株式会社マキノ

ケーキ含水率が目標値を超えて悪化しているときの診断手順

「先週まで問題なかったのに、ケーキがびしょびしょになっている」という現場の声は少なくありません。分離後の固形分に残る水分の割合(含水率)が突然上がると、産廃重量が増え、処理費もそのまま跳ね上がります。原因は一つではなく、ろ布の状態・圧力設定・原料の変化・供給ポンプの劣化など、複数の要因が絡み合っています。この記事では、見当違いの対策に時間とコストをかけないために、「まず何を見るか」という診断の順序を具体的に整理します。

なぜ含水率は突然悪化するのか

液体に微細な固体が混じったドロドロの液体(スラリー)を圧力で押し込み、液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター(ろ布)で分離する。これがフィルタープレスの基本的な仕組みです。含水率は、この一連のプロセスのどこかがバランスを崩すと上昇します。

厄介なのは、「昨日まで動いていた」という事実が原因特定を遅らせる点です。設備そのものが壊れたわけではないので、担当者は「たまたまスラリーが薄かっただけ」と判断してしまいがちです。しかし放置すると、含水率が5%上がるだけで脱水ケーキの重量が年間数百トン増え、産廃処理費(おおよそ2万円/t)換算で年間数百万円の負担増になります。早期に原因を特定してください。

原因を大きく分けると、「ろ布側」「圧力・機械側」「スラリー性状側」「ポンプ側」の四つに整理できます。この順序で一つずつ確認していくと、無駄な部品交換や設定変更を避けられます。

ステップ1 ろ布の状態を目視と圧力差で確認する

最初に疑うべきはろ布です。ろ布表面に積み重なる固体の層(ケーキ層)が均一に形成されていないと、液体の抜けが偏り、含水率が上がります。

目視でチェックするポイントは三つあります。一つ目は、ろ布の全面が均一に汚れているかどうかです。一部だけ白く残っていたり、逆に黒ずんで固まっている箇所があれば、目詰まりが起きています。二つ目は、ろ布の破れや縫い目のほつれです。ピンホール状の穴でも、そこからスラリーが素通りして含水率を押し上げます。三つ目は、ろ布の裏面です。裏側に固形分が回り込んでいると、繰り返しの洗浄でも目が開かなくなっています。

目視と合わせて、ろ過サイクルごとのろ液流量の変化も記録してください。同じ圧力・同じスラリーでろ液量が10〜15%以上落ちていれば、ろ布の目詰まりをほぼ確定できます。この段階で目詰まりと判断できたら、薬品洗浄または交換に進みます。交換前に洗浄を試みる場合は、アルカリ洗浄・酸洗浄の使い分けがポイントになります。固形分の性状(有機物か無機物か)によって適切な洗浄剤が変わるため、製造メーカーへ確認することをお勧めします。

ステップ2 圧力設定と加圧パターンを見直す

ろ布に問題がなければ、次は圧力側を確認します。フィルタープレスは最大1.5MPa(大気圧の約15倍)まで加圧できますが、設定圧力が仕様を下回っていると脱水が不完全になります。

よくあるのが、圧力計の指示値と実際の内部圧力がずれているケースです。圧力計は消耗品であり、長期間使用すると誤差が生じます。別の校正済み圧力計を並列接続して実測値を確認してください。

加圧パターンも見直す価値があります。急速に高圧をかけるとケーキ層が表面で締まり、内部の水が抜けにくくなります。逆に、段階的に昇圧する「ステップアップ加圧」を採用すると、ケーキ層が均一に形成されて含水率が下がるケースがあります。運転ログに昇圧カーブが残っている場合は、以前と比較してください。設備の更新や制御盤の交換後に昇圧パターンが変わっていることがあります。

圧搾式(MDFWシリーズ・WAP型など)を使用している場合は、圧搾ダイヤフラムの作動圧力と保持時間も確認対象です。圧搾圧力が規定値を5%でも下回ると、仕上がりの含水率に明確な差が出ます。

ステップ3 スラリーの性状変化を確認する

設備側に異常がなければ、原料であるスラリー自体が変わっている可能性を疑います。

確認すべき項目は、濃度・粒度・pHの三つです。スラリー濃度(固形分濃度)が低下すると、同じ圧力をかけてもケーキ層が薄くなり、含水率が上がります。仕入れ先の変更・製造工程の変更・季節による原料変化などが原因になります。仕込み時の比重や固形分濃度を記録していない現場では、この変化を見落としがちです。

粒度分布も重要です。粒子が細かくなるほどろ布の目が詰まりやすく、同時にケーキ層の透水性も落ちます。原料の粉砕工程が変わった・前処理工程でせん断力が増した、といった変化がないか工程担当者に確認してください。

pHは凝集剤の効き方に直結します。スラリーのpHが変わると、添加している凝集剤の凝集効果が落ち、微細粒子がケーキ層に混じり込んで含水率を押し上げます。凝集剤の添加量・種類・投入タイミングをスラリーのpHと合わせて見直してください。

