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凝集沈殿の仕組み フロックが作られる3段階

廃水処理の現場でよく聞く話があります。
凝集剤を入れているのにフロックがうまくできない。
あるいは、フロックはできるが脱水機を通すと含水率が思ったより下がらない。
問題の多くは、凝集剤の種類や量よりも「フロックがどう形成されるか」を理解していないところから来ています。

凝集沈殿では、廃水中の微粒子を薬剤によって塊にまとめ、重力で沈める処理を行います。
この塊がフロックです。
フロックができるまでには3つの段階があり、それぞれの段階で起きていることを把握すると、トラブルの原因を絞り込みやすくなります。

微粒子が自然に沈まない理由

廃水や工程排液の中には、肉眼では確認できない微細な固体粒子が多量に分散しています。
なぜ静置してもなかなか沈まないのかというと、粒子の表面がマイナスの電荷を帯びているためです。

同じ極性の電荷を持つ粒子同士は互いに反発します。
この反発力をゼータ電位(粒子の表面と液体の界面に生じる電気的な力の指標)といい、値が高いほど粒子は安定して分散します。
粒子が小さいほど、重力に対してこの反発力が相対的に大きくなるため、数ミクロン以下の微粒子は重力だけでは沈降しません。

さらに、粒子の周囲には液中のイオンが引き寄せられて電気二重層(粒子を包む薄いイオン層)が形成されており、この保護膜が分散した状態を長期間維持します。
粒子の種類や廃水の組成によっては、自然沈降で処理しようとすると数日から数週間かかることもあります。

廃水処理で凝集剤が必要な根本的な理由は、ここにあります。
粒子の反発力を化学的に崩さなければ、沈降も脱水も始まらないのです。

凝集剤がフロックを作る3つの段階

凝集剤を加えると、電気的に安定していた微粒子の分散状態が崩れ、粒子同士がくっつき合ってフロックになります。
この過程は3つの段階を経て進みます。

第1段階:電荷の中和(凝結)

硫酸アルミニウムや塩化第二鉄などの無機凝集剤を廃水に加えると、液中で正の電荷を帯びたイオンが生成されます。
このイオンが粒子表面のマイナス電荷を中和し、ゼータ電位を低下させます。
反発力が弱まると粒子同士が接近できるようになり、凝集の準備が整います。

この段階での凝集剤の添加量には適正範囲があります。
少なすぎると電荷が中和されず粒子は反発したまま、多すぎると正電荷が過剰になって再び反発が起きます。
適切な添加量は液体に微細な固体が混じったドロドロの液体(スラリー)の種類・pH・温度によって変わるため、テクニカルセンターでのテストで事前に確認することが欠かせません。

第2段階:架橋凝集(フロキュレーション)

電荷を中和された粒子は、次に高分子凝集剤(ポリマー)によって結び合わされます。
ポリマーは長い分子鎖を持ち、複数の粒子に同時に吸着することで橋渡し(架橋)をつくり、粒子同士を繋いで大きな塊に成長させます。

この段階では撹拌の強さが結果に大きく影響します。
撹拌が速すぎると形成されかけたフロックが引きちぎられ、遅すぎると粒子とポリマーが接触する機会が減ります。
スラリーの粘度や粒径分布、温度に応じて撹拌速度を調整することが、均一で強固なフロックをつくる条件になります。
また、ポリマーの種類(アニオン系・カチオン系・ノニオン系)と分子量の選定も、対象スラリーに合わせる必要があります。

第3段階:成長と沈降

フロックは徐々に他のフロックを取り込みながら成長し、重力に従って沈降します。
この段階ではほとんど撹拌せず、できたフロックに余計な衝撃を与えないようにします。
沈降したフロックが底部に積み重なり、上部に澄んだ液体(上清)が分離されます。

沈降したフロックはその後スラリーとして取り出され、次の脱水工程へ送られます。
凝集が不十分だと、上清に微粒子が残って排水基準を超えたり、脱水機に送るスラリーの品質が下がったりします。

フロックの粒径と強度が脱水性能を左右する

凝集沈殿で生成されたフロックのスラリーは、フィルタープレスなどの脱水機で処理されます。
このとき、フロックの粒径と強度が脱水効率を大きく左右します。

粒径がろ過速度と含水率に与える影響

フロックが大きいほど、ろ布(液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター)の目に詰まりにくく、液体が通過しやすくなります。
また、大きなフロックはケーキ層(ろ過が進むにつれてろ布の表面に積み重なる固体の層)をつくりやすく、液体の流路が安定して確保されます。
逆に、フロックが細かすぎるとろ布の目を塞いでしまい、ろ過速度が著しく低下します。

