脱水機を更新するたびに「前とどう変わるのか」を数字で説明できず、稟議が止まってしまう。
そういった声を、設備担当者・工場長から繰り返し耳にします。
問題の根っこは、固液分離の方式ごとに「どの程度の含水率が出るか」という基準値が社内に存在しないことです。
この記事では、遠心分離機・ベルトプレス・フィルタープレスの三方式を含水率と産廃コストの両面から比較し、切り替え検討に必要な数字を整理します。

固液分離の方式を変えると含水率はどう動くのか

含水率(分離後の固形分に残る水分の割合)は、固液分離の方式によって大きく異なります。
主要三方式の性能帯は以下のとおりです。

方式 含水率の目安
遠心分離機 70〜85%
ベルトプレス 85%前後
フィルタープレス 50〜70%

遠心分離機は高速回転による遠心力で液体を振り切る仕組みです。
処理スピードは速い一方、固形分の中に水分が残りやすく、含水率が70〜85%に落ち着くケースが多く見られます。
ベルトプレスはスラリー(液体に微細な固体が混じったドロドロの液体)をベルトで挟んで絞る方式で、連続処理には向きますが、脱水の深さという点では三方式のなかで最も浅い水準です。

フィルタープレスは、ろ布(液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター)の両側から圧力をかけ、ケーキ層(ろ布の表面に積み重なる固体の層)を形成しながら脱水します。
圧力をかける分だけ時間はかかりますが、含水率を50〜70%まで下げられる点が他方式との根本的な差です。

含水率20ポイントの違いは、単なる性能差の話ではありません。
廃棄物の重量に直結するため、コスト構造に大きな影響を与えます。

含水率の差は産廃コストにどう響くのか

産業廃棄物の処理費は重量に比例して課金されます。
1トンあたり約2万円の処理費を前提にすると、含水率の差がそのまま年間コストの差になる計算です。

たとえば、月50トンの脱水ケーキ(処理後の固形分)を排出している工場で、遠心分離機からフィルタープレスに切り替えて含水率が75%から60%に下がったとします。
水分15ポイントの削減は、乾燥固形分の比率が25%から40%へ移ることを意味します。
同じ固形分量を排出する場合、廃棄重量はおよそ37%減少します。
月50トンが31トン程度になれば、月あたり約38万円、年間で460万円前後の処理費削減につながります。

実際の削減幅はスラリーの組成・処理量・契約単価によって変わりますが、含水率が5%下がるだけで年間数百万円規模のコスト差が生まれることは、多くの現場で共通しています。

一方で見落とされがちな視点があります。
含水率を下げれば乾燥工程のエネルギー消費も減ります。
フィルタープレスで前処理の含水率を下げておけば、後段の乾燥機の負荷が軽くなり、燃料費・電力費の削減にも波及します。
固液分離単体のコストだけでなく、プロセス全体での削減効果を試算することが重要です。

フィルタープレスがすべての現場に最適とは言えない理由

ここで一度、立ち止まって考えておきたいことがあります。
フィルタープレスは含水率の低さにおいて優位ですが、すべての現場でそれが最優先事項とは限りません。

遠心分離機が適しているケース

処理スピードが最重要で、かつ後段に乾燥工程が存在しない場合です。
連続的に大量のスラリーを処理する必要があるとき、フィルタープレスのバッチ処理(一定量をまとめて処理するサイクル)はボトルネックになることがあります。

ベルトプレスが選ばれるケース

24時間連続稼働が前提で、スラリーの粘度が低く絞りやすい性状のときです。
ろ布の洗浄を連続して行いながら脱水を続けられるため、一部の食品・紙パルプ系の工場では今でも主力です。

フィルタープレスが真に力を発揮するケース

含水率の低下が産廃コストや乾燥コストの削減に直結する現場、あるいは後段プロセスに渡す固形分の品質(均一な乾燥・純度)が求められる製造プロセスです。
方式の選択は「どの数値が事業上のコストに最も効くか」から逆算するのが、遠回りに見えて最も合理的な手順です。

高圧圧搾で含水率をさらに下げるとき、何が変わるのか

フィルタープレスのなかでも、さらに含水率を下げたい場合に選ばれるのが圧搾式(膜圧搾)です。
通常のフィルタープレスは液圧だけで脱水しますが、圧搾式はろ布の背面から膜を膨らませて固形分をさらに絞り込みます。

