南鳥島レアアース泥プロジェクトにおけるフィルタープレスの役割は、船上脱水だけではありません。
陸上の精製工程でも、化学浸出後の残渣分離・中間固液分離・廃滓処理という3つの工程で、フィルタープレスは不可欠な装置として登場します。
つまり、採掘から最終製品まで一気通貫でフィルタープレスが関与するというのが、本プロジェクトの大きな特徴です。
この記事では、レアアース泥が船上から陸上へ輸送された後の精製プロセスを整理し、各工程でフィルタープレスがどう貢献するかを解説します。

※プロジェクトの全体像については南鳥島レアアース泥 船上脱水がプロジェクトの採算性を決める理由をご覧ください。

陸上精製工程の全体フロー

船上で脱水・減容化された濃縮泥は、陸上工場へ輸送された後、以下の工程を経てレアアース酸化物として取り出されます。

まず陸上前処理として、輸送された濃縮泥を乾燥・均質化します。
この工程では、含水率にばらつきがある濃縮泥を均一な状態に整えることで、後工程である化学浸出の効率を安定させます。
乾燥が不十分だと浸出液の濃度が安定せず、精製品質のばらつきに繋がるため、乾燥・均質化は精製工程全体の起点となる極めて重要な工程です。

次に化学浸出工程で、希塩酸などの酸をレアアース泥に作用させ、レアアース成分を液体側に溶出させます。
南鳥島のレアアース泥はリン酸カルシウム(アパタイト)にレアアースが濃縮された構造のため、酸で比較的容易に抽出できるのが特徴です。
また陸上鉱山のレアアース鉱石と異なり、放射性物質や有害物質をほとんど含まないため、環境負荷を抑えた精製プロセスが可能です。

浸出後の液体(浸出液)には目的のレアアースが含まれますが、同時に固体残渣も大量に発生します。
この固体残渣を浸出液から分離するのが最初の固液分離工程です。
その後、溶媒抽出などの分離・精製工程を経て、最終的にネオジム(Nd)やジスプロシウム(Dy)などのレアアース酸化物が得られます。

工程① 化学浸出後の残渣分離

化学浸出工程が終わった後のスラリー(液体に微細な固体が混じったドロドロの液体)には、レアアースを含む浸出液と、抽出後の固体残渣が混在しています。
この固体残渣を効率よく分離することが、後工程の精製効率と最終的なレアアース回収率を左右します。
もし残渣の分離が不完全だと、精製工程に固体粒子が持ち込まれ、溶媒抽出設備の閉塞や精製品質の低下を招く恐れがあります。

浸出後の残渣は微細粒子を含む難ろ過性のスラリーであることが多く、極めて高い固液分離性能が求められます。
フィルタープレスは加圧ろ過によって微細粒子を確実に捕捉しながら、清澄な浸出液を効率よく回収できる装置です。
遠心分離機やデカンターと比較しても、微細粒子の捕捉性能と低含水率の達成という2点において、フィルタープレスは優位性を持っています。

また、浸出液には希塩酸などの酸性成分が含まれるため、接液部の耐酸性が不可欠です。
マキノのMDFシリーズが採用する樹脂製(ポリプロピレン)ろ過板は、酸性環境への高い耐性を持ちながら、金属コンタミネーション(金属汚染)をゼロに抑えます。
金属製のろ過板では酸によって溶出した金属イオンが浸出液に混入し、最終製品の品質を損なうリスクがありますが、樹脂製ろ過板はこの懸念を根本から排除し、高品質な固液分離を実現します。

工程② 中間固液分離

溶媒抽出などの分離・精製工程の途中でも、固液分離が必要になる場面は多々あります。
レアアースの精製は採鉱から金属化までの工程が複雑かつ多段階にわたるため、中間の固液分離も複数回発生します。
各段階で生じる固体成分を丁寧に分離しながら、目的の成分を濃縮・精製していく必要があるのです。

