「フィルタープレスを稼働させているのに、ろ液(ろ過後に排出される液体)の浮遊固形物(SS)が排水基準を超えることがある」。
そのような問題を抱える現場では、排水基準の遵守と操業の安定が同時に問われます。
水質汚濁防止法が定める排水基準は、業種・排水先・自治体の上乗せ基準によって異なりますが、フィルタープレスから排出されるろ液の品質はろ布の状態・圧力設定・スラリー性状の変化によって変動します。
この記事では、ろ液品質が悪化する原因の診断方法と、排水基準を安定してクリアするためのフィルタープレス設計・運用のポイントを整理します。
水質汚濁防止法が製造業に求める排水基準とは
水質汚濁防止法(昭和45年制定)は、工場・事業場から公共用水域または下水道に排出される排水(特定施設からの排水)の水質基準を定める法律です。
製造業において廃水処理設備を持つ事業場はほぼ全て対象になります。
排水基準には全国共通の一律基準と、都道府県が条例で上乗せする上乗せ基準の2種類があります。
固液分離の観点で特に重要な項目は、浮遊固形物(SS)・BOD(生物化学的酸素要求量)・重金属類の濃度です。
一律基準ではSSは200mg/L(日間平均150mg/L)ですが、上乗せ基準がある自治体ではさらに厳しい数値が設定される場合があります。
また、2025年からは水質汚濁防止法の大腸菌指標が変更されており、PFOS・PFOA(有機フッ素化合物)に関する暫定指針値も設けられています。
法改正の動向を定期的に確認し、現場の排水管理に反映することが必要です。
フィルタープレスから排出されるろ液が排水基準を超えた場合、行政からの指導・立入検査・操業停止命令といった規制リスクが生まれます。
安定した操業を続けるためには、ろ液品質の継続的な管理体制が不可欠です。
ろ液品質が悪化する原因を3つの軸で診断する
フィルタープレスのろ液に濁りや固形分の混入が生じる原因は、大きく3つの軸に整理できます。
ろ布の破損または目詰まり
ろ布(液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター)が破損していると、本来捕集されるはずの固体粒子がそのままろ液側に流出します。
ろ布の微細な穴・裂けは目視では確認しにくいため、ろ液の濁りが突然増した場合はろ布の全面点検が必要です。
一方、目詰まりが進んだろ布は液体の透過抵抗が高まり、設定圧力では脱水が進まなくなります。
圧搾サイクルを終えてもケーキ層(ろ過が進むにつれてろ布の表面に積み重なる固体の層)が厚く残り、次のサイクルで不均一なろ過が起きてろ液品質が乱れます。
スラリー性状の変化
製造プロセスの変更・原料の仕入れ先変更・季節による粘度変動で、スラリーの粒径・固形分濃度・粘度が変わります。
特に粒径が細かくなった場合、これまでのろ布の目開きでは固体粒子を捕集しきれず、ろ液への固形分流出が増えることがあります。
スラリー性状の変化と排水基準超過の時期が一致していないか確認することが診断の第一歩です。
圧力設定のズレによるろ過不均一
供給圧力が高すぎると初期の圧入が急激になり、ケーキ層が形成される前に固体粒子がろ布を通過してしまいます(ブリーチング)。
初期圧力を緩やかに立ち上げ、ケーキ層が形成されてから高圧に移行するランプ制御が、ろ液品質の安定に有効です。
また圧力が低すぎると脱水が不十分なまま終わり、ケーキが崩れやすくなって次のサイクルに影響します。
排水基準を安定してクリアするための設計と運用のポイント
ろ液品質を排水基準内に安定させるためには、フィルタープレス本体の設計と日常運用の両面からアプローチが必要です。
設計面で重要なのは、スラリーの粒径に対して適切なろ布の目開きを選定することです。
目開きが大きすぎると粒子が通過し、小さすぎると液体の透過抵抗が高まります。
スラリーの粒径分布データをもとにろ布を選定し、必要に応じて凝集剤による粒子の粗大化処理を前処理として組み込みます。
圧力設定はランプ制御(低圧から徐々に高圧へ移行する制御方式)を採用することで、初期のブリーチングリスクを低減できます。
