「導入前のテストでは28%まで下がったのに、実機では35%を超えてしまう」。設備が動いているにもかかわらず、目標の含水率(分離後の固形分に残る水分の割合)に届かない状況は、現場の担当者にとって最も説明に困る問題のひとつです。
機械の故障でもなく、運転もできている。なのに数字が出ない。その根本的な理由は、フィルタープレスが正しく動いていても、条件のどこかが導入時の想定からずれているケースがほとんどです。
この記事では、導入後に含水率の期待値に届かない現場で繰り返し見られる5つの原因を、具体的な診断の視点とともに整理します。

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なぜ「機械は動いているのに数字が出ない」のか

フィルタープレスは、スラリー(液体に微細な固体が混じったドロドロの液体)に圧力をかけてろ布(液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター)で固液を分離する装置です。仕組みはシンプルですが、目標の含水率を安定して出すには、スラリーの性状・圧力・ろ布・サイクル時間・前処理という5つの条件が同時に合っていなければなりません。

導入時のテクニカルセンターでのテストは10〜20Lのサンプルで行われます。ところが実機では処理量が数十倍から数百倍になり、原料のロットも変わります。1つの条件がずれると、ほかの条件が最適でも最終的な含水率は大きく変わります。「機械が動いているから大丈夫」という判断が、数字の改善を遅らせる原因になりがちです。

原因1 スラリーの性状が導入前テストから変わっている

5つの原因のなかで最も見落とされやすいのが、スラリー自体の変化です。

導入前テストで使ったサンプルと、実稼働後に処理しているスラリーが同じ性状とは限りません。原料ロットの切り替え、仕入れ先の変更、前処理工程の温度や滞留時間のわずかなずれ、季節による原水水質の変動。こうした変化が粒度分布や固形分濃度を変え、ろ過特性を根本から変えてしまいます。

たとえば固形分濃度が導入時の想定より5〜10%低いだけで、ろ布表面に形成されるケーキ層(ろ布表面に積み重なる固体の層)が薄くなり、液体の抵抗が下がって含水率が上がるケースがあります。逆に粒子が細かくなると、ろ布の目詰まりが早まり圧力をかけても液が抜けなくなります。

まず現在のスラリーのサンプルを採取して、導入時のデータと比較してください。固形分濃度・粘度・粒度の3点を測定するだけで、原因の絞り込みが大幅に進みます。

原因2 圧力設定がスラリーの性状に合っていない

フィルタープレスで含水率を下げるには、十分な圧力が必要です。ただし「高ければ高いほどよい」わけではなく、スラリーの圧縮性に合った圧力設定が求められます。

スラリーには圧縮性が高いものと低いものがあります。圧縮性が高いスラリーに対して低い圧力だけをかけると、ケーキ層が密に締まらず、水分が十分に抜けません。一方、圧縮性の低いスラリーは圧力を上げてもケーキが変形しないため、圧力よりもろ過時間のほうが含水率に効きます。

マキノのフィルタープレスは1.5MPa(大気圧の約15倍に相当する圧力)までの高圧圧搾に対応しています。しかし実際の現場では「導入時に設定した圧力をそのまま使い続けている」というケースが多く、スラリーの性状が変わっても圧力が見直されないまま運転が続いています。圧力設定の最適化だけで含水率が3〜5%改善した事例も珍しくありません。

原因3 ろ布の選定が現在の性状に合っていない

ろ布は消耗品であり、劣化するだけでなく、そもそも選定が性状に合っていないケースがあります。

ろ布の目開きが粗すぎると、細かい粒子がすり抜けてしまい、ケーキ層が形成される前に液体が流れ切ってしまいます。逆に細かすぎると、初期の目詰まりが早く、圧力をかけても液が抜けない状態になります。材質についても、処理するスラリーの温度・酸アルカリ性・粒子の形状に合っていなければ、本来の性能が発揮されません。