ステップ4 供給ポンプの吐出量と圧力特性を点検する

スラリーをフィルタープレスに送り込む供給ポンプの劣化も、含水率悪化の原因になります。ポンプが弱くなると、フィルタープレス内部へ十分な圧力でスラリーを押し込めなくなり、ケーキ層の形成が不均一になります。

ポンプの状態確認で見るべきは、吐出圧力と流量の関係です。ポンプの仕様書に記載されたP-Q曲線(圧力と流量の関係グラフ)と現在の実測値を比較してください。同じ圧力設定でも流量が落ちていれば、インペラの摩耗・シール漏れ・内部クリアランスの拡大が疑われます。

ダイヤフラムポンプやプランジャーポンプを使用している現場では、ダイヤフラムやバルブシートの摩耗も確認してください。これらは消耗品ですが、交換サイクルが明文化されていない現場では見落とされがちです。ポンプ吐出側の脈動が大きくなっていると感じたら、内部消耗品の交換時期と見てよいでしょう。

一品一様の脱水条件に合わせてポンプ仕様を最適化している場合、代替品への安易な切り替えが含水率悪化を招くことがあります。ポンプを交換したタイミングと含水率悪化のタイミングが重なっていないか、履歴を確認してください。

診断で原因が特定できないときの対処

四つのステップを踏んでも改善しない、あるいは複数の要因が絡み合って切り分けられないケースもあります。そのような場合は、現在のスラリーをテクニカルセンターに持ち込んでのテストが有効です。

テスト用のサンプル量は概ね10L〜ポリタンク1本(20L)程度です。実際の運転条件に近い圧力・温度・凝集剤添加条件で小規模試験を行い、どの条件が含水率に最も影響しているかを数値で把握できます。現場での試行錯誤を繰り返すよりも、テスト一回で原因を絞り込める場合が多く、停止時間を短くできます。

また、設備の導入から10年以上経過している場合は、ろ板・ろ枠の変形や内部シールの劣化が全体的に進んでいる可能性もあります。フィルタープレスは適切なメンテナンスで20〜30年使えますが、部位ごとの劣化は均一ではありません。部品単位の交換で対応できるケースと、機器全体の更新を検討すべきケースの判断は、専門家の診断を仰ぐほうが確実です。

まとめ

ケーキ含水率の悪化は、ろ布・圧力・スラリー性状・供給ポンプという四つの観点で順序立てて確認すると、原因を効率よく絞り込めます。含水率が5%改善するだけで年間の産廃処理費が数百万円単位で変わることを考えると、「とりあえず洗浄してみる」より先に診断の手順を踏む価値は十分にあります。設備側に問題がなければスラリーの性状変化を、スラリーに変化がなければポンプを、という順序で確認することが、最短で原因にたどり着く方法です。現場だけで判断が難しいときは、サンプルを持ち込んでのテストや専門家への相談を積極的に活用してください。

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FAQ|よくある質問

Q:ろ布を交換したばかりなのに含水率が改善しません。何が考えられますか?


ろ布の交換後も改善しない場合、スラリーの性状変化か供給ポンプの劣化が主な原因として残ります。スラリーの固形分濃度が10%以上低下していると、新しいろ布でもケーキ層が薄くなり含水率が下がりません。また、ポンプの吐出流量が設計値より15%以上落ちている場合、フィルタープレス内部に十分な圧力がかからず、ろ布の性能を発揮できないことがあります。交換前後の運転ログとスラリーの固形分濃度を比較することをお勧めします。

Q:含水率の悪化はどのくらいのコスト増につながりますか?


含水率が5%上がると、脱水ケーキの重量は処理量によって異なりますが年間数百トン単位で増えます。産廃処理費は一般的におおよそ2万円/tですので、年間数百万円の追加コストになる計算です。たとえばケーキの年間排出量が500tの現場で含水率が5%悪化した場合、ケーキ重量は約26t増え、処理費換算で約52万円の負担増となります。含水率は「品質指標」ではなく「財務指標」として管理することで、現場の費用を削減できます。

Q:現場だけで原因が特定できない場合、どのように相談すればよいですか?


スラリーのサンプル(概ね10L〜20L)を用意いただければ、テクニカルセンターで実際の運転条件に近い試験を行うことができます。圧力・温度・凝集剤添加条件を変えながら含水率への影響を数値で確認するため、現場での試行錯誤より短時間で原因を絞り込めます。1932年の創業以来、6,000例以上の納入実績から蓄積した知見をもとに、設備の状態と原料の性状の両面からアドバイスします。まずはお問い合わせフォームからご連絡ください。

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