高圧圧搾においても、初期の圧入段階と圧搾段階でプロファイルを分けることが、ろ液品質の安定に寄与します。
運用面では、定期的なろ液のSS測定と記録が基本です。
SS値の推移をグラフ化することで、ろ布劣化の傾向を早期に把握でき、計画的なろ布交換につなげられます。
ろ布の定期洗浄(高圧水洗浄・化学洗浄)によって目詰まりを解消し、ろ液品質を回復させることも重要な維持管理作業です。
マキノの一品一様設計がろ液品質の安定に果たす役割
ろ液品質を排水基準内に安定させるためには、フィルタープレス本体・ろ布・ポンプ・圧力制御の設計が、処理するスラリーの性状に対して一体として最適化されている必要があります。
汎用品を組み合わせた設備では、スラリー性状が変化したときに各部品の適合性が崩れ、ろ液品質が乱れやすくなります。
マキノが採用する一品一様設計は、スラリーの粒径・粘度・温度・化学組成を入口で把握し、ろ布の素材・目開き・圧力プロファイル・サイクル時間を統合的に設計します。
この設計思想によって、スラリー性状の変動に対してシステムとして対応できる余裕が生まれます。
水質汚濁防止法の排水基準への対応は、設備導入時の設計精度に大きく依存します。
「導入後に排水基準を超えてから対策を講じる」のではなく、「スラリーサンプルのラボテストで排水品質を事前に確認してから設計する」という順序が、規制リスクを最小化します。
まとめ
フィルタープレスのろ液品質管理は、水質汚濁防止法の排水基準遵守と安定操業の両方に直結します。
ろ液品質悪化の原因はろ布の破損・目詰まり・スラリー性状の変化・圧力設定のズレの3軸で診断でき、それぞれに対応した改善策があります。
排水基準を安定してクリアするためには、スラリーの性状に合わせた設計・適切なろ布選定・定期的なSS測定と記録が必要です。
マキノでは、1932年創業・納入実績6,000例以上の設計知見をもとに、スラリーサンプルのラボテストから排水品質を事前に確認し、基準内の安定稼働を前提にした設計を提案します。
FAQ|よくある質問
Q:ろ液のSS(浮遊固形物)濃度の排水基準はどれくらいですか
水質汚濁防止法の一律基準ではSS200mg/L(日間平均150mg/L)です。
ただし都道府県・市区町村の上乗せ基準が適用される場合は、これより厳しい数値になります。
排水先が下水道の場合は下水道法の基準(SS600mg/Lが多い)が適用されますが、自治体によって異なります。
まず自社の排水先と適用される基準を確認し、定期測定で記録することが管理の基本です。
Q:ろ液の濁りが突然増した場合、まず何を確認すればよいですか
まずろ布の破損を確認します。光を当てて透かし見るか、ろ液タンクの固形分量を目視確認します。
次に直近でスラリーの性状変化(原料変更・工程変更)がなかったか確認します。
変化がなければ圧力ログを確認し、初期圧入が急激になっていないか(ブリーチング)を確認します。
この3点を順番に確認することで原因の絞り込みができます。
Q:ろ液品質を安定させるために日常的に記録すべき数値はありますか
最低限記録すべき数値はSS濃度・供給圧力ログ・含水率(分離後の固形分に残る水分の割合)の3点です。
SS濃度は週1回以上の測定が目安で、推移をグラフ化することでろ布劣化の傾向を早期に察知できます。
供給圧力のログは圧搾サイクルごとに記録し、プロファイルの変化をモニタリングします。
これらの記録は排水基準超過時の行政対応においても根拠資料として活用できます。
現場の数値を一緒に試算しましょう
「現在のろ液品質が排水基準内に収まっているかわからない」「ろ液の濁りが増えていて原因が特定できない」。
そのような段階でのご相談をお待ちしています。
マキノでは、現場のスラリーサンプルと現行の排水データをもとに、ろ布選定・圧力設定・前処理の組み合わせを提案します。
ラボテストで排水品質を事前確認した上で設計することで、導入後の排水基準超過リスクを最小化します。






