フィルタープレスの稼働中にろ液(ろ過後に排出される液体)タンクを確認したとき、いつもより濁りが増していることがあります。

ろ液の濁りは「固形分がやや増えた」だけの問題ではありません。
排水基準(水質汚濁防止法で定められたSS濃度などの上限値)を超えるリスクと、ケーキ層(ろ過が進むにつれてろ布の表面に積み重なる固体の層)の形成が崩れることによる脱水性能の低下という、二つの問題が同時に進行します。

この記事では、ろ液が濁る3つの原因とそれぞれの診断手順、現場でできる改善アプローチを整理します。

ろ液が濁ることで何が起きるか 放置するリスクを先に整理する

ろ液の濁りは、固液分離が正常に機能していないサインです。
本来ろ布(液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター)で捕集されるべき固体粒子が、ろ液側に流れ出している状態です。

排水基準との関係でいえば、水質汚濁防止法の一律基準ではSS(浮遊固形物)が200mg/L(日間平均150mg/L)以下であることが求められます。
自治体の上乗せ基準がある場合は、さらに厳しい数値が設定されます。
ろ液のSS濃度が基準を超えた状態で排水を続けると、行政からの指導・立入検査・操業停止命令のリスクが生じます。

もう一つの問題は脱水性能の低下です。
固体粒子がろ布を通過してしまうということは、ケーキ層が適切に形成されていないことを意味します。
ケーキ層の密度が下がると圧搾の効率が落ち、含水率(分離後の固形分に残る水分の割合)が上昇します。
含水率が5%上がると、年間汚泥排出量500tの工場では産廃処理費が年間50万円以上増えるケースがあります。

原因① ろ布の破れ・目の粗化

ろ液が急に濁り始めた場合、最初に確認すべきはろ布の物理的な破損です。
ろ布の一部に破れや穴があると、その箇所から固体粒子が大量にろ液側に通過します。

破損の確認方法は、ろ布を取り外して光に透かして見ることです。
穴や裂けがある箇所は光が強く透けます。
目が粗化(繊維が摩耗して隙間が広がった状態)している場合は全体が均一に透けやすくなっており、目視だけでは判断が難しいこともあります。
その場合は新品のろ布と比較して透過の差を確認します。

ろ布が破損する原因には、長期使用による繊維の摩耗・スラリーに含まれる研磨性粒子による摩耗・高圧運転時の局所的な応力集中・ケーキ剥離時の物理的負荷などがあります。
研磨性の高いスラリー(セラミック・炭酸カルシウム・金属酸化物など)を扱う現場では、ろ布の消耗が早く進む傾向があります。

破損が確認された場合は、そのろ布を交換します。
交換後もろ液の濁りが続く場合は、複数枚が破損している可能性か、他の原因(パッキンの隙間・粒径変化)が並行して存在する可能性を確認します。

原因② パッキンの隙間・シール部の劣化

ろ布に目立った破損がないのにろ液が濁る場合、次に確認すべきはパッキン(ろ過板同士の接合部をシールするゴム製の部材)の劣化や隙間です。

フィルタープレスはろ過板を複数枚積み重ねて加圧する構造のため、板と板の接合部のシール性が脱水性能を左右します。
パッキンが劣化・変形・位置ズレを起こすと、その隙間からスラリーがろ液側に漏れ込み、固形分がろ液に混入します。

パッキンの劣化は、ろ布のように光透かしで確認できるものではありません。
稼働中に接合部の外側にスラリーが滲み出ていないか目視で確認するか、稼働を止めてパッキン全周を触診で確認します。
変形・亀裂・硬化が見られるパッキンは交換時期です。
パッキンの素材がスラリーの化学的性質(酸・アルカリ・溶剤)に対して耐性を持っているかも確認が必要です。

また、ろ過板の整列不良(板が正確に積み重なっていない状態)もシール不良の原因になります。
整列不良は開枠・閉枠の繰り返しや、スラリーの異物混入によって起きることがあります。
板の位置を確認し、ズレが見られる場合は正しい位置に調整します。

原因③ スラリーの粒径変化

ろ布もパッキンも正常なのにろ液が濁る場合、3つ目の原因として確認すべきなのがスラリーの粒径変化です。
この原因は見落とされやすく、設備側の点検だけでは発見できません。

