
新素材の合成に成功したその日、研究者が次に直面するのは「これは本当にろ過できるのか」という問いです。手元にあるのは数リットルのスラリーだけ。大型装置を借りるわけにも、外注試験を繰り返すわけにも、時間は許してくれません。こうした場面で、卓上ろ過機M8/M14は研究者の手元で静かに答えを出してきました。
ラボの段階で見極めるべき「ろ過できるか」という問い
固液分離は、製品化プロセスの初期段階で見落とされがちな工程です。原料の合成や反応条件の最適化には多くの時間が投じられる一方で、「その後どうやってスラリーから固形分を取り出すか」は後回しにされることが少なくありません。
結果として、パイロット段階や量産移行直前になって「このスラリー、うまくろ過できないかもしれない」と気づくケースが出てきます。粘度が想定より高かった、ケーク(ろ過で堆積した固形物層)が柔らかすぎて剥離しない、ろ液が濁ってしまうといった問題は、量産設備を動かしてから発覚すると修正コストが一気に膨らみます。
ラボの段階でろ過性能を把握しておくことが、スケールアップ設計の精度を高め、後工程での手戻りを防ぐことにつながります。そのためのツールとして、小型のろ過機が研究現場で求められています。
大型機では対応できない「少量・多品種」のニーズ
研究所やR&D部門でろ過試験を行う際に障壁になるのが、既存の大型フィルタープレスの扱いにくさです。
工場の生産ラインに設置された大型機は、一度の試験に数十リットル以上のスラリーを必要とします。研究段階では10リットル、20リットル程度しか用意できないことが多く、そもそも試験量が合いません。また、大型機は操作にも人手がかかり、品種を替えるたびに洗浄・段取り替えの手間が発生します。複数の素材を同時に試験したい研究現場には、効率の面でも合いません。
設置スペースの問題もあります。研究室には生産設備と同等の床面積は取れません。大型機を研究棟に持ち込むことは現実的ではなく、ラボ専用の小型機が必要になります。
こうした「少量・多品種・省スペース」という研究現場特有の条件を満たすために開発されたのが、マキノの卓上ろ過機M8/M14です。
M8/M14の特徴と研究用途での使い方
M8/M14はいずれも手動操作の卓上型ろ過機で、研究室のベンチやラボ台の上に置いて使えるサイズです。大がかりな設置工事は不要で、電源と水道があれば運用を始められます。
最大の特徴は、少量のスラリーでも安定したろ過試験ができる点です。マキノでは概ね10リットルからポリタンク1本(20リットル程度)あれば試験を実施できます。研究段階で合成できる量のサンプルがそのまま試験に使えるため、わざわざ量産相当の試料を準備する必要がありません。
M8とM14はフィルタープレートのサイズが異なり、ろ過面積と処理量に違いがあります。試験したいスラリーの量や固形分濃度、求めるケーク厚みに応じて選択します。
また、手動操作という点も研究用途では利点になります。加圧のタイミング・速度・保持時間を研究者自身がコントロールできるため、「圧力をゆっくり上げるとケークの性状はどう変わるか」といった変数を試験しながら探ることができます。全自動機では固定されてしまう条件を、手動ならではの自由度で変えられます。
多品種の試験を繰り返す場合も、部品点数が少なくコンパクトなため洗浄が短時間で済みます。午前と午後で異なる素材を試験するといった使い方も現場では珍しくありません。
ラボデータをスケールアップ設計につなぐ
M8/M14で得たろ過試験のデータは、量産機の選定・設計に直接活用できます。ここがラボ試験の本来の目的です。
試験で測定できる主な項目は、ろ過速度、ケーク含水率(分離後の固形分に残る水分の割合)、ろ液の清澄度です。これらの数値をもとに、量産規模でのフィルタープレス能力を試算します。どのくらいの処理量が必要か、圧搾が必要かどうか、ろ布(液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター)の材質は何が適切かといった選定要素が、ラボデータから具体的に見えてきます。
