汚泥(スラリー:液体に微細な固体が混じったドロドロの液体)が毎日工場内に積み上がっていくのに、脱水機はフル稼働のまま追いつかない、という状況はじわじわと現場を追い詰めます。
その原因が「機械の故障」ではなく「最初の設備設計のミス」であることは、現場ではなかなか気づきにくいことです。
この記事では、フィルタープレスの容量・ろ布・圧力の設計ポイントを整理し、処理量オーバーに陥る前に何を見直すべきかをお伝えします。

処理が追いつかない工場に共通していること

ある製造工場での話です。
増産対応のために生産量を2割増やしたところ、汚泥の発生量も同じように増えました。
既存の脱水機は型落ちながらも問題なく動いていたのですが、1日に処理できる量がどうしても足りない。
担当者は夜間に追加稼働を試みましたが、ろ布(液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター)の目詰まりが頻発し、かえって段取り替えの手間が増えてしまいました。

この状況、思い当たる方も多いのではないでしょうか。

処理が追いつかない現場に共通しているのは、導入当初の「スラリー性状の前提」が変わっているにもかかわらず、設備がそのままになっているという点です。
生産品種が変わる、処理水の組成が変わる、季節によって粘度が上がる。
こうした変化は少しずつ積み重なるため、設備の問題として認識されにくいのです。

フィルタープレスの処理能力は、機械のスペックだけで決まるわけではありません。
スラリーの粒径・粘度・温度、そして脱水サイクルの設定値が組み合わさって、実際の処理量が決まります。
どこか一つがずれれば、カタログ上の「処理能力」は絵に描いた餅になります。

容量設計のズレはどこで起きるのか

設備設計のミスとして最も多いのが、過小設計と過大設計の二つです。
どちらも「処理量の見積もり」が現実と合っていないことから生まれます。

過小設計の場合

毎日の汚泥発生量に対して脱水機の処理容量が不足し、汚泥が貯まる一方になります。
フル稼働を続けることでろ布やフィルタープレート(ろ板)の消耗も早まり、メンテナンスコストが想定以上にかさんでいきます。

過大設計の場合

処理量に対して機械が大きすぎると、ケーキ層(ろ布の表面に積み重なる固体の層)が薄くなりすぎて圧搾効率が下がることがあります。
さらに設備費が無駄に大きくなるため、投資回収の見通しも狂います。

では何をもとに容量を決めるべきか。
重要なのは、ピーク時のスラリー発生量と、1バッチあたりの処理時間(脱水サイクル)の両方を現実の数値で押さえることです。
「1日平均で何立方メートル発生するか」だけでなく、「最も発生量が多い時間帯や季節に何立方メートルになるか」まで見ておかないと、平均値で設計した機械がピーク時に詰まります。

ろ布と圧力設定が処理量に与える影響

設備の容量が合っていても、ろ布の選定と圧力設定が適切でなければ処理量は安定しません。

ろ布の選定

ろ布の目開き(メッシュの細かさ)と材質は、スラリーに含まれる粒子の大きさや形状に合わせて選ぶ必要があります。
目開きが大きすぎると固体がろ液(分離後の液体)に混入してしまい、小さすぎると目詰まりが頻発して処理時間が延びます。
スラリーの粒径分布が変わっていないかを定期的に確認し、ろ布の選定に反映させることが大切です。

圧力設定

圧力設定については、「高ければ高いほど脱水が進む」と思いがちですが、これは必ずしも正しくありません。
粘性の高いスラリーに過剰な圧力をかけると、ろ布が目詰まりを起こして逆に処理量が落ちることがあります。
マキノのフィルタープレスでは最大1.5MPaの高圧圧搾技術を持っていますが、実際の運用では「スラリーの性状に合った圧力設定」が最適であり、上限まで上げることが常に正解ではありません。

含水率(分離後の固形分に残る水分の割合)を1%下げるだけでも、年間の産廃処理重量は数百トン単位で変わります。
産廃処理費を約2万円/tとすると、含水率が5%改善されれば年間数百万円の削減につながることもあります。
圧力設定一つで変わる数字とは思えないかもしれませんが、これが設備設計の精度が問われる理由です。

