「うちの工場はPFASとは関係ない」——そう思っていた担当者が、排水検査の結果を見て青ざめるケースが増えています。
PFAS(有機フッ素化合物)は、撥水加工・半導体製造・泡消火設備など、幅広い産業プロセスで長年使われてきた化学物質で、知らないうちに排水や汚泥に蓄積していることがあります。
この記事では、2026年4月に施行されるPFAS水質基準の義務化が製造現場に何を求めるのか、そして汚泥管理と脱水技術がそのリスク対応にどう役立つのかを解説します。

PFASとは何か、なぜ今問題なのか

PFAS(有機フッ素化合物)とは、炭素とフッ素の結合を骨格に持つ人工化学物質の総称で、1万種類以上の物質が含まれます。
撥水性・耐熱性・耐薬品性に優れるため、1940年代から防水スプレー・泡消火薬剤・半導体製造プロセス・フッ素樹脂加工など、幅広い産業で使われてきました。

問題は、PFASが「永遠の化学物質」と呼ばれるほど自然界で分解されにくく、環境中や生体内に長期間蓄積し続ける点です。
特にPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)は、血中コレステロールの上昇・免疫機能への影響・肝機能への影響・発がん性との関連が疫学的に指摘されており、国際的に製造・使用が厳しく規制されています。

2026年4月施行・水道法改正で何が変わるのか

日本では2020年から、水道水中のPFOS・PFOAについて合算値50ng/L以下という暫定目標値が設定されていましたが、検査は努力義務にとどまっていました。
これが2025年6月30日に省令が公布され、2026年4月1日から法的拘束力を持つ「水質基準」に格上げされます。

この改正により、水道事業者・専用水道・簡易水道の設置者には、PFOS・PFOAについて原則3か月に1回の定期検査と、基準値(PFOS・PFOAの合算値で50ng/L以下)超過時の改善措置が義務付けられます。
さらに、PFNA・PFDA・PFDoDAなど7種のPFASが新たに「要検討項目」に加わり、今後の規制強化の対象として注視が必要です。

水道事業者だけの話と思われがちですが、製造業にとっても無関係ではありません。
工場排水が公共用水域や地下水に影響を与える可能性がある場合、水質汚濁防止法上の「指定物質」として位置づけられているPFOS・PFOAへの対応が求められます。
自社の製造プロセスや使用薬品にPFASが含まれていないかを今すぐ確認することが、リスク管理の第一歩です。

製造現場でPFASが汚泥に蓄積する仕組み

PFASが汚泥に問題をもたらすのは、その物理化学的な特性にあります。
PFASは水に溶けやすい一方で、固体粒子や有機物への吸着性も高く、排水処理の過程で汚泥(スラリー)の固形分側に濃縮される性質があります。

特に注意が必要な業種・プロセスは以下のとおりです。
半導体・電子部品製造でのフッ素系薬品使用、表面処理・めっき工程でのフッ素系界面活性剤の使用、泡消火設備を持つ施設での訓練・事故時の排水、フッ素樹脂加工・コーティング工程、これらのプロセスを持つ工場では、排水処理後の汚泥にPFASが濃縮している可能性があります。

汚泥に含まれるPFASの濃度は、排水よりも高くなるケースがあります。
この汚泥を脱水せずに高含水率のまま産業廃棄物として処分すると、重量が増えるだけでなく、埋立処分での浸出リスクも高まります。
汚泥の適切な管理と脱水処理が、PFAS規制対応の実務上の鍵になります。

フィルタープレスによる脱水がPFAS対応に果たす役割

フィルタープレスは、液体(スラリー)に高圧をかけてろ布(液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター)で固液分離する加圧ろ過装置です。
PFAS対応の観点から、フィルタープレスの脱水技術が果たす役割は大きく三つあります。