スラリーの粒径が小さくなると、これまでのろ布の目開きでは固体粒子を捕集しきれなくなります。
製造プロセスの変更・原料の仕入れ先変更・粉砕工程の設定変更・季節による凝集性の変化などが粒径変化の原因として考えられます。
スラリー性状が変わったタイミングとろ液の濁りが始まったタイミングを照合することが診断の第一歩です。

粒径が細かくなった場合の対応策は2つです。
一つは凝集剤(フロキュラント)の導入または増量で、微細粒子を粗大化させることでろ布での捕集率を高められます。
もう一つはろ布の目開きの見直しです。ただし目開きを小さくしすぎると液体の透過抵抗が高まって脱水が遅くなるため、粒径分布のデータをもとに慎重に選定する必要があります。

また、固形分濃度の上昇もろ液の濁りにつながることがあります。
濃度が高すぎると圧入初期にケーキ層が形成される前に高圧がかかり、固体粒子がろ布を押し通す(ブリーチング)現象が起きます。
スラリーの事前濃縮・希釈のバランスを確認することも有効です。

3つの原因が複合している場合の優先順位

ろ液の濁りは単一の原因だけでなく、複数の原因が重なっているケースも多くあります。
対処の優先順位は「確認が早くできて、効果が大きいものから」が基本です。

まずろ布の破損確認を行います。取り外して目視するだけなので最も早く確認できます。
次にパッキンのシール確認を行い、劣化や整列不良がないかを確認します。
これらに問題がなければ、スラリーのサンプルを採取して粒径・固形分濃度の変化を確認します。

複数の原因が絡んでいる場合でも、この順番で確認することで優先順位がつけやすくなります。
スラリー性状の変化は、現場だけでは判断が難しいことがあります。
その場合は、スラリーサンプルを専門メーカーのラボテストに出して粒径分布を計測することが確実な診断につながります。

まとめ

フィルタープレスのろ液が濁る原因は、ろ布の破れ・パッキンの隙間・スラリー粒径の変化の3軸に整理されます。
診断は「ろ布の目視確認 → パッキンのシール確認 → スラリーサンプルの粒径確認」の順で進めることで、複合原因でも優先順位がつけやすくなります。

排水基準超過のリスクがある場合は早急な対処が必要です。
マキノでは現場のスラリーサンプルと現行のろ液データをもとに、原因の診断から改善策の提案まで対応しています。
1932年創業・納入実績6,000例以上の設計知見で、ろ液品質の安定化を支えます。

FAQ|よくある質問

Q:ろ液のSS濃度はどれくらいで排水基準を超えますか


水質汚濁防止法の一律基準ではSS200mg/L(日間平均150mg/L)が上限です。
自治体の上乗せ基準がある場合はさらに厳しい数値が設定されます。
排水先が下水道の場合は下水道法の基準(SS600mg/Lが多い)が適用されますが、自治体によって異なります。
現在の排水先と適用される基準を確認した上で、定期的なSS測定と記録を行うことをおすすめします。

Q:ろ布交換後もろ液の濁りが続く場合、何が考えられますか


ろ布交換後も濁りが続く場合、パッキンの劣化・シール不良かスラリー粒径の変化が原因として考えられます。
また、複数枚のろ布に問題がある場合は1枚交換では改善しません。
稼働中にパッキン部からのスラリー滲み出しがないか確認し、スラリーサンプルの粒径を測定することで原因を絞り込めます。

Q:ろ液の濁りを放置するとコスト面でどんな影響がありますか


ろ液の濁りはケーキ層(ろ布表面に積み重なる固体の層)の形成不良を伴うことが多く、含水率の上昇につながります。
含水率が5%上がると年間汚泥排出量500tの工場では産廃処理費が年間50万円以上増えるケースがあります。
また排水基準を超えた場合の行政対応・浄化設備の追加投資といったコストも発生します。
早期対処が総コスト最小化につながります。

同じ悩みを持つ現場の話を聞かせてください

「ろ液が濁り始めたが、何が原因かわからない」「排水基準のリスクが気になる」。
そのような段階でのご相談をお待ちしています。

マキノでは現場のスラリーサンプルとろ液データをもとに、原因の診断から改善策の提案まで対応しています。
同じ課題を経験した現場の事例とも照合しながら、現場に合った解決策を一緒に考えます。

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