃棄物の種類と製造プロセスを踏まえて整理することをお勧めします。 マキノでは汚泥の性状確認を含む対応相談を承っていますので、具体的な数値が必要な場合はお問い合わせください。
Q:PRTR義務化に向けて、固液分離設備の見直しから始める場合のステップはどうなりますか。
まず現在の脱水機の稼働状況と、排出している汚泥のサンプルを用意することから始めます。 次に、汚泥の粒径・粘度・含まれる物質の種類をもとに、どの分離方式・設備仕様が適しているかをヒアリングと簡易分析で確認します。 その上で、現行設備の改修(ろ布交換・圧力調整)で対応できるか、設備更新が必要かを判断します。 マキノでは汚泥サンプルをお送りいただくことで、最適な固液分離条件を検討するラボテストのご案内が可能です。