① 汚泥の重量を減らし、管理・処分コストを下げる

PFASを含む汚泥を産業廃棄物として処分する場合、重量が処理費用に直結します。
分離後の固形分に残る水分の割合(含水率)が5%下がれば、年間の汚泥重量が数百トン単位で減り、処理単価を仮に2万円/tとすれば年間数百万円規模のコスト削減につながります。
管理すべき廃棄物の量そのものを減らすことが、PFAS対応の負担軽減に直結します。

② ろ液の清澄度を高め、排水基準への適合を支援する

フィルタープレスで固液分離することで、排出されるろ液(ろ過後の液体)のPFAS濃度を下げる効果が期待できます。
固形分にPFASが吸着・濃縮されるため、ろ過によって固体側に集約し、ろ液をより清澄な状態で放流することが可能になります。
ただし、フィルタープレス単体でPFAS濃度を規制値以下に保証するものではなく、活性炭吸着・逆浸透膜などの高度処理技術と組み合わせることで、総合的な排水管理を実現します。

③ 難ろ過性のPFAS含有スラリーへの対応力

PFAS含有廃液・汚泥は、フッ素系界面活性剤が含まれることで泡立ちやすく、ろ過が難しいケースがあります。
マキノでは、大気圧の約15倍に相当する高圧(1.5MPa)での圧搾が可能なMDFシリーズをはじめ、難ろ過性スラリーへの対応実績を持つ製品ラインナップを揃えています。
愛知県常滑市の本社ラボで実際のスラリーサンプルを使ったろ過テストを実施し、お客様のスラリーが「ろ過できるかどうか」「どの圧力設定が最適か」を実測値でお示しすることが可能です。

今、現場がとるべき対応ステップ

PFAS規制への対応は、以下の順序で進めることをお勧めします。

まず、自社の製造プロセスや使用薬品にPFASが含まれているかをSDS(安全データシート)で確認します。
次に、排水・汚泥のPFAS濃度を分析機関に依頼して測定します。
濃度が確認できたら、現在の排水処理・汚泥管理フローでどこにリスクがあるかを洗い出します。
そのうえで、フィルタープレスによる脱水強化・高度処理技術の追加・汚泥の処分方法の見直しを検討します。
2026年4月の基準値施行を待たず、今から体制を整えることが、規制対応とコスト管理の両面で合理的な選択です。

PFAS対応を後回しにしないために

「自社には関係ない」という思い込みが、最も大きなリスクになります。
2026年4月の水質基準施行を前に、排水・汚泥のPFAS含有状況を把握し、脱水処理の強化を検討することが、コンプライアンス対応とコスト削減の両方を同時に実現する近道です。

まずはサンプルをお送りください。
御社の汚泥が実際にどこまで脱水できるか、含水率の改善幅と処理コスト削減額をデータでお示しします。

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FAQ|よくある質問

Q:自社の排水・汚泥にPFASが含まれているかどうか、どうやって確認すればいいですか?


まず、使用している薬品・原料のSDS(安全データシート)でPFASの含有を確認します。
次に、排水および汚泥のサンプルを採取し、PFAS分析に対応した分析機関に依頼することをお勧めします。
特に半導体・表面処理・めっき・フッ素樹脂加工・泡消火設備を持つ施設は優先的に確認すべきです。分析結果をもとに、現在の排水処理フローの見直しを進めてください。

Q:フィルタープレスだけでPFASを除去できますか?


フィルタープレス単体でPFASを完全除去することはできません。
フィルタープレスの役割は、PFASが濃縮した固形分(汚泥ケーキ)を効率よく分離・脱水することです。
ろ液中のPFAS濃度を規制値以下にするには、活性炭吸着や逆浸透膜などの高度処理技術との組み合わせが必要です。マキノではシステム全体の最適化についてもご相談を承っています。

Q:PFAS含有汚泥のろ過テストはマキノで受けられますか?


はい、対応可能です。愛知県常滑市の本社ラボにて、実際のスラリーサンプルを用いたろ過テストを実施しています。
含水率・ろ過速度・最適圧力を実測値として提示し、どの機種・設定が御社の汚泥に最適かをデータでお示しします。
まずはサンプルの概要をお問い合わせフォームよりご連絡ください。