- ろ過
フィルタープレスの剥離性を決める3つの設計要素
ケーキが剥がれない。シャッキングを繰り返しても落ちず、手作業で取り除く時間が積み重なる。
ろ布を新品に替えたら一時的に改善したが、1か月もしないうちに同じ状態に戻った。
そういった経験を繰り返している現場は、少なくありません。
フィルタープレスのケーキ剥離不良は、ろ布の劣化だけが原因になっているケースはあまり多くありません。
ろ板の状態、ろ布の選定、圧搾の圧力と保持時間、この3要素が絡み合って剥離性が決まっているため、1つを替えても改善しきれないことがあります。
3つの要素を同時に見直す。それが、繰り返す剥離不良から抜け出す方法です。
剥離不良はろ板・ろ布・圧搾条件の設計3要素で決まる
フィルタープレスでは、液体に微細な固体が混じったドロドロの液体(スラリー)をろ板(ろ過室を形成する板状の部品)の間に圧入し、液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター(ろ布)で固液を分離します。
ろ過が進むにつれてろ布の表面には固体が積み重なり、固体の層(ケーキ層)が形成されます。
このケーキをろ布からきれいに剥がすことを「剥離」といい、剥離がうまくいかない状態が「剥離不良」です。
剥離性を決めるのは、ろ板の形状と状態、ろ布の材質と目の粗さ、圧搾の圧力と保持時間の3要素です。
3つは互いに連動しています。たとえばろ布の選定が合っていても、圧搾条件が不適切であればケーキの含水率(固形分に含まれる水分の割合)が高いままになり、ろ布への貼り付きが強くなります。
「ろ布を替えても改善しない」という現象は、ろ板か圧搾条件に別の原因があるサインです。
剥離不良が長く続いている現場ほど、1つの要素だけを繰り返し試行錯誤しているケースが多い傾向があります。
3要素を一度まとめて見直すことで、長年解決できなかった剥離不良が改善することがあります。
ろ板とろ布はスラリー特性に合わせて選ぶ
ろ板の役割はろ過室を形成し、圧搾工程ではケーキに圧力をかけることです。
圧搾式フィルタープレスで使われる膜プレートは、ろ板の内部に組み込まれたダイアフラム(弾性膜)に圧力をかけてケーキを絞る構造になっています。膜の膨らみが均一でないと、チャンバー内でケーキの厚みにムラが生じます。薄い部分では水分が抜けきらず、ろ布への貼り付きが残ります。
ろ板の劣化や変形はこのムラの原因になるため、定期的な点検が効果的です。
ろ布の選定では、スラリーの粒径と粘度が基準になります。
粒径が細かいスラリーには繊維の細かいろ布が適していますが、細かすぎると目詰まりが早まります。粘度が高いスラリーには、ケーキがろ布の繊維に食い込みにくい表面構造のものを選ぶ必要があります。
スラリーの特性とろ布の組み合わせがずれていると、ケーキが剥がれにくいだけでなく、ろ布の交換頻度も増えます。
マキノのテクニカルセンターでは、スラリーを預かり、粒径・粘度・固形分濃度を測定したうえで、複数のろ布候補を使ったろ過試験を実施しています。
スラリーのサンプルは概ね10〜20リットルあれば試験を進めることができます。この試験を通じて、スラリーの特性に合ったろ布を数値で確認してから機種の選定と設計に入ります。
「実際に試してから決める」このプロセスが、ろ布選定のミスマッチを防ぐ確実な方法です。
圧搾圧力と保持時間が剥離性を最終的に決める
圧搾式フィルタープレスでは、ろ過工程の後に大気圧の約15倍に相当する圧力(1.5MPa)をかけてケーキをさらに脱水します。
この圧搾工程は含水率を下げることを目的としていますが、剥離性にも直接影響します。含水率が高いままだとケーキが粘着しやすい状態になり、シャッキングでも落ちにくくなります。
圧力を上げれば含水率が下がる、とは限りません。
スラリーの種類によっては、一定の圧力以上にしても脱水が進まない性質のものがあります。そのようなスラリーに高圧をかけ続けても剥離性は改善せず、ろ板やろ布への負荷だけが積み重なります。
保持時間も同様に重要です。適切な圧力をかけても、保持時間が短ければ水分が十分に抜けないまま圧搾が終わり、ケーキの含水率が高いまま次の工程に移ることになります。
最適な圧力と保持時間の組み合わせは、スラリーの性状によって変わります。無機系の細粒子を含むスラリーと、有機系の粘性が高いスラリーとでは、同じ圧力と時間をかけても含水率の応答がまったく異なります。
テクニカルセンターでのテストで実際の挙動を確認し、そのスラリーに合った圧搾条件を設計に組み込むことが、剥離不良を出さない設計の基本です。
一品一様の設計が剥離不良を根本から解決できる
ろ板・ろ布・圧搾条件の3要素は、スラリーの性状と組み合わさって初めて設計として機能します。
どれか1つだけを改善する対処は、その場では症状を抑えても時間が経つと同じ状態に戻ります。3要素をスラリーの特性から同時に設計し直すことが、剥離不良の根本的な解決になります。
マキノは1932年の創業以来、納入実績6,000例以上を積み重ねてきました。
その経験の中で一貫してきたのは、スラリーの粒径・粘度・温度・固形分濃度を測定したうえで、1.5MPaの高圧圧搾技術を軸にろ板・ろ布・圧搾条件を組み合わせる「一品一様」の設計思想です。
汎用の設定を当てはめるのではなく、そのスラリーに合った設計を毎回組み立てる。6,000例以上の実績の背景にあるのは、その積み重ねです。
「ろ布を交換しても剥離不良が戻る」という状況が続いているなら、3要素を一度まとめて見直すことが解決への近道です。
テクニカルセンターでのテストは、スラリー10〜20リットルから始めることができます。
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FAQ|よくある質問
ろ布を交換しても剥離不良が改善しないのはなぜですか
剥離不良の原因が、ろ布の劣化だけにとどまらない場合があります。
スラリーの粒径や粘度に合わないろ布を選んでいると、交換直後は改善しても短期間で同じ症状が戻ります。ろ板の変形や圧搾条件のずれが原因になっているケースも少なくありません。
スラリーの性状を測定し、ろ板・ろ布・圧搾条件の3つを合わせて確認することが改善への近道です。
剥離性に最も影響するのはろ板・ろ布・圧搾条件のどれですか
スラリーの性状によって異なります。粘性の高いスラリーではろ布の材質選定が大きく影響しやすく、粒径の細かいスラリーでは圧搾の圧力と保持時間が効くことが多いです。
ただし、1つの要素だけを改善しても剥離不良が解消しないことが多く、3要素を同時に見直すことが基本になります。
マキノのテクニカルセンターでは、スラリー10〜20リットルのサンプルで試験を実施し、最適な組み合わせを確認してから設計に入ります。
剥離不良を改善すると産廃処理コストや運転工数はどのくらい変わりますか
剥離不良が解消されると、ケーキの手作業除去やろ布の頻繁な洗浄が減り、1バッチあたりのサイクルタイムが短縮されます。
圧搾条件の適正化で含水率が5%改善されると、年間数百トン単位の廃棄物重量削減につながります。産廃処理費が約2万円/tとすると、年間数百万円規模のコスト削減になるケースがあります。
剥離不良の解消でろ布の交換頻度が下がり、消耗品コストも抑えることができます。