この中間固液分離では、処理するスラリーの性状が工程ごとに異なります。
含有成分やpH、粘度、粒子径がそれぞれ変わるため、各工程の条件に最適化されたフィルタープレスの設定が求められます。
汎用品をすべての工程に流用してしまうと、ある工程では過剰スペックになり、別の工程では性能不足に陥るという問題が生じかねません。

マキノは一品一様の設計を基本としており、各工程のスラリー性状に合わせて圧力設定・ろ布の素材と織り方・サイクル時間を個別に最適化します。
愛知県常滑市の本社ラボでの実測データをもとに最適な仕様を特定するため、導入後に期待した性能が出ないといった事態を防ぐことが可能です。
複数工程にまたがるシステム全体を一貫した視点から提案できる点は、マキノの大きな強みといえます。

工程③ 廃滓・残液処理

レアアースを抽出した後に残る廃滓(固体残渣)と残液の処理も、プロジェクトの環境対応における重要課題です。
南鳥島の資源はクリーンであるとされていますが、精製工程で使用した薬液を含む廃液・廃滓は適切に処理し、その体制を整備しておく必要があります。

廃滓の脱水処理において、フィルタープレスによって可能な限り水分を除去できれば、廃棄物の重量と容積を大幅に削減できます。
含水率(固形分に残る水分の割合)が5%下がるだけでも、処理コストの削減と環境負荷の低減を同時に達成できるのです。
南鳥島から東京までの長距離輸送を考慮すると、廃滓の減容化による輸送コスト削減のメリットは見逃せません。

また、残液に含まれる薬液成分の回収・再利用には、精密ろ過装置との組み合わせが有効です。
浸出工程で使用した希塩酸などを回収して再利用することで、薬液の調達コストを下げるとともに廃液処理の負担を軽減します。
廃滓・残液のトータルコストを最小化する設計が、事業の採算性を高める重要な要素となります。

粉砕・ろ過・乾燥を一貫して提案できる強み

レアアース泥の陸上精製工程では、固液分離だけでなく、乾燥・粉砕・均質化といった前後工程も重要です。
マキノはこれらすべてを自社で設計・製造できる専業メーカーであり、フィルタープレスで脱水したケーキを乾燥機で均質化するまでの一貫したシステム提案が可能です。

個々の装置を別々のメーカーから調達する場合と異なり、システム全体を視野に入れた最適化が行えます。
各装置の仕様が整合されているため工程間のトラブルが起きにくく、性能の最大化とメンテナンスの簡素化が実現します。
また窓口が一本化されることで、万が一のトラブル時にも原因特定と対応が迅速になるという実務上のメリットもあります。

船上脱水から陸上精製まで、プロジェクト全体を俯瞰した技術提案ができるメーカーは国内でも稀です。
1932年の創業以来、多種多様なスラリーと向き合ってきた経験を活かし、マキノは南鳥島レアアース泥プロジェクトの量産フェーズに向けて技術的な準備を本格化させています。

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FAQ|よくある質問

Q:酸性環境での長期稼働に対応できますか?


はい、可能です。マキノのMDFシリーズが採用する樹脂製ろ過板は、希塩酸などの酸性環境への高い耐性を備えています。
接液部を金属フリーにすることで、腐食による劣化と精製品質への悪影響を同時に防ぎます。
具体的な条件をお知らせいただければ、最適な材質を選定します。

Q:複数工程にわたるシステム全体の設計・調達を一括で依頼できますか?


はい、承っております。マキノは粉砕・ろ過・乾燥のすべてを自社で設計・製造できるため、残渣分離から廃滓処理、乾燥工程まで一括でのシステム提案が可能です。
処理量やスラリー性状に応じた具体的な検討を開始いたします。

Q:廃滓処理で含水率をどこまで下げられますか?


スラリーの性状によりますが、最大1.5MPaの高圧圧搾と最適なろ布の組み合わせにより、他の方式では到達できない低含水率を実現します。
本社ラボにて実際のスラリーサンプルを用いたろ過テストを行い、達成可能な数値と廃棄物削減量をデータで提示いたします。

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