- ろ過
凝集剤がフィルタープレスの前処理を左右する仕組み
フィルタープレスを使っていても、含水率が目標に届かなかったり、以前よりろ過に時間がかかるようになったりすることがあります。こうした問題が起きたとき、見直したいのが凝集剤の選定です。
フィルタープレスは、微細な固体が液体に混ざったスラリーを、固体と液体に分離する装置です。その性能を左右するのは、圧力や機種の選定だけではありません。ろ過する前に粒子をどのような状態に整えるかも、脱水後の固形物に含まれる水分の割合(含水率)や処理速度に影響します。
この前処理で重要な役割を果たすのが、凝集剤です。スラリーの性質に合った凝集剤を適切に使うことで、ろ過効率の改善が期待できます。一方、凝集剤の種類や使用条件が合っていないと、十分な脱水ができず、含水率やろ過時間に影響することがあります。この記事では、凝集剤がどのように働くのかをはじめ、種類や選び方の考え方について基礎から解説します。
凝集剤とは、フロックを形成することでろ過効率を上げる薬剤
水中に浮遊する微細な粒子は、表面が電気的に反発し合っているため、そのままでは集まりません。
この状態でフィルタープレスに送ると、粒子が液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター(ろ布)をすり抜けるか、ろ布の目を詰まらせます。
どちらも、ろ過の効率が大きく落ちます。
凝集剤は、水中の微粒子を集めて塊(フロック)にする薬剤です。
微粒子がまとまることで粒子が大きくなり、ろ布で確実に捕集できるようになります。
フロックが大きく、均一に形成されるほど、ろ過が進むにつれてろ布の表面に積み重なる固体の層(ケーキ層)が密になり、脱水性能が安定します。
凝集剤による反応は、大きく2段階に分かれます。
一次凝集(凝結)
無機系凝集剤(PAC・硫酸バンド)を添加すると、粒子の表面電荷が中和されて反発力が弱まり、粒子同士がくっついた小さな塊(一次フロック)ができます。
このとき、原水のpHと薬剤の相性が重要です。
pHが合っていないと凝集反応がうまく進まず、薬剤を増やしても効果が出にくくなります。
食品系や一般産業排水のスラリーには無機系が使われることが多く、比較的安価に運用できます。
二次凝集(フロック形成)
一次凝集でできた小さな塊に、高分子凝集剤(アニオン系・カチオン系・ノニオン系)を加えます。
高分子が橋渡しになることで、一次フロックがさらに大きな塊に育ちます。
フロックが大きくなるほどケーキ層が厚くなりやすく、加圧したときの液体の抜けが早くなります。
脱水性能を高めるには、一次凝集と二次凝集の両方をスラリーの性状に合わせて調整することが前提になります。
凝集剤を使わないままフィルタープレスを動かすとどうなるか
凝集処理が不十分なまま運転を続けると、現場では2つの問題が起きやすくなります。
ろ液が濁る
微細な粒子がろ布をすり抜けると、排出されるろ液が濁ります。
後工程の水処理に影響が出たり、排水基準を満たせなくなったりするケースもあります。
これはフロックが十分な大きさに育っていないサインで、凝集剤の種類や添加量が合っていないことが多いです。
ろ過時間が長くなる
粒子がろ布の目に直接詰まりやすい性状のスラリーでは、凝集処理が不十分だとろ布が早く塞がります。
圧力をかけても液が抜けにくくなり、ろ過サイクルが伸びます。
1サイクルにかかる時間が長くなると処理量が落ち、現場の稼働効率に響きます。
どちらの問題も、根本にあるのはフロック形成が不十分なことです。
圧力設定を見直す前に、前処理の凝集条件を確かめる価値があります。
含水率が目標に届かない現場では、スラリーの前処理段階に原因がある場合が少なくありません。
凝集剤の種類と選び方の基本
凝集剤は「無機系」と「高分子系」の2種類が使われ、通常は両方を組み合わせて前処理を行います。
それぞれの特徴を整理します。
| 種類 | 代表的な薬剤 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 無機系(一次凝集) | PAC(ポリ塩化アルミニウム)、硫酸バンド | 比較的安価・pH調整が前提・食品系スラリーに実績が多い |
