- ろ過
フィルタープレス停止損失の試算が更新判断を変える
設備が止まっても修理すれば元に戻る。それは正しいです。
ただ、止まっている間に何がいくらかかっているかを金額として計算した工場は、思いのほか少ないものです。
修理費だけを見て判断している工場と、停止損失を試算したうえで判断している工場では、同じ「修理か更新か」という問いへの答えが変わることがあります。
フィルタープレスが止まると損失はどこに出るか
フィルタープレスが停止したとき、現場がまず確認するのは修理費です。部品代と工賃の合計を見て、修理か更新かを決める。多くの工場で繰り返されてきた判断の流れです。
しかし実際に数値を並べてみると、停止中に積み重なる損失が修理費を上回るケースがあります。どこに損失が出るかを整理しておくことが、判断の出発点になります。
処理ラインの停滞と外注費
汚泥処理が止まると、前後の工程に影響が波及します。
処理前の汚泥を溜めておくタンクやピットは容量に限りがあります。フィルタープレスが止まったまま処理できない状態が続くと、タンクの余裕がなくなり、製造ラインを一時停止しなければならない場面も出てきます。
こうした事態を避けるため、外部の産廃業者に急遽収集・処理を依頼することがあります。通常の委託契約より高い単価になることが多く、停止1回あたりの外注費が数十万円に達する工場も少なくないです。
この外注費や停滞コストは、修理伝票には記録されません。「停止にかかったコスト」として集計されることなく、次の修理判断を迎えます。
産廃処理費の増加
もう1つの損失は産廃処理費の増加です。
通常稼働中のフィルタープレスは、液体に微細な固体が混じったドロドロの液体(スラリー)を加圧・ろ過して脱水し、分離後の固形分に残る水分の割合(含水率)が低い状態の汚泥として産廃業者に引き渡せます。
フィルタープレスが止まっている間は、この脱水ができません。含水率が高い状態の汚泥を代替手段で処理するか、そのまま搬出することになります。
産廃処理費は重量ベースで計算されます。含水率が高い汚泥は重くなるため、同じ体積でも費用が上がります。産廃処理費の目安は約2万円/tです。1日の汚泥発生量が10tの工場で、停止中に含水率が10%高い状態で処理した場合、重量は約1t増え、1日あたり約2万円の追加コストが発生します。
この2種類の損失は、停止期間が短ければ表面に出てきません。ただ、年に数回の停止が繰り返される工場では、年間の合計額が無視できない水準になります。
停止損失を1日あたりのコストに換算する手順
損失の全体を見るには、項目ごとに1日あたりの金額を出すことが先です。
計算に難しいデータは要りません。現状の処理量と単価があれば試算できます。
操業停止に伴う直接コストを整理する
まず、処理が止まることで直接発生するコストを項目別に書き出します。
主な項目は3つです。処理担当者の人件費(停止中も待機している場合)、外部委託した際の追加費用、製造ラインへの影響額(停滞した時間×ラインコスト)です。
各工場で状況は異なりますが、過去に停止したときの費用明細を参照するだけで試算の素材になります。停止記録がある工場は、修理伝票と外注伝票を並べて確認するところから始めてください。
産廃処理費の増加分を計算する
次に、含水率が管理できない状態で増える産廃処理費を計算します。
計算に必要なのは次の3点です。1日の汚泥処理量(t)、停止中の含水率と通常時の差(%)、そして産廃処理費の単価(目安:約2万円/t)です。
計算の流れは、「1日の処理量(t)× 含水率の差(%÷100)= 重量増加分(t)」を出して、その重量増加分に産廃処理費の単価をかけます。
通常時より含水率が5%高い状態で1日10tを処理した場合、重量は0.5t増え、産廃費は1万円/日の追加です。これが年間20日の停止に積み重なれば、産廃費だけで年間20万円の追加コストになります。停止時の含水率が通常より10〜15%高くなる工場では、この増加分が倍以上になることがあります。
