フィルタープレスで脱水した固形分(ケーキ)が、ある日を境にパラパラと割れるようになった。
あるいは逆に、べたつきが強くてろ布に貼り付いたまま落ちにくくなった。
こうしたケーキ性状の変化は、スラリーの組成が変わっていなくても、圧搾時間やブロー圧力の設定が合っていないことで起きる。この記事では、圧搾時間とブロー圧力がケーキ性状に与える影響と、含水率を安定させるための調整方法を解説する。
ケーキが「割れる」状態と「ベタつく」状態は何が違うか
ケーキの性状は、含水率と固形成分の結合力という2つの要素で決まる。
ケーキが割れやすい状態は、脱水が進みすぎているか、または固形成分の結合が弱くなっている状態だ。
含水率が低すぎると、固形成分同士をつなぐ水分の表面張力がなくなり、粉状・粒状に崩れやすくなる。
この状態はケーキの取り扱いや搬送では扱いやすい面もあるが、ろ過サイクルの後半に過剰な圧搾時間をかけることでエネルギーと時間を無駄に消費していることが多い。
ケーキがベタつく状態は、水分が多く残っている、あるいは固形成分に粘着性のある成分が含まれている状態だ。
ベタつきが強いとケーキがろ布に張り付いて剥離しにくくなり、開枠後の落下が不完全になる。
ろ布の洗浄頻度が増加し、ろ布の目詰まりや早期摩耗にもつながる。
どちらの状態も、現場では「少し前まではうまく剥がれていた」という状態から徐々に悪化するケースが多い。
スラリーの性状が微妙に変化するだけで、以前設定した圧搾条件が最適でなくなることがある。
圧搾時間とケーキ含水率の関係を理解する
圧搾式フィルタープレスでは、加圧ろ過の後に膜を膨らませてケーキをさらに搾る圧搾工程がある。
この工程の時間をどこで止めるかが、ケーキの最終的な含水率を決める。
一般的に、圧搾開始直後は急速に水分が抜ける段階(初期脱水域)が続く。
この段階では単位時間あたりの含水率低下が大きく、圧搾時間を延ばすほど効果が高い。
しかし、ある時点からケーキ内の水分移動が鈍くなり、同じ時間を追加してもほとんど含水率が下がらない「収束域」に入る。
圧搾時間が長すぎる場合はこの収束域を超えてサイクルを続けているケースが多く、時間とエネルギーのコストだけが上がる。
一方、圧搾時間が短すぎると含水率が目標値に届かず、ベタつきや重量増加が生まれる。
最適な圧搾時間を見つけるには、時間を段階的に変えながら含水率を計測し、「初期脱水域の末端」を特定することが基本だ。
この計測はラボテストで行うのが最も確実だが、既存設備では稼働中のデータを記録しながら条件を絞り込むことも可能だ。
ブロー圧力がケーキの割れとベタつきに与える影響
ブロー(圧入空気による追い出し)は、圧搾後にろ板内に残ったろ液を空気で押し出す工程だ。
圧搾でケーキから絞り出した液体が、ろ板や配管内に残留していると次のサイクルへの持ち込みになるため、ブローによって確実に排出する。
ブロー圧力が高すぎる場合、ケーキ内部に空気が過剰に入り込み、固形成分の結合が崩れてケーキが割れやすくなることがある。
特に、固形成分の粒子が粗く圧縮強度が低いスラリーでは、高いブロー圧力でケーキが崩壊し、排出時に粉塵が発生するケースもある。
逆にブロー圧力が低すぎると、ろ板内の残液が十分に排出されず、次サイクルの圧入時にスラリーが薄まったり、ろ液の品質が下がったりする原因になる。
また、ろ板表面に水膜が残った状態でケーキが接触すると、ケーキのろ布への貼り付きが強まることがある。
ブロー圧力の調整は、スラリーの透気性(空気の通しやすさ)と圧搾後のケーキ密度に合わせて設定する必要があり、圧搾時間との組み合わせで最適なポイントが決まる。
現場でできる圧搾時間とブロー圧力の調整手順
圧搾時間とブロー圧力の調整は、以下のステップで段階的に行うことが基本だ。
まず、現在のケーキ性状を記録する。
含水率の実測値・ケーキの割れ具合・ろ布への貼り付き状況・剥離後の落下の状態を記録しておくことで、調整前後の変化を比較できるようになる。
次に圧搾時間を変数として調整する。
現在の設定から10〜15%ずつ時間を変え、各条件でケーキを取り出して含水率を計測する。
含水率の変化が鈍くなる時点が収束域の入り口であり、その手前が最適な圧搾時間の目安になる。
圧搾時間が最適化できたら、次にブロー圧力を確認する。
ブロー後のろ板内に残液がないか確認し、ケーキがろ布から自然に剥離するかどうかを観察する。
剥離不良が続く場合はブロー圧力を段階的に上げ、割れが悪化する場合は下げる。
この調整作業は、スラリーの性状が季節変動・原料ロット変化・製造ライン変更などで変化するたびに見直しが必要だ。
定期的な含水率の記録と設定値の管理を習慣化することが、安定稼働の基本になる。
まとめ
ケーキが割れるかベタつくかの違いは、圧搾時間とブロー圧力の設定が現在のスラリー性状に合っているかどうかで決まる。
圧搾時間は含水率の収束域を把握して設定し、ブロー圧力はケーキの密度と透気性に合わせて調整することが基本的な考え方だ。
どちらの設定も、スラリーの性状変化に合わせて定期的に見直すことで、安定したケーキ品質と設備効率を維持できる。
調整の余地があるにもかかわらず「ケーキ性状の悪化はスラリーのせいだ」として放置すると、ろ布の早期摩耗や排出作業の工数増加という形でコストがかかり続ける。
圧搾条件の最適化に迷う場合や、スラリーの性状変化への対応策を検討したい場合は、マキノへご相談いただきたい。
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FAQ|よくある質問
Q:圧搾時間を短くすると設備の消費エネルギーは減りますか?
圧搾工程の時間を短縮することで、油圧・水圧システムの稼働時間が減り、エネルギー消費を削減できる可能性があります。
ただし、含水率が目標値を超えた状態でケーキを排出すると産廃の重量が増加するため、輸送コストや処理費用とのバランスで判断する必要があります。
含水率が収束域に達した時点で圧搾を終了する設定が、エネルギーと脱水品質の両面で最も効率的です。
Q:ケーキがろ布に張り付いて落ちない場合、ブロー以外に有効な対策はありますか?
ろ布の素材や織り方を変更することで剥離性が改善するケースがあります。
また、ろ布の表面にシリコン系の剥離剤を使用する方法や、ケーキ排出時に振動を加えるシェーカー機構の追加も有効な対策です。
スラリー成分に粘着性の物質が含まれている場合は、凝集剤の種類や添加量の見直しも合わせて検討することをお勧めします。
Q:圧搾式と単純加圧式はケーキ性状の管理しやすさにどのような違いがありますか?
圧搾式は加圧ろ過の後に膜圧搾を加えることで含水率をさらに下げられるため、単純加圧式と比べてケーキの含水率を低く安定させやすいです。
圧搾時間とブロー圧力を制御できる分、設定変数が増えますが、その分調整の余地も大きくなります。
単純加圧式は設定がシンプルで初期投資が抑えられますが、スラリーの性状変化への対応力は圧搾式に比べて限られます。






