
含水率が5%悪化すると、年間の産廃処理費は数百万円単位で増える可能性があります。
「まだ動いているから大丈夫」と先送りにしている間にも、脱水性能は少しずつ落ち、処理コストは静かに積み上がっています。
この記事では、経年劣化が含水率に与える影響と、1年先送りしたときの費用増加を試算フレームとして整理します。
含水率1%の違いが、年間コストに直結する
フィルタープレスは、スラリー(液体に微細な固体が混じったドロドロの液体)を加圧して固液分離し、ケーキ状の固形分を取り出す設備です。このとき固形分に残る水分の割合が含水率(分離後の固形分に残る水分の割合)で、この数値が脱水性能のバロメーターになります。
含水率が高いということは、固形分に余分な水が残っているということです。産廃処理は重量課金が基本のため、水分が多い固形分はそれだけ処理費が上がります。産廃処理費の単価が約2万円/tだとすると、含水率が5%悪化して排出重量が年間100t増えれば、それだけで年間200万円の追加コストになります。
月単位では16〜17万円の差ですが、「動いているから」と先送りにしている間、この差は毎月積み上がり続けます。
なぜ経年劣化は含水率を悪化させるのか
フィルタープレスの脱水性能が落ちる原因は、大きく3つあります。
ろ布の目詰まりと劣化
液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルターがろ布です。使用を重ねるうちに固形粒子が繊維の内部に入り込み、通液抵抗が高まります。目詰まりが進むと圧力をかけても水が十分に抜けなくなり、ケーキ層(ろ布表面に積み重なる固体の層)の含水率が上昇します。洗浄で改善できるうちはよいのですが、繊維自体が破損・変形すると洗浄効果は限定的になります。
フィルタープレートとフレームの変形
高圧での繰り返し運転により、プレートやフレームが少しずつ変形します。密閉性が落ちると加圧時に圧力が逃げ、ケーキへの押しつけ力が弱まります。同じ運転条件でも、圧力が十分に伝わらなければ脱水は不十分になります。
駆動部とシール部の摩耗
油圧シリンダーやポンプの摩耗が進むと、設定圧力まで上がらなかったり、加圧保持時間が不安定になったりします。脱水時間が延びるか、あるいは途中で処理を切り上げざるを得なくなるため、含水率が悪化します。
これらは一度に起きるわけではなく、じわじわと進行します。毎日の運転では気づきにくいのが厄介で、「少し前より悪くなった気がする」と感じたときには、すでに数ポイント含水率が落ちているケースが少なくありません。
「1年先送り」の試算フレーム
具体的にどれくらいコストが増えるか、試算の考え方を示します。
前提条件の設定
試算には以下の数値を使います。実際の現場では、これらをご自身の数値に置き換えてください。
年間スラリー処理量:1,000t、現在の含水率:60%(脱水後の固形分重量:600t)、産廃処理費単価:2万円/t、現在の年間産廃費:600t × 2万円 = 1,200万円
含水率が3%悪化した場合
経年劣化により含水率が60%から63%に上昇したとします。同じ1,000tのスラリーを処理しても、脱水後の固形分は約630tになります(厳密には固形分絶乾量との比率で計算しますが、ここでは概算として扱います)。差分は30t。産廃処理費に換算すると、30t × 2万円 = 年間60万円の増加です。
含水率が5%悪化した場合
65%まで悪化すると差分は50t、年間100万円の追加コストになります。これが「1年先送り」の代償です。設備更新の見積もりが300〜500万円だとしても、毎年100万円ずつ余分に払い続けるなら、3〜5年で元が取れる計算になります。
さらに言えば、含水率の悪化は産廃費だけに影響するわけではありません。処理時間の延長による電力コストの増加、ろ布の早期交換費用、突発的なトラブルによる操業停止リスクも同時に高まります。
新設備との差はどこで生まれるか
フィルタープレスが適切にメンテナンスされた状態で発揮する含水率は50〜70%の範囲に収まります。この数値は設備の種類やろ布の選定、処理するスラリーの性状によって変わりますが、新設・更新直後と経年劣化後とでは、同じ条件で運転しても5〜10ポイント程度の差が生じることがあります。
更新後に含水率が5%改善されれば、年間数百万円の削減効果が見込めます。投資回収期間の目安は1〜3年です。これは「いつかは更新しなければならない」という話ではなく、「今すぐ動いた方が、トータルコストが低い」という話です。
適切なメンテナンスを続けることで、フィルタープレスの耐用年数は20〜30年に達することもあります。ただし「動いている」ことと「最適な性能を発揮している」ことは別問題です。経年とともに脱水性能は落ち、その分だけ毎月のランニングコストが上がっていきます。
「まだ動く」が最もコストの高い判断になる理由
設備更新を迷う理由の多くは、初期投資額の大きさです。数百万円から場合によっては1,000万円を超える見積もりを前に、「今期はやめておこう」と先送りにする気持ちは理解できます。
しかし、先送りにすることのコストは「見えにくい」だけで確実に発生しています。産廃費の増加は毎月の請求書に紛れ込み、前年比で数十万円増えていても「相場が上がったせいかな」と見過ごされがちです。含水率の悪化が原因だと気づいたときには、すでに数年分の余分なコストを払っていたということも起こります。
設備更新の投資判断を下すなら、初期費用だけを見るのではなく、「更新しないと毎年いくら余分に払うか」を試算することが先決です。年間100万円の追加コストが確認できれば、300万円の更新費用は3年で回収できる投資として見えてきます。
1年先送りするたびに失う金額が明確になれば、「まだ動く」は最もコストの高い選択だったと分かるはずです。
まとめ
フィルタープレスの経年劣化は含水率の悪化を招き、産廃処理費の増加に直結します。含水率が5%悪化して排出重量が年間100t増えれば、産廃費だけで年間200万円の追加コストになります。更新後に含水率が5%改善されれば、この200万円が削減効果に変わり、投資回収期間の目安は1〜3年です。設備更新の判断は「初期費用 vs. ゼロ」ではなく、「初期費用 vs. 先送りによる累積コスト」で考えると、判断の見え方が変わります。
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FAQ|よくある質問
Q:含水率が何%悪化したら設備更新を検討すべきですか?
目安となる閾値は処理対象のスラリー性状によって異なりますが、導入当初と比べて含水率が5%以上悪化している場合は、設備更新の検討を始める時期と考えられます。含水率5%の悪化は、年間処理量1,000tのケースで産廃処理費が年間100万円以上増加する計算になります。含水率の現状を測定したことがない場合は、まず現在値の把握から始めることをお勧めします。
Q:ろ布の交換だけで含水率は改善しますか?
ろ布の劣化が主な原因であれば、交換によって含水率が2〜4%程度改善するケースがあります。ただし、プレートやフレームの変形、駆動部の摩耗が進んでいる場合は、ろ布を新品にしても改善幅は限定的です。ろ布交換で改善しない、あるいは改善してもすぐ戻るという場合は、設備本体の劣化を疑う必要があります。ろ布1枚あたりの単価は数万円ですが、交換頻度が増えているなら、それ自体が設備劣化のサインかもしれません。
Q:設備更新の投資回収期間はどのくらいですか?
マキノのフィルタープレスでは、投資回収期間の目安は1〜3年です。含水率が5%改善され、年間産廃処理費が100〜200万円削減された場合、更新費用が300〜500万円であれば2〜4年で回収できる計算になります。電力コストの削減やろ布交換頻度の低下、突発停止リスクの低減も含めると、実質的な回収はさらに早まることがあります。現在の処理量と産廃費単価を基に、具体的な試算をご希望の方はお問い合わせください。






