
「うちの廃棄物に有害物質なんて入っていない」——そう思ったまま、2026年1月に施行された廃棄物処理法の改正に気づかず、古い様式の委託契約書を使い続けている現場が少なくありません。
今回の改正は「何を廃棄物として出しているか」を契約書の段階から明記することを義務化したものですが、対象かどうかの判断基準がわかりにくく、自社が該当するかどうかを正確に把握できていないケースが多いのが実情です。
本記事では、改正の内容・対象事業者の判断基準・委託契約書への具体的な追記方法を整理し、2027年に向けた次の準備についても解説します。
なぜ今回の改正が必要だったのか
産業廃棄物の処理は、排出事業者・収集運搬業者・処分業者の三者が関わる複雑なフローで成り立っています。
これまでも委託契約書やマニフェスト制度によって管理が義務付けられてきましたが、有害性の高い化学物質を含む廃棄物については、「何が入っているか」が処理の連鎖の中で十分に共有されていないという課題が長年指摘されてきました。
不適正処理や不法投棄の背景には、こうした情報の非対称性がある場合も少なくありません。
今回の改正はその課題に正面から向き合うもので、有害性の高い「第一種指定化学物質」が廃棄物に含まれる場合、そのことを委託契約書に明記することを義務化しました。
「何が入っているか」を契約書の段階から記録することで、処理の流れ全体を見える化し、適正処理を担保しようという狙いがあります。
改正は2段階で進む
今回の廃棄物処理法(廃掃法)施行規則の改正は、2026年1月と2027年1月の2段階で施行されます。
それぞれの内容と対象を正確に把握しておくことが、実務対応の出発点になります。
第1段階 2026年1月1日施行(すでに施行済み)
委託契約書への記載義務の追加が主な内容です。
対象となるのは、PRTR法(化学物質排出把握管理促進法)上の「第一種指定化学物質等取扱事業者」に該当する排出事業者で、常時従業員が21人以上かつ年間取扱量が政令で定める量以上の両方を満たす事業者が対象となります。
該当する場合、委託する産業廃棄物に第一種指定化学物質が含まれているときは、委託契約書にその物質名と量または割合を記載しなければなりません。
全国産業資源循環連合会の標準様式では第3条第1項に「キ」が追加され、「適正処理に必要な情報」の記載欄にも新項目が設けられています。
2026年1月1日以降に締結または更新する契約書には、この改訂版様式を使うことが必要です。
第2段階 2027年1月1日施行(今から準備が必要)
電子マニフェストの報告項目追加が主な内容です。
前々事業年度において50トン以上の特別管理産業廃棄物(爆発性・毒性・感染性等のある廃棄物)が発生する事業場から廃棄物の処分を受託する業者が対象となります。
2027年1月以降、処分受託者が電子マニフェストで終了報告を行う際には、処分を行った者の氏名と許可番号、処分を行った事業場の名称と所在地、処分方法、処分方法ごとの処分量、処分後の廃棄物または再生された物の種類と数量の登録が義務化されます。
排出事業者側の直接義務ではありませんが、委託先の処理業者がこの対応をとれているかどうかを今から確認しておくことが、コンプライアンス管理のうえで重要です。
「第一種指定化学物質」とは何か
PRTR法第2条第2項に基づき政令で指定された化学物質で、人の健康や動植物の生息・生育に有害、またはオゾン層を破壊するおそれがあると判断されたものです。
経済産業省が公表している「第一種指定化学物質リスト」には、鉛・トルエン・ベンゼン・塩化メチレンなど、製造業の現場でなじみ深い物質が数多く含まれています。
含有率の目安は、一般の第一種指定化学物質で1%以上、特定第一種指定化学物質(発がん性等が特に高いもの)では0.1%以上とされています。
自社が排出する産業廃棄物にこれらの物質が含まれているかどうかは、SDS(Safety Data Sheet、化学物質の危険有害性情報をまとめた文書)やWDS(Waste Data Sheet、廃棄物の性状・有害物質情報をまとめた文書)で確認することができます。
加工・研磨・洗浄・表面処理・めっき・塗装・薬品処理を行っている現場では、「うちは関係ない」と思っていても対象になるケースが多くあります。
まず自社の製造工程で使用している化学物質とリストを照合することを、実務の第一歩としてお勧めします。
委託契約書の実務対応 具体的な手順
改正に対応した委託契約書への切り替えは、以下の手順で進めることができます。
まず、全国産業資源循環連合会が公表している改正対応版の標準様式を入手します。
次に、自社がPRTR法上の「第一種指定化学物質等取扱事業者」に該当するかを、従業員数と年間取扱量の両面から確認します。
該当する場合は、SDSやWDSをもとに廃棄物に含まれる第一種指定化学物質の名称・量または割合を整理します。
その情報を委託先の処理業者と共有し、紙またはデータのどちらで提供するかを事前に調整します。
最後に、2026年1月1日以降に締結または更新するすべての契約書に新記載事項が反映されているかを確認します。
すでに有効な契約書をただちに作り直す義務はありませんが、更新のタイミングで必ず改正対応版に切り替えることが必要です。
年度替わりや取引条件の変更に伴う更新が近い場合は、早めに委託先と調整を進めておくことをお勧めします。
廃棄物の「量そのものを減らす」視点が競争力になる
法改正をコンプライアンス対応として捉えるのは当然ですが、それを機に「そもそも出す廃棄物を減らす」という視点を持つことが、経営にとっての最短ルートになります。
委託契約書に記載する廃棄物の量が多ければ多いほど、含有物質の把握・記載の手間が増えます。
それだけでなく、産業廃棄物の処理費用は重量で決まるため、廃棄物そのものの重量を減らすことが直接的なコスト削減につながります。
フィルタープレスによって脱水後の固形分に残る水分の割合(含水率)を下げることは、廃棄物として出る重量を減らすことに直結します。
含水率が5%下がれば、年間の汚泥重量が数百トン単位で減り、処理単価を仮に2万円/tとすれば年間数百万円規模のコスト削減につながります。
法対応とコスト削減を同時に達成できるこの視点は、経営層にとっても環境担当者にとっても、共通の優先課題になり得ます。
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FAQ|よくある質問
Q:自社が「第一種指定化学物質等取扱事業者」に該当するかどうか、どうやって確認すればいいですか?
まず経済産業省が公表している「第一種指定化学物質リスト」と、自社で取り扱う化学物質を照合します。
次に、常時従業員数が21人以上であること、かつ年間取扱量が政令の基準を超えていることの両方を確認します。
不明な点は、産業廃棄物処理を委託している業者や都道府県の廃棄物担当窓口に相談することをお勧めします。
Q:すでに締結済みの委託契約書はどうすればいいですか?
2026年1月1日以降に新たに締結または更新する契約書が改正の対象です。
現在有効な契約書をただちに作り直す義務はありませんが、更新のタイミングで必ず改正対応版に切り替えることが必要です。
年度替わりや取引条件変更のタイミングが近い場合は、早めに委託先と調整しておくことをお勧めします。
Q:フィルタープレスで含水率を下げると、法改正対応にどう役立ちますか?
含水率を下げることで廃棄物として排出する重量が減り、委託契約書に記載する廃棄物の量も少なくなります。
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