導入時に選定したろ布が、その後の性状変化に対応できていないまま使われているケースは少なくありません。ろ布の状態確認は含水率トラブルの診断で必ず行うべき工程のひとつです。目詰まり・破れ・変形がなくても、性状との相性を再検討する価値があります。

原因4 サイクル時間が短すぎる

処理量を優先するあまり、1サイクルのろ過時間を短く設定しすぎているケースがあります。

ろ過は時間をかけるほど、ケーキ層から水分が抜けていきます。圧力をかけ始めてから液が抜ける速度は、最初は速く、時間とともに緩やかになります。この「最後の数%の水分を絞り出す時間」を省いてしまうと、含水率は目標値に届きません。

生産計画の都合でサイクル時間を短縮したとき、含水率が2〜4%悪化したという現場の声はよく聞かれます。時間あたりの処理量を上げても、含水率が上がれば脱水ケーキの重量は増え、産廃コストが跳ね上がります。含水率5%の悪化で年間数百トンの廃棄物増加につながることもあり、産廃費を年間で換算すると数百万円規模の損失になるケースもあります。サイクル時間の短縮は「処理量の改善」と「含水率の悪化」をトレードオフで考える必要があります。

原因5 凝集剤の添加量とフロック形成が不十分

フィルタープレスの前処理として凝集剤を使っている場合、その添加量とフロック(凝集した粒子の塊)の形成状態が含水率に直接影響します。

凝集剤が少なすぎると、微細粒子がろ布をすり抜けたり、ケーキ層が密に形成されず水分が抜けにくい状態になります。一方、多すぎてもフロックが崩れやすくなり、かえってろ過抵抗が増します。スラリーの性状が変わったにもかかわらず、凝集剤の添加量を導入時の設定のまま変えていないケースでは、最適なフロック形成ができていないことがほとんどです。

添加量だけでなく、撹拌条件や添加タイミング、凝集剤の種類そのものを見直す必要がある場合もあります。含水率が急に悪化したときは前処理の変化を疑うのが、診断の第一歩です。

まとめ

フィルタープレス導入後に含水率の期待値に届かない原因は、機械の故障ではなく運転条件と性状のずれにあることがほとんどです。スラリーの性状変化・圧力設定の未調整・ろ布の不適合・サイクル時間の短縮・凝集剤の前処理問題、この5点を順に確認することで、多くの現場で原因を特定できます。

含水率5%の改善は、年間数百トンの廃棄物削減につながり、産廃費の削減だけで投資回収1〜3年が見込めるケースもあります。「機械が動いているから問題ない」ではなく、数字で現状を確認するところから改善は始まります。創業1932年、納入実績6,000例以上のマキノは、導入後の含水率改善についても現場の状況に合わせた一品一様の対応を行っています。まずはお気軽にご相談ください。

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FAQ|よくある質問

Q:導入後に含水率が悪化した場合、最初に確認すべきことは何ですか?


まず現在のスラリーのサンプルを採取し、固形分濃度・粘度・粒度を導入時のデータと比較してください。性状が変わっていれば、圧力・ろ布・凝集剤の設定もあわせて見直す必要があります。スラリー分析から着手することで、原因の絞り込みにかかる時間を大幅に短縮できます。

Q:含水率を改善するには、圧力を上げれば必ず効果がありますか?


スラリーの圧縮性によって異なります。圧縮性が高いスラリーは圧力を上げると含水率が下がりやすく、圧縮性が低いスラリーは圧力よりもろ過時間のほうが効果的です。マキノのフィルタープレスは最大1.5MPa(大気圧の約15倍)まで対応していますが、適切な圧力はスラリーの特性を確認したうえで設定する必要があります。

Q:含水率が5%改善すると、コスト面でどのくらいの変化がありますか?


含水率5%の改善で年間数百トン規模の廃棄物削減につながるケースがあります。産廃費の目安は約2万円/tですので、削減量によっては年間数百万円規模のコスト削減が見込めます。投資回収期間は1〜3年の事例が多く、設備を追加しなくても産廃費の削減に直結する施策です。

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