設備更新・新規導入の前にやるべきこと

処理量の問題が起きてから設備を替えようとすると、どうしても「今すぐ動くものを」という判断になりがちです。
しかし急いで選んだ設備が、また同じ問題を繰り返すリスクは小さくありません。

設備更新や新規導入の前に、まず実際のスラリーサンプルでラボテストを行うことが重要です。
粒径・粘度・温度といった性状データを元に、最適な機種・圧力・ろ布・脱水サイクルを事前に検証することで、「入れてみたら想定と違った」という事態を防ぐことができます。

マキノでは、お客様から送っていただいたスラリーサンプルをもとにラボテストを実施し、処理量・含水率・圧力の最適値を確認した上で設備仕様を提案しています。
1932年の創業以来、民間製造業を中心に6,000例以上の納入実績があり、粒径・粘度・温度の異なる多種多様なスラリーへの対応ノウハウが積み上がっています。

設備設計は一品一様です。
同じ「汚泥脱水」でも、製造プロセスや原材料が違えば最適解は変わります。
カタログの数字だけで判断する前に、現物で検証することが設備選定の出発点になります。

処理量が設備の限界に近づいてから慌てるより、少し余裕のあるうちに見直す。
それが5年後・10年後の設備費と産廃コストを大きく変えることになります。

まとめ

汚泥脱水の処理量が追いつかない問題は、多くの場合、設備の老朽化よりも設備設計と現状のスラリー性状のずれから来ています。
容量設計の過不足、ろ布の選定、圧力設定の三点を改めて見直すことで、既存設備でも処理量を改善できるケースがあります。
新規導入・更新の際はスラリーサンプルによるラボテストを経てから仕様を決めることが、長く使える設備を選ぶための最短経路です。

FAQ|よくある質問

Q:フィルタープレスと遠心分離機では、どちらが処理量を多くできますか


一概には言えませんが、含水率という観点ではフィルタープレスが有利です。
遠心分離機の含水率は一般的に70〜85%程度、ベルトプレスは85%以上になることが多いのに対し、フィルタープレスは50〜70%まで下げられるケースがあります。
処理量(時間あたりのスループット)は連続稼働できる遠心分離機のほうが大きい場合もありますが、産廃処理費の削減まで含めた総コストで比較すると、フィルタープレスが優れる場面は少なくありません。
スラリーの性状によって最適な機種は異なるため、ラボテストでの検証をお勧めします。

Q:設備の容量設計を誤った場合、どの程度のコスト差が出ますか


過小設計の場合、処理量不足による汚泥の滞留・追加運搬・産廃コスト増が積み重なります。
含水率が5%改善されるだけで年間数百万円規模のコスト差が出ることもあり、設計精度が投資回収期間を左右します。
適切な設計を行った場合、産廃コスト削減で1〜3年での投資回収が見込まれるケースも多くあります。

Q:古い設備でも、ろ布や圧力設定の見直しで処理量は改善できますか


はい、改善できるケースがあります。
ろ布の目詰まりや劣化、あるいはスラリー性状の変化に合っていない圧力設定が処理量を下げている場合、ろ布の交換と設定の調整だけで状況が改善することがあります。
ただし、設備本体の耐用年数(適切なメンテナンスで20〜30年が目安)を過ぎている場合は、更新も含めたトータルの検討をお勧めします。

スラリーのサンプルをお送りください。ラボテストで最適な設備仕様をご提案します。

処理量が追いつかない、含水率が高すぎる、設備更新のタイミングがわからない。
こうしたお悩みをお持ちの場合は、まずスラリーサンプルをマキノまでお送りください。

マキノでは、実際のスラリーを使ったラボテストを通じて、最適な機種・ろ布・圧力・脱水サイクルをご提案しています。
カタログの数字ではなく、お客様の現場のスラリーで確認することが、長く使える設備を選ぶための第一歩です。

1932年創業・納入実績6,000例以上の実績をもとに、一品一様の設計でお応えします。

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