| 高分子系(二次凝集) | アニオン系・カチオン系・ノニオン系 | フロックをさらに大きくする・脱水性向上・種類の選定が重要 |
高分子凝集剤のアニオン・カチオン・ノニオンは、スラリー中の粒子の帯電状態によって使い分けます。
粒子が負に帯電しているスラリーにはカチオン系が有効で、電荷がほぼ中性に近い場合はノニオン系が選ばれることが多いです。
ただし、帯電状態は同じ工場でも原料の変化や工程の違いで変わることがあります。
「以前うまくいっていた薬剤が効かなくなってきた」という場合、スラリー性状の変化が原因のことがあります。
添加量にも適切な範囲があります。
少なければフロックが育たず、多すぎると粒子が再分散して効果が下がることがあります。
適切な添加量は、スラリーの濃度・pH・温度によって変わるため、実際のスラリーで条件を確かめることが確実です。
マキノのテクニカルセンターでは、現場から採取したスラリーを持ち込んでのテストを行っています。
凝集剤の種類・添加量・混合条件を変えながら、目標とする含水率と処理速度を達成できる組み合わせを確認します。
凝集条件が確かめられると、設備の設計に反映しやすくなります。
凝集剤が粒子をフロックにまとめるメカニズムについては、凝集沈殿の仕組み 微粒子がフロックを形成するメカニズムと凝集剤の働きでも詳しく解説しています。
前処理の精度が含水率の精度を決める
フィルタープレスの含水率は、圧力や機種だけで決まるわけではありません。
投入するスラリーの凝集状態が整っていなければ、均一なケーキ層が形成されず、含水率は下がりません。
前処理の精度が、脱水結果の精度を決めます。
凝集条件の見直しが有効なタイミングは、原料や製造工程が変わったときと、含水率の悪化やろ過時間の延長が続くときです。
長年同じ凝集剤を使い続けている場合も、スラリー性状の変化に合っているかどうかを確かめる機会です。
含水率が5%改善すると、産廃処理費(約2万円/t想定)で年間数百万円の削減につながることがあります。
マキノでは、テクニカルセンターでのテストを通じて前処理条件の最適化を支援しています。
スラリーの性状(pH・粒径・粘度・温度)を把握したうえで、凝集剤の種類と添加量を決め、設備の設計に反映します。
前処理から脱水まで一貫して設計することで、目標とする含水率に近づけます。
凝集条件の選定でお困りの場合は、スラリーのサンプルとあわせてご相談ください。
ご質問・ご相談など
お気軽にお問い合わせください
FAQ|よくある質問
凝集剤を変えると含水率にどれくらい差が出ますか?
スラリーの性状によりますが、凝集剤の選定と添加量の最適化で含水率が5%以上改善するケースは少なくありません。含水率が5%低下すると、産廃処理費(約2万円/t想定)で年間数百万円の削減につながることがあります。凝集条件の差が、処理コスト全体を左右します。
同じ凝集剤を長年使い続けていますが、見直す必要がありますか?
スラリーの性状が安定していれば大きな問題になりにくいですが、原料・工程・季節によって性状が変化するスラリーでは、既存の条件が合わなくなることがあります。含水率の悪化やろ過時間の延長が続く場合は、凝集条件の見直しを検討してください。テクニカルセンターでのテストで、現在の条件が適切かどうかを確認できます。
テクニカルセンターでのテストにはどのくらいのスラリー量が必要ですか?
スラリーの性質によりますが、概ね10リットルからポリタンク1本(20リットル程度)を持ち込んでいただければ試験を進められます。どのような状態で持ち込めばよいかは、事前にご相談ください。
無機系と高分子系の凝集剤は、必ず両方使わなければなりませんか?
スラリーの性状によっては高分子系のみで対応できる場合もあります。ただし、無機系(一次凝集)で小さなフロックを作り、高分子系(二次凝集)でさらに大きくする2段階の処理を踏むと、脱水性能が安定しやすくなります。最適な組み合わせはスラリーのテストで確認するのが確実です。