株式会社マキノ

フィルタープレスの省エネ改修で電力コストはどれだけ下がるか

脱水工程の電気代が気になりながら、どこをどう改修すれば数字が変わるのかわからない、という声をよく聞きます。 その背景にあるのは、フィルタープレス特有の電力消費パターンが可視化されていないことが多いからです。 この記事では、供給ポンプのインバータ化・自動運転化によるアイドル時間削減・圧搾工程の最適化という3つの改修アプローチについて、削減量の目安を数値で示しながら、投資回収の考え方まで整理します。

フィルタープレスが電力を消費する3つの局面

フィルタープレスの電力消費を語るとき、まず現場で何が電気を使っているかを把握しておく必要があります。 大きく分けると、液体に微細な固体が混じったドロドロの液体(スラリー)を機内に送り込む「供給ポンプ」、板を締めつけるための「油圧ユニット」、そしてケーキを落とす「クロス洗浄・振動装置」の3つです。 このうち電力量として最も大きいのが供給ポンプです。ろ過の初期段階は流量が多く、終盤は圧力が上昇して流量が落ちてきます。そのため、一定回転数で動かし続けると終盤も最大出力でモーターが回転し、余分な電力を消費します。インバータ(モーターの回転数を電子制御する装置)を使わない機種では、この無駄が放置されがちです。 次に見落とされやすいのが、アイドル時間の電力消費です。 「ろ過中」ではなく「ろ過とろ過の間」に油圧ユニットやポンプが待機状態のまま動き続けているケースがあります。自動制御が組まれていない半手動の機種ほど、この傾向が強くなります。

供給ポンプのインバータ化でどれだけ削減できるか

インバータを後付けするリトロフィット改修は、既存ポンプを交換せずに省エネ効果を得られる手段として注目されています。 モーターを定格回転数で動かし続けると、ろ過終盤の低流量域でも電力を食い続けますが、インバータで回転数を絞ると消費電力は回転数の3乗に比例して下がります。 たとえば回転数を100%から70%に下げると、理論値では電力消費量は約34%まで低減されます。 実際のろ過サイクルでは、高流量が必要な初期段階があるため、サイクル全体での削減率は一般的に20〜30%程度になるケースが多い傾向があります。月50,000kWhを消費している工場であれば、月10,000〜15,000kWh、年間に換算すると120,000〜180,000kWhの削減が見込める水準です。 電力単価を20円/kWhとすると、年間240万〜360万円の電力コスト削減になります。 ただし、削減率はスラリーの粘度・粒径・サイクル時間によって大きく変わります。 マキノのテクニカルセンターでは、実際のスラリーを使ったテストを通じて最適なインバータ制御のパターンを確認することが可能です。 カタログ数値だけで判断せず、自社のスラリーで確認してから改修内容を決めることが重要です。

自動運転化がアイドル時間を削る仕組み

省エネ改修の中で見落とされがちなのが、自動運転化によるアイドル時間の圧縮です。 ろ過終了から次サイクルの開始までの間、ポンプや油圧ユニットが稼働したまま待機しているケースでは、その時間も電力を消費し続けます。 自動運転に切り替えると、終圧到達を検知して即座にポンプを停止させ、油圧クランプも必要なタイミング以外は解除できます。実際の効果としては、アイドル時間の電力を1サイクルあたり10〜20%削減できるケースがあります。1日に複数サイクルを繰り返す工場では、この積み重ねが年間コストに響いてきます。 また、自動運転化は電力コスト以外のメリットも伴います。オペレーターの手待ち時間が減り、人件費の観点からも効果が出やすい。マキノのMDFシリーズ(全自動)やCAFシリーズ(高速自動)は、この自動制御を標準で搭載しています。既存機の自動化改造としても対応を検討できますので、現状のサイクル構成と合わせてご相談ください。

圧搾工程の最適化で消費電力と含水率を同時に改善する

圧搾式のフィルタープレスでは、ろ過後に膜でケーキをさらに押し込む圧搾工程があります。 この工程の圧力条件と保持時間が、分離後の固形分に残る水分の割合(含水率)と電力消費量の両方に直結します。 よくある誤解として「圧力は常に最大(1.5MPa=大気圧の約15倍に相当する圧力)をかけ続ければよい」という考え方があります。しかし実際には、スラリーの種類によってはある圧力以上を加えても含水率がほとんど変わらない飽和点があります。その飽和点を超えた圧力で圧搾し続けても電力だけが消費されます。 テクニカルセンターでのテストによって飽和点を把握し、必要十分な圧力と保持時間を設定するのがマキノの設計思想です。このアプローチを取ると、圧搾工程だけで消費電力を10〜15%削減できることがあります。 同時に、含水率が5%改善されると年間数百トン単位の汚泥重量が下がり、産廃処理費(約2万円/t)の削減として年数百万円の効果になるケースも出てきます。電力コスト削減と産廃費削減の両方を一度の改修で狙えるのが、圧搾工程最適化の強みです。 MDFWシリーズ(圧搾式・含水率最重視)やWAP型(水圧圧搾+空気乾燥・含水率60%達成)は、この最適化を前提にした機種です。既存機の圧力設定見直しでも効果が出る場合があるため、まずは現状の圧搾条件を確認するところから始めてみてください。