最適な粒径は対象スラリーの性質とろ布の目開きのバランスで決まります。
一般的な目安として、フロック径がろ布の目開きの2〜3倍以上あるとケーキ層が形成されやすく、脱水効率が安定します。

フロック強度と圧搾条件の関係

フィルタープレスは最大1.5MPa(大気圧の約15倍に相当する圧力)をかけてケーキ層を圧搾します。
この圧力に耐えられないフロックは圧搾中に崩れ、微細な粒子がろ布の目に入り込んで詰まりの原因になります。
ろ布が詰まると液体の流路が塞がれ、分離後の固形分に残る水分の割合(含水率)が上がって産廃コストが増えます。

マキノでは6,000例以上の納入実績をもとに、スラリーの性質に合わせてろ布の目開きと圧力設定を最適化しています。
フロックが崩れやすい性質のスラリーには目開きを広めに設定して圧力の上昇速度を緩やかにするなど、フロックの強度に合わせた運転条件を組み合わせます。
凝集工程と脱水工程を一体で考えることが、含水率を安定して下げる上での前提です。

凝集設計の精度が脱水コストを決める

凝集沈殿は前処理として位置づけられがちですが、その品質が最終的な産廃コストを左右します。

フィルタープレスで脱水した場合、含水率は50〜70%まで下がります。
遠心分離機(70〜85%)やベルトプレス(85%以上)と比べると、脱水性能の差は明確です。
ただし、この性能を引き出すには、凝集工程でフロックが十分に形成されていることが前提です。

含水率5%の改善が年間数百万円のコスト削減につながるケースも珍しくありません。
産廃処理費が約2万円/tとすると、年間数百トン単位の重量削減が実現します。
凝集剤の種類・添加量・撹拌条件・ポリマーの選定が1つでもずれると、圧搾してもケーキは水分を抱えたままになります。

スラリーの組成は現場ごとに異なります。
テクニカルセンターでのテストで対象スラリーに合った凝集条件を事前に確認し、現場に落とし込むことが、脱水コストの削減への確実な道です。
マキノでは脱水機の選定から凝集条件の検討まで一貫して対応しており、テクニカルセンターでのテストには概ね10リットルからポリタンク1本(20リットル程度)のサンプルをお預かりすれば試験を進められます。

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FAQ|よくある質問

Q:凝集剤にはどんな種類があり、何を基準に選べばよいですか?


大きく分けて、無機凝集剤(硫酸アルミニウム・塩化第二鉄など)と高分子凝集剤(ポリマー)の2種類があります。
無機凝集剤は粒子表面の電荷を中和する役割を担い、高分子凝集剤は中和後の粒子を架橋して大きなフロックにまとめます。
選定の基準はスラリーのpH・粒径・温度・含まれる物質の種類で、どの凝集剤がどの程度の添加量で最もフロックができるかはテクニカルセンターでのテストで確認します。
経験則や他工場の事例を転用すると添加量が過不足になりやすく、フロックの品質が安定しないため、対象スラリーごとの確認が確実です。

Q:フロックがうまく形成されないときの原因と確認すべきポイントは何ですか?


主な原因は4つあります。
1つ目は凝集剤の添加量の過不足で、pHや水質が変化すると適正量も変わります。
2つ目は撹拌速度で、速すぎるとフロックが壊れ、遅すぎると粒子とポリマーが接触しません。
3つ目はスラリーの温度で、低温時は反応速度が落ちて凝集が不十分になりやすいです。
4つ目は水質の変動で、廃水の組成が変わると以前の条件が合わなくなります。
確認の順番としては、まず添加量とpHを見て、次に撹拌条件、温度の順で確認するのが効率的です。

Q:凝集沈殿の後にフィルタープレスを使うと、含水率はどこまで下がりますか?


凝集条件とスラリーの性質によりますが、フィルタープレスによる脱水後の含水率は一般的に50〜70%になります。
遠心分離機(70〜85%)やベルトプレス(85%以上)と比べると、大幅に低い数値です。
含水率5%の改善が実現すると、産廃処理費(約2万円/t)換算で年間数百万円のコスト削減につながるケースもあります。
ただし、凝集工程でフロックが十分に形成されていることが前提で、凝集が不十分なまま脱水機にかけても含水率は下がりません。

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