「含水率をもっと下げたいが、どの方式を選べばいいかわからない」——脱水設備の更新を検討する現場でよく聞く悩みです。
フィルタープレスの脱水性能を左右する最大の要素は「圧搾方式」であり、水圧圧搾と空気圧搾ではその原理・到達できる含水率・適した用途がまったく異なります。
この記事では、2つの圧搾方式の物理的な違いと、現場での選び方を技術的な視点から解説します。
そもそも「圧搾」とは何か
フィルタープレスの基本的なろ過工程は、ポンプでスラリー(液体に微細な固体が混じったドロドロの液体)をろ室に圧入し、ろ布(液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター)で固液分離するものです。
しかし、ポンプ圧力だけで脱水を行う「単純加圧式」では、ケーキ層(ろ過が進むにつれてろ布の表面に積み重なる固体の層)が形成された後の脱水に限界があります。
そこで登場するのが「圧搾」という工程です。
ろ室内に設置されたダイアフラム(弾性膜)を膨らませてケーキを物理的に絞り上げることで、単純加圧では届かない低含水率(分離後の固形分に残る水分の割合)を実現します。
このダイアフラムを膨らませる媒体として、「水(水圧)」を使うか「空気(空気圧)」を使うかによって、圧搾方式が分かれます。
空気圧搾の仕組みと特徴
空気圧搾は、コンプレッサーで圧縮した空気をダイアフラムに送り込み、ケーキを圧縮する方式です。
空気圧搾の最大の特徴は「乾燥効果」にあります。
ダイアフラムでケーキを圧縮した後、圧縮空気をケーキ層に直接通気する「エアブロー」工程と組み合わせることで、物理的な圧搾に加えて空気による乾燥効果が得られます。
この「正ブロー(供給側から空気を通す)」と「逆ブロー(排液側から空気を通す)」を組み合わせることで、ケーキ内部に残った水分を効率よく排出できます。
一般的な空気圧搾の圧力は0.4〜0.7MPa程度で、水圧圧搾と比べると圧搾力は低めです。
セラミックス・食品・化学など、比較的ろ過しやすいスラリーや、エアブロー効果が脱水に有効な用途で広く使われています。
水圧圧搾の仕組みと特徴
水圧圧搾は、加圧した水をダイアフラムに送り込んでケーキを圧縮する方式です。
水は空気と異なり非圧縮性流体のため、圧力を均一かつ高精度に伝えることができます。
水圧圧搾の最大の特徴は「高圧力での均一圧搾」です。
マキノのMDFシリーズでは、大気圧の約15倍に相当する圧力(1.5MPa)での圧搾が可能で、空気圧搾では到達できない極限の低含水率を実現します。
圧力が均一に伝わるため、ケーキ全体を均質に圧縮でき、部分的な水分ムラが生じにくい点も大きな強みです。
化学・鉄鋼・半導体・産廃処理など、含水率の低さが処理コストや製品品質に直結する現場で選ばれています。
難ろ過性スラリーや高粘性スラリーの処理においても、高圧で強制的に水分を絞り出せる水圧圧搾の優位性が発揮されます。
水圧圧搾と空気圧搾の比較
2つの方式を整理すると以下のようになります。
圧搾圧力は、空気圧搾が0.4〜0.7MPa程度であるのに対し、水圧圧搾は最大1.5MPaまで対応可能です。
到達できる含水率の低さは水圧圧搾が優位で、難ろ過性・高粘性スラリーへの対応力も水圧圧搾が上回ります。
一方、エアブロー(空気乾燥)との組み合わせによる乾燥効果は空気圧搾の強みです。
設備コストは空気圧搾の方が低く抑えられる傾向があります。
どちらが優れているという話ではなく、処理するスラリーの性状と目標含水率によって最適な方式が変わります。
WAP型が実現する「水圧+空気乾燥」の組み合わせ
マキノのWAP型(全自動圧搾脱水機)は、水圧圧搾と空気乾燥の両方を一台に組み込んだ機種です。
水圧による高圧圧搾で含水率を物理的に下げた後、正ブロー・逆ブローによる空気乾燥工程でさらに水分を追い出すことで、含水率60%台という極限の脱水性能を実現します。
「水圧圧搾の高圧力」と「空気乾燥の追い込み」を組み合わせることで、それぞれ単独では届かない脱水性能を発揮します。
含水率が5%下がれば年間の汚泥重量が数百トン単位で減り、処理単価を仮に2万円/tとすれば年間数百万円規模のコスト削減につながります。
この数字が、WAP型への投資対効果を正当化する根拠になります。
どちらの方式が自社に合うか、判断するための指標
方式選択の判断基準を整理すると、以下のとおりです。
まず、目標含水率が70%以下を求める場合は水圧圧搾が有利です。
スラリーの粘度が高い・粒子が微細・難ろ過性という場合も水圧圧搾を検討すべきです。
一方、比較的ろ過しやすいスラリーで初期投資を抑えたい場合や、エアブロー効果が乾燥に有効な場合は空気圧搾が合っています。
どちらの方式が適するかは、スラリーサンプルを使ったラボテストで実測することが最も確実な判断方法です。
マキノは水圧・空気圧搾の両方に対応できる
重要なのは、マキノが水圧圧搾・空気圧搾の両方の製品ラインナップを持つ専業メーカーである点です。
現場の目標含水率とスラリー性状に応じて最適な機種を提案できます。
「どちらが合うかわからない」という状態でも、ラボテストの結果をもとに最適な方式と機種を一品一様でご提案します。
1932年の創業以来6,000例以上の納入実績があるからこそ、「この性状のスラリーにはこの方式が合う」という判断を、カタログではなくデータで示すことができます。
どちらの方式が正解かは、御社のスラリーが決めます。
現場の数値を一緒に整理しましょう
「今の含水率に満足していない」
「水圧圧搾に変えたらどれだけコストが下がるか知りたい」
「難ろ過性スラリーの脱水に困っている」
現在の装置での含水率・月間処理量・産廃処理単価をお聞かせいただければ、圧搾方式の変更によるコスト削減額と投資回収期間を数値でお示しします。
愛知県常滑市の本社ラボでのろ過テストも合わせて実施できます。
FAQ|よくある質問
Q:現在、空気圧搾の装置を使っています。水圧圧搾に変えると含水率はどれくらい改善しますか?
スラリーの性状によって改善幅は異なりますが、難ろ過性・高粘性のスラリーでは5〜15%程度の含水率改善が見込めるケースがあります。
含水率が5%改善するだけで年間の産廃処理コストが数百万円単位で変わる可能性があります。
現在の装置での含水率と処理量をお聞かせいただければ、改善幅と投資回収期間のシミュレーションをご提示します。
Q:水圧圧搾の「水」は何を使いますか?処理後の水はどうなりますか?
一般的に工業用水や上水を使用します。
圧搾に使う水はダイアフラムの外側を加圧するだけで、スラリーには直接触れません。
使用した水は圧搾後に回収・循環利用できる設計になっており、大量の排水が発生するわけではありません。詳細な仕様はお客様の現場条件に合わせてご説明します。
Q:水圧圧搾と空気圧搾、どちらが自社に合うか判断できません。
スラリーサンプルをお送りいただければ、ラボテストで両方式の効果を実測して比較できます。
「どちらが合うか」をカタログや営業トークで判断するのではなく、御社の実際のスラリーで数値を出すことがマキノの流儀です。
まずは現在の処理条件と課題をお聞かせください。






