「フィルタープレスの圧力が、いつもより上がらない」——そう気づいたとき、あなたの頭にはいくつもの疑問が浮かぶはずです。
ポンプが壊れたのか、それともろ布が詰まっているだけなのか。どちらの原因なのかで、対処法はまったく異なります。
間違った判断で部品を交換してしまえば、無駄なコストと時間を失うばかりか、本来の原因を見逃したままラインを再起動してしまうリスクもあります。
今回は、現場担当者がその場で実践できる「供給圧力が上がらないときの診断フロー」を、技術的な背景とともに解説します。
焦らず、順番に確認していくことが、最短でトラブルを解決する近道です。
圧力が上がらないとき、まず「どこに原因があるか」を切り分ける
フィルタープレスの供給圧力が上がらない原因は、大きく三つのカテゴリに分類されます。
① 供給ポンプ自体の問題(ポンプ故障・摩耗・エア噛み)
② 配管・バルブ系統の問題(閉塞・開け忘れ・スラリー沈降による詰まり)
③ ろ布・ろ過板の問題(ブラインディングによる通過抵抗の増大)
これらは原因が異なるため、「とりあえずポンプを分解する」といった行動に出る前に、症状から原因のカテゴリを絞り込むことが重要です。
次のステップで、順番に確認してください。
診断ステップ1:ポンプは正常に動いているか?音と振動で判断する
最初に確認すべきは、ポンプそのものが正常に動作しているかどうかです。
電源が入っており、モーターが回転していても、内部の摩耗や損傷により本来の吐出力が出ていないケースは少なくありません。
確認ポイント
・ポンプ稼働中に「ガラガラ」「シュー」といった異音がないか
・通常より振動が大きくなっていないか
・吐出側の圧力計がゼロのまま、またはわずかしか動かないか
株式会社マキノが長年推奨しているMDP型ダイアフラムポンプは、ピストンが液体に直接触れない非接触構造のため、スラリーによる内部摩耗が起きにくい設計です。
それでも長期使用によってダイアフラム自体が劣化することがあります。異音が確認された場合は、ダイアフラムの状態を優先的に点検してください。
ポンプに異常がなければ、次のステップへ進みます。
診断ステップ2:配管とバルブを確認する
ポンプに問題がなければ、次に疑うべきは配管系統です。
特に沈降しやすいスラリー(比重の重い無機系汚泥など)を扱う現場では、配管内部でスラリーが固着して閉塞するトラブルが起こりやすくなります。
確認ポイント
・バルブが完全に開いているか(開け忘れ・半開きのまま運転は意外に多い)
・配管の途中を叩いてみて、詰まった音(鈍い音)がしないか
・ストレーナーが設置されている場合、目詰まりしていないか
・エア抜きバルブ付近から気泡が出ていないか(エア噛みの確認)
特にスラリーが長時間停止していた後の再起動時は、配管内での沈降・固化が起きていることがあります。
この場合、配管をフラッシング(水通し)してから再供給するだけで、圧力が正常に戻ることもあります。
配管系統にも問題がなければ、いよいよろ布側を確認します。
診断ステップ3:ろ布のブラインディングを疑う
供給圧力が徐々に上がらなくなってきた、あるいは以前より圧力が安定しないという場合、ろ布の目詰まり(ブラインディング)が原因である可能性が高まります。
ブラインディングとは、微細な粒子がろ布の繊維の奥深くに入り込んで固着し、液体の通過を妨げる現象です。
ブラインディングを示すサイン
・圧力が数サイクルかけて徐々に低下している
・ろ過時間が以前より長くなっている
・ケーキの含水率が上昇してきた
・ろ布を光にかざすと、以前より暗くなっている(粒子が繊維に詰まっているサイン)
ブラインディングが疑われる場合は、まず高圧水洗浄を試みてください。
それでも改善しない場合は、スラリーの性状に合わせた薬品洗浄(アルカリ洗浄や酸洗浄)が有効です。
洗浄後に圧力が回復すれば、原因はろ布にあったと確定できます。それでも改善しなければ、ろ布の交換時期と判断してください。
「複合原因」に注意:ポンプとろ布が同時に劣化するケース
実際の現場では、ポンプの能力低下とろ布のブラインディングが同時に進行しているケースも珍しくありません。
それぞれ単体では「まだ使えるレベル」でも、二つが重なることで顕著な圧力低下として現れるのです。
こうした複合原因を見落とさないためにも、日々の稼働データ(圧力推移・ろ過時間・ケーキ含水率)を記録しておくことが重要です。
データがあれば、「ポンプを交換したのにまだ圧力が安定しない」という二度手間を防ぐことができます。
愛知県常滑市に本社を置く株式会社マキノでは、納品後の現場でもこうしたデータの読み方や傾向分析をサポートしています。
「最近なんとなく調子が悪い気がする」という段階からでも、ぜひご相談ください。
「焦らず、順番に」が最短の解決策
供給圧力が上がらないトラブルは、現場担当者にとって焦りを生む状況です。
しかし、原因を正しく特定しないまま対処を急ぐことが、かえって解決を遠ざけます。
①ポンプ → ②配管・バルブ → ③ろ布 という順番でひとつひとつ切り分けることで、原因が特定でき、最小限のコストと時間で復旧できます。
「どうしても原因が特定できない」「同じトラブルが繰り返し起きる」という場合は、スラリーの性状変化や装置の経年劣化が絡んでいることがほとんどです。
そのような場合は、ぜひ一度マキノにご相談ください。
愛知県常滑市の自社ラボで、実際のスラリーを用いたろ過テストを行い、最適な圧力設定・ポンプ選定・ろ布選定を一品一様でご提案します。
現場の「困った」を、データと技術で解決するのが私たちマキノの役割です。
FAQ|よくある質問
Q:圧力が上がらないとき、まず何を確認すればいいですか?
まずポンプの異音・振動を確認し、次に配管のバルブ開度とストレーナーの詰まり、最後にろ布のブラインディングという順番で確認することをお勧めします。
この① → ② → ③の順番が、最も効率よく原因を絞り込める診断フローです。焦って複数箇所を同時に触ると、どの対処が効いたのかわからなくなってしまうので注意してください。
Q:ポンプを交換したばかりなのに、圧力が安定しません。なぜですか?
ポンプ以外の原因、特にろ布のブラインディングが同時に起きている可能性があります。
また、エア噛みが解消されていない場合も圧力が安定しません。ポンプ交換後は必ずエア抜き操作を行い、その後のろ過時間や含水率の変化を数サイクルにわたって観察してください。それでも改善しない場合は、ろ布の洗浄・交換を検討してください。
Q:スラリーを長時間止めた後の再起動で圧力が上がりません。
スラリーが配管内で沈降・固化している可能性が高いです。
まず配管をフラッシング(水通し)してスラリーの固着を解消してから再供給してください。再起動前に攪拌槽でスラリーを均質化することも有効です。沈降しやすいスラリーを扱う現場では、停止時の自動排水サイクルや、定期的な攪拌機構の導入を検討することをお勧めします。