マキノのMDFWシリーズは、最大1.5MPaの高圧圧搾に対応しています。
ただし、常に最大圧力をかけることが正解ではありません。
スラリーの粒径・粘度・温度によっては、低い圧力で十分な脱水が得られる場合もあります。
むしろ過剰な圧力はろ布の消耗を早め、メンテナンスコストを押し上げる原因になります。

適切な圧力設定は、スラリーの物性を分析したうえで決定します。
「どのスラリーに、どの圧力を、どのサイクルタイムで」という組み合わせを最適化することが、長期的な脱水コストの最小化につながります。
フィルタープレスは機械を入れれば終わりではなく、設計段階での物性把握と運転条件の最適化がセットです。

切り替えの投資回収は何年で見ればよいのか

設備更新の稟議で必ず問われるのが投資回収期間です。
フィルタープレスへの切り替えに関しては、産廃処理コストの削減額を軸に試算すると1〜3年での回収事例が多く見られます。

回収期間を左右するのは主に三つの変数です。

変数① 含水率の改善幅

現状の含水率と切り替え後の想定含水率の差です。
差が大きいほど削減重量が増え、回収が早まります。

変数② 産廃処理の単価と処理量

処理量が多く単価が高い現場ほど、含水率1ポイントの改善が年間コストに大きく反映されます。

変数③ 現状設備の維持コスト

遠心分離機は回転部品が多く、ベアリングやシールの交換頻度が高い機種もあります。
修繕費・部品費を含めたランニングコスト全体で比較すると、見かけ上の設備価格差よりも有利な試算になることがあります。

フィルタープレス本体の耐用年数は、適切なメンテナンスを前提とすれば20〜30年です。
1〜3年で投資を回収できれば、その後の15〜25年間は削減効果が積み上がり続ける計算になります。
産廃コストの削減は毎期の損益に影響するため、キャッシュフロー改善の観点からも評価されやすい投資です。

まとめ

遠心分離機・ベルトプレス・フィルタープレスの含水率は、それぞれ70〜85%・85%前後・50〜70%と明確な差があります。
含水率5%の違いが年間数百万円の産廃コスト差に変わる現場では、フィルタープレスへの切り替えは設備投資としての費用対効果が明確です。
ただし方式の選択は「含水率が低ければよい」という単純な話ではなく、処理量・スラリー物性・後段プロセスとの連携を総合的に判断する必要があります。
自社の現状数値をもとに試算してみることが、意思決定の最初の一歩です。

FAQ|よくある質問

Q:遠心分離機からフィルタープレスに切り替えた場合、含水率はどれくらい改善しますか


スラリーの性状によりますが、遠心分離機の含水率70〜85%に対して、フィルタープレスでは50〜70%が目安です。
差し引き15〜20ポイント前後の改善が期待できるケースが多く見られます。
ただし実際の数値はスラリーの粒径・粘度・固形分濃度によって変わるため、現場のサンプルを用いたテストが最も確実です。

Q:含水率が下がると産廃処理費はどれくらい変わりますか


処理費の単価を1トンあたり2万円として試算すると、含水率5%の削減で年間数百万円規模の削減につながる現場があります。
月100トンの廃棄物を排出している工場で含水率を10ポイント下げた場合、廃棄重量は概算で10〜20トン前後減少し、年間200〜400万円の削減効果になります。
実際の削減額は処理量と単価によって大きく変わるため、具体的な試算は現在の数値をもとに行うことを推奨します。

Q:フィルタープレスに切り替えた場合、投資回収期間の目安はどれくらいですか


産廃処理コストの削減を主な回収源とした場合、1〜3年での回収事例が多く見られます。
処理量が多く産廃単価が高い現場ほど回収が早まる傾向にあります。
また、フィルタープレスの耐用年数は適切なメンテナンスで20〜30年あるため、早期に回収できれば長期にわたってコスト削減効果が積み上がります。

現場の数値を一緒に試算しましょう

「うちのスラリーでどこまで含水率が下がるのか」「切り替えたら何年で元が取れるのか」。
この記事で示した数値はあくまで目安です。
実際の削減額は、現場の処理量・スラリー物性・産廃単価によって大きく変わります。

株式会社マキノは、1932年の創業以来、6,000例以上の納入実績をもとに、民間製造業の多種多様なスラリーに対応してきました。
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