直接コストと産廃費増加分を合計すると、1日あたりの停止損失が出ます。この数値に年間の停止回数をかければ、年間の停止損失総額が見えてきます。
損失試算を持つ工場が設備更新の判断を早める
年間の停止損失総額が出ると、次の比較ができます。設備を更新した場合の産廃費削減効果と並べると、投資回収期間の試算になるからです。
マキノの納入実績(6,000例以上)では、フィルタープレスの更新で含水率が5%低下すると、年間数百トン単位の汚泥重量が削減されます。産廃処理費の単価(約2万円/t)で換算すると、年間数百万円の削減です。産廃コスト削減額によって差はありますが、投資回収期間が1〜3年になるケースが多いです。
ここに停止損失の年間額を加えると、試算はさらに厚みを持ちます。設備更新の費用に対して、現状を維持したときに年間で出ていく損失(停止損失+高含水率による産廃費の増加)を比較できるからです。「更新費用 ÷ 年間削減額(停止損失削減+産廃費削減)=投資回収期間」という計算式で、稟議書に載せる数値が揃います。
「感覚では更新したほうがよい」から「試算上、このまま維持するほうが損失が大きい」という根拠に変わったとき、社内での稟議が通りやすくなります。決裁者が見るのは経営上の判断であり、年間いくら損しているかが数値で伝わることで、更新の優先順位が変わります。
試算の精度を上げたい工場には、現状のスラリーをマキノのテクニカルセンターに持ち込んで行うテストも選択肢です。改善できる含水率の幅と処理量を実測したうえで、投資回収の計算を組み立てることができます。
止まるコストが、動かす理由になる
設備更新の判断は、新しい設備の性能だけで決まりません。
現状の設備を維持したとき、停止のたびに何がいくら積み重なっているかを見ることも判断の一部です。
停止損失を試算した工場が更新に動くのは、感覚ではなく数値が根拠になるからです。
産廃処理費の増加分、外注費、ライン停滞コスト。これらを1日あたりの金額に換算して年間で見ると、更新を後回しにするコストが具体的な金額として見えてきます。
その金額が更新費用と並んだとき、判断は変わります。
試算に必要なのは、現状の処理量と産廃単価だけです。
まずは現状の数値を整理するところから始めてみてください。
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FAQ|よくある質問
Q:フィルタープレスが停止すると1日いくら損するか
工場の規模・処理量によって異なりますが、産廃処理費の増加だけを見ても1日あたり数万円になることがあります。
1日の汚泥処理量が10tの工場で含水率が10%高い状態で処理した場合、産廃処理費の単価(約2万円/t)をもとに計算すると、重量増加分1tで約2万円の追加コストです。外注費やライン停滞コストを加えると、1日の損失が数十万円に達する工場もあります。
年間10〜20日の停止が繰り返される工場では、年間の停止損失合計が数百万円に達するケースがあります。
Q:停止損失の試算に必要なデータは何か
主に3つのデータがあれば試算できます。1日あたりの汚泥処理量(t)、産廃処理費の単価(目安:約2万円/t)、そして停止中の含水率と通常時の差(%)です。
これらが揃えば、1日あたりの産廃費増加分を「処理量(t)× 含水率の差 × 産廃単価」で計算できます。外注費や人件費など直接コストも加えると、実態に近い損失額になります。
過去の停止記録がある場合は、修理伝票と外注伝票を参照するだけで試算に必要な数値が揃います。
Q:停止損失の試算は設備更新の稟議書に使えるか
使えます。年間の停止損失額と更新後の産廃費削減効果(含水率5%改善で年間数百万円削減)を合算すると、投資回収期間を計算できます。
マキノの納入実績(6,000例以上)では、産廃コスト削減額次第で投資回収期間が1〜3年になるケースが多いです。「設備更新費用 ÷ 年間削減額(停止損失削減+産廃費削減)=投資回収期間」という形で稟議書に整理すると、決裁者に数値で伝えられます。
試算の根拠を強くしたい場合は、マキノのテクニカルセンターでのテストで含水率の改善幅を実測することもできます。