- ろ過
高分子凝集剤の選び方でフィルタープレスの含水率が変わる
含水率が5%下がると、年間の産廃処理費は数百万円変わることがあります。
前処理で使う高分子凝集剤(高分子量の化合物で粒子を引き寄せてひとまとめにする脱水助剤)の選定が合っていないと、液体に微細な固体が混じったドロドロの液体(スラリー)の粒子は十分に集まりません。フィルタープレスの圧力設定やサイクル時間を最適化しても、前処理の段階でフロック(凝集した粒子の塊)が十分に育っていなければ、分離後の固形分に残る水分の割合(含水率)は改善しません。
イオン性の選定、スラリー性状の測定、注入条件の調整。この3点を正しく整えることで、脱水性能は変わります。
高分子凝集剤はイオン性の違いで適応スラリーが変わる
高分子凝集剤のイオン性には、アニオン性(陰イオン性)・カチオン性(陽イオン性)・ノニオン性(非イオン性)の3種類があります。どのイオン性が効くかは、スラリー中の粒子がどちらに帯電しているかで決まります。
多くの工業スラリーでは、粒子表面が負(マイナス)に帯電しています。この場合、正(プラス)の電荷を持つカチオン性凝集剤を加えると、粒子が引き合ってフロックが形成されます。汚泥・排水処理スラリーにカチオン性凝集剤が多く使われるのはこのためです。
ただし、スラリーのpHや固形分の種類によって帯電状態は変わります。高pHのスラリーではカチオン性の効果が落ちることがあり、アニオン性またはノニオン性の方が適する場合があります。鉱山排水や一部の化学スラリーでは粒子表面が正に帯電していることもあり、その場合はアニオン性凝集剤が有効です。
イオン性だけでなく、分子量も選定に影響します。分子量が小さすぎると、粒子を橋渡しする架橋作用が弱く、フロックが細かいまま育ちません。液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター(ろ布)でのろ過速度が出ない場合、イオン性は合っているのに分子量が低すぎる可能性があります。フロックは形成されているのに含水率が下がらないという現場は、分子量の見直しが有効なことが多いです。
イオン性と分子量の組み合わせが合ってはじめて、フロックはろ過工程に耐えられる大きさと強度になります。
スラリーの性質を測定してから凝集剤の種類を絞る
凝集剤の種類を経験や勘だけで選ぶと、スラリーの性状が変わったときに対応できません。まずスラリーの性状を数値で把握することが、選定の前提です。確認すべき項目と試験の進め方を整理します。
測定すべき主な項目
確認すべき主な測定項目は、pH・固形分濃度・粒子の表面電荷の強さを示すζ電位(ゼータ電位)の3つです。
ζ電位が大きく負に傾いているほど、粒子同士が強く反発し合っています。この反発力を中和するのに必要な電荷量が、適正な凝集剤の添加量を決める根拠になります。ζ電位がゼロに近い状態(等電点)に達したとき、粒子は凝集しやすくなります。
固形分濃度が高い場合は、必要な凝集剤の量も増えます。逆に濃度が低すぎると、フロックが形成されても沈降が遅く、フィルタープレスへの送液効率が落ちることがあります。
pHは凝集剤の電荷状態に直接影響します。同じカチオン性凝集剤でも、pH が低い(酸性側)ほど効果が出やすく、pH が高い(アルカリ性側)では効果が落ちる製品が多いです。スラリーのpHが変動しやすい工程では、測定のタイミングと条件管理も重要になります。
テクニカルセンターでのテストで最適条件を確認する
カタログやメーカーの推奨値はあくまで目安です。実際のスラリーは工場ごと、工程ごとに組成が異なるため、現物を使った試験なしに添加量を決めると過不足のリスクが生じます。
マキノのテクニカルセンターでは、ポリタンク1本(約20リットル)からイオン性試験と注入量試験を進められます。実際のスラリーを持ち込んでいただき、複数の凝集剤候補でフロック形成の様子を比較します。試験では凝集剤の種類ごとにフロック径・沈降速度・ろ過速度を測定し、最も脱水性能が出る組み合わせを特定します。
この試験記録は、現場導入後の注入条件の基準になるとともに、スラリー性状が変動したときの調整根拠にもなります。「前と同じ凝集剤を使っているのに最近含水率が悪化した」という場合、試験時のデータに立ち返ることで原因を特定しやすくなります。
凝集剤の選定から注入条件まで一貫した前処理設計がフィルタープレスの性能を決める