GX-ETSと省エネ法の文脈で電力削減をCO2換算する

2026年度から本格稼働するGX-ETS(GX排出量取引制度)では、大企業のCO2削減義務が強化されます。 電力消費量の削減はCO2排出量の削減に直結するため、省エネ改修の効果を排出量に換算して報告・管理する必要が出てきています。 電力のCO2換算係数は電力会社・年度によって異なりますが、目安として0.44kg-CO2/kWhで計算すると、年間120,000kWhの削減は約53t-CO2の削減に相当します。 省エネ法の定期報告書にそのまま反映できる数字になるため、設備部門だけでなく環境・管理部門にも説明しやすくなります。 脱水工程の省エネ改修は、電力コストの削減という直接効果に加えて、GX-ETS対応・省エネ法報告・サプライチェーンのスコープ2削減という文脈でも経営的な根拠を持ちやすい取り組みです。 CO2削減目標への貢献としても稟議を通しやすく、今の時期に改修を検討する理由のひとつになっています。

省エネ改修の投資回収期間をどう見積もるか

省エネ改修の稟議を通す際、最も問われるのが投資回収期間(ROI)です。 一般的な目安として、インバータ化の工事費は数十万〜数百万円、自動運転化の改造費は機種・制御範囲によりますが100〜500万円程度になるケースが多い傾向があります。 年間の電力コスト削減額が240万〜360万円であれば、インバータ化単体なら1〜2年での回収も現実的です。 圧搾工程の最適化を加えて産廃費削減効果も見込む場合は、さらに早期に回収できることがあります。 マキノでの改修案件では、設備更新ではなく改造・最適化の組み合わせで1〜3年以内に投資回収した事例が出ています。 ROIを試算する際のポイントは3つです。まず現状の月間電力消費量(kWh)と電力単価を押さえること。次に、改修後の削減率を実績データかテクニカルセンターでのテスト結果から出すこと。最後に、産廃費削減・人件費削減など電力以外の副次効果も加算することです。これらを合算した「年間削減額」を改修費用で割れば、概算の回収期間が出ます。数字が揃った状態で稟議書を作ると、経営層への説明が通りやすくなります。

まとめ

フィルタープレスの省エネ改修で効果が出やすいのは、供給ポンプのインバータ化・自動運転化によるアイドル時間の削減・圧搾工程の圧力条件最適化の3つです。 インバータ化だけで年間20〜30%の電力削減、圧搾工程の見直しで含水率の改善も同時に狙える可能性があります。 電力コスト削減と産廃費削減を組み合わせると、投資回収期間は1〜3年に収まるケースが少なくありません。 ただし削減率はスラリーの性状・現状の運転条件によって変わります。 マキノのテクニカルセンターでは、実際のスラリーを使ったテストと現状の運転データ分析をもとに、改修後の削減効果を具体的な数値で試算することが可能です。 「どこから手をつければよいかわからない」という段階からでも、まずはご相談ください。

ご質問・ご相談など お気軽にお問い合わせください

お問い合わせ

FAQ|よくある質問

Q:インバータ化の改修費用はどれくらいかかりますか?


既存ポンプへのインバータ後付け工事は、ポンプ出力や制御の複雑さによりますが、数十万〜数百万円の範囲になるケースが多い傾向があります。 年間の電力コスト削減額が240万〜360万円規模になると、投資回収は1〜2年以内になることもあります。 現状の月間電力消費量と電力単価を押さえた上で、改修前に費用対効果の試算をまとめてから稟議に出すことをお勧めします。

Q:省エネ改修で含水率も改善できますか?


圧搾工程の最適化であれば、電力削減と含水率改善を同時に達成できます。 圧力の飽和点を把握して必要十分な条件に設定し直すことで、消費電力を10〜15%削減しながら含水率を5%程度改善できるケースがあります。 含水率が5%改善されると年間数百トン単位の汚泥重量が下がり、産廃処理費(約2万円/t)の削減として年数百万円の効果につながることもあります。

Q:省エネ改修の効果はGX-ETSや省エネ法の報告に使えますか?


電力消費量の削減はそのままCO2排出量の削減になるため、省エネ法の定期報告書やGX-ETSの排出量管理に反映できます。 目安として0.44kg-CO2/kWhで換算すると、年間120,000kWhの削減は約53t-CO2の削減になります。 設備改修の稟議を通す際に、電力コスト削減だけでなくCO2削減実績としての根拠も同時に示せるため、経営層や環境部門への説明がしやすくなります。

関連記事