ただし、ここで一点正直にお伝えしておきたいことがあります。ラボ試験のデータがそのままスケールアップに適用できるわけではありません。スラリーの温度管理、送液方法、配管圧力損失など、実機になって初めて現れる変数があります。ラボ試験はあくまで「傾向と基準値を把握する」ためのものであり、量産設計では追加の検証が必要になることを前提に計画を立てることが大切です。
マキノでは、ラボ試験の結果を持ち込んでいただいたうえで量産機の選定を相談できます。ラボデータをどう読み解き、どう設計に落とし込むか、経験のある技術担当者が一緒に考えます。
研究現場が変わりつつある今、ラボろ過の位置づけも変わる
近年、研究開発の現場では「少量・高速・反復」という開発スタイルが広がっています。大量のサンプルを時間をかけて評価するよりも、少量のサンプルを素早く評価して次の仮説に進む。このサイクルを速くすることが、新素材・新プロセス開発の競争力に直結しています。
こうした流れのなかで、ろ過工程だけが「量産機を借りなければ試験できない」という旧来のやり方のままでは、開発速度のボトルネックになりかねません。
一方、卓上ろ過機がラボに常設されている環境では、合成の翌日にはろ過性能を確認できます。研究者が自分で操作して結果を見て、すぐ次の条件を試せる。そうした開発の流れが、固液分離を含むプロセス全体のスピードを引き上げていきます。
研究現場においてラボろ過機は、分析機器や反応装置と同じように「研究室に当然あるもの」として位置づけが変わりつつあります。開発初期からろ過性能を把握するという習慣が、後工程でのトラブルを未然に防ぐことにもつながります。
マキノのフィルタープレス技術は、6,000例を超える納入実績のなかで培われてきました。その知見をラボスケールの試験から量産機の設計まで一貫して提供できる点が、マキノへのご相談の出発点になっています。研究段階からご相談いただくことで、量産移行時のリスクをできる限り小さくする設計提案が可能です。
まとめ
研究所・R&D部門での固液分離試験は、量産設計の精度を左右する重要な工程です。大型機では対応が難しい「少量・多品種・省スペース」という研究現場の条件に応えるのが、マキノの卓上ろ過機M8/M14です。10〜20リットル程度のサンプルから試験でき、手動操作による条件の自由な調整と、品種替え時の素早い洗浄が特徴です。得られたデータは量産機の選定に活用でき、開発初期からろ過性能を把握することが後工程でのトラブル防止につながります。試験条件やスケールアップの相談など、まずはお気軽にお問い合わせください。
ご質問・ご相談など
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FAQ|よくある質問
Q:M8/M14の試験に必要なサンプル量はどれくらいですか?
概ね10リットルから試験可能で、ポリタンク1本分(20リットル程度)あれば十分なデータが得られます。研究段階で合成できる量のサンプルをそのまま使えるため、わざわざ大量に用意する必要はありません。試験に必要な量はスラリーの性状によっても異なりますので、事前にご相談ください。
Q:ラボ試験のデータは量産機の選定にそのまま使えますか?
ラボ試験で得たろ過速度・ケーク含水率・ろ液清澄度のデータは量産機選定の基礎資料になりますが、実機ではスラリー温度の変化や配管圧力損失など追加で考慮すべき変数が出てきます。ラボデータを「傾向と基準値の把握」に活用したうえで、量産設計時に追加検証を行うことを前提に計画されることをおすすめします。マキノではラボデータをもとにした量産機の選定相談も承ります。
Q:M8とM14はどちらを選べばよいですか?
M8とM14はフィルタープレートのサイズが異なり、ろ過面積と処理量に差があります。試験するスラリーの量が少なく固形分濃度が低い場合はM8、より多くのサンプルを処理したい場合やケーク量を多く確保したい場合はM14が向いています。スラリーの性状(粒径・粘度・固形分濃度)によって最適な選択は変わりますので、不明な点はお気軽にご相談ください。