凝集剤の種類が決まっても、注入量・希釈濃度・攪拌条件が合わなければフロックは崩れます。前処理設計は薬剤の選定で終わるわけではなく、注入の仕方まで含めて整えることで完成します。
注入量・希釈濃度・攪拌条件の調整
注入量は多ければ多いほど良いわけではありません。適正量を超えると、過剰な凝集剤がフロック表面を包んで再分散が起き、ろ過が進むにつれてろ布の表面に積み重なる固体の層(ケーキ層)が緻密になりすぎます。圧力を高くしても水が抜けにくい状態になり、含水率が改善しないどころか悪化することがあります。
希釈濃度も重要です。高分子凝集剤は水に溶かして使いますが、溶液濃度が高すぎると均一に分散せず、局所的な過剰投入と未混合が同時に起きます。一般的に0.05〜0.2%程度の希釈溶液で使用しますが、この範囲もスラリーの性状によって調整が必要です。
攪拌の強さと時間も影響します。攪拌が強すぎるとせっかく形成されたフロックが物理的に破砕されます。一方、攪拌が弱すぎると凝集剤がスラリー全体に行き渡りません。スラリーの粘度と固形分濃度に合わせた攪拌条件を設定することが必要です。
フィルタープレスとの一貫設計で含水率を最適化する
マキノでは、凝集剤の選定から注入条件、フィルタープレスの圧力設計までを一貫して検討します。前処理で形成されたフロックの質が、そのままケーキ層の均一性とろ過後の含水率に直結するためです。
6,000例以上の納入実績の中には、前処理の見直しだけで含水率が5%改善したケースが含まれます。含水率5%の改善は、年間数百トン単位の重量削減につながります。産廃処理費が約2万円/tとすると、年間数百万円のコスト削減に相当します。
凝集剤の選定を薬品メーカーに任せきりにしている現場では、フィルタープレスとの適合性が検証されないまま注入条件が決まることがあります。脱水機メーカーの立場から前処理まで一緒に検討することで、こうした見落としを防げます。
スラリーに合わせた前処理設計が、脱水コストを変える
高分子凝集剤の選定は、イオン性と分子量の組み合わせを決めることから始まります。そのためにはスラリーの性状(pH・固形分濃度・ζ電位)を測定し、実際のスラリーを使った試験で注入条件を確認することが欠かせません。
凝集剤の種類が決まっても、注入量・希釈濃度・攪拌条件が合っていなければフロックは育ちません。前処理からフィルタープレスの圧力設計までを一貫して整えることで、含水率は変わります。
マキノのテクニカルセンターでは、ポリタンク1本分のスラリーからテストを始められます。スラリーの特性に合った凝集剤選定と前処理設計について、6,000例以上の納入実績をもとに提案しています。
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FAQ|よくある質問
Q:高分子凝集剤を入れすぎると、脱水性能は落ちますか
落ちることがあります。適正量を超えると、過剰な凝集剤がフロック表面を包んで再分散が起き、ケーキ層が緻密になりすぎて水が抜けにくくなります。
添加量の適正範囲はスラリーの種類によって異なるため、テクニカルセンターでのテストで確認することを推奨します。試験では通常、添加量を数段階変えてフロック径・沈降速度・ろ過速度を比較し、最適値を特定します。注入量を増やしても含水率が改善しない場合は、過剰投与が疑われます。
Q:高分子凝集剤の費用はどれくらいかかりますか
スラリーの種類と処理量によって大きく異なります。一般的な工業スラリーでは、処理量に対して100〜500ppm程度の添加率が目安です。
凝集剤コストを単独で評価するより、含水率改善による産廃処理費の削減額と比較して判断することを推奨します。含水率5%の改善で年間数百トン単位の重量削減につながり、産廃処理費(約2万円/t)で換算すると年間数百万円の削減になることがあります。この削減額と比べると、凝集剤の薬剤コストは小さくなるケースがほとんどです。
Q:無機凝集剤と高分子凝集剤は、どちらを使えばいいですか
スラリーの性状と目的によって使い分けます。無機凝集剤(硫酸アルミニウム・塩化第二鉄など)は微細粒子の電荷を中和して初期凝集を促し、フロック形成が速いのが特徴です。高分子凝集剤は粒子を橋渡し(架橋)して大きなフロックを形成し、ろ過速度と含水率改善に効果があります。
フィルタープレスの前処理では、無機凝集剤で一次凝集させてから高分子凝集剤で二次凝集させる2段投入が有効なケースも多くあります。いずれにしても、スラリーの実測値をもとに組み合わせと添加量を決めることが重要です。