環境報告書に「廃棄物の適正処理を推進しています」と書いても、数値がなければ読み手には伝わりません。
銀行・投資家・取引先が環境報告書で実際に確認するのは、前年比でどの指標がどれだけ改善したかという具体的な数字です。
本記事では、フィルタープレスによる脱水改善がどのようなKPIとして報告書に落とし込めるか、数値化の手順と補助金活用への応用を解説します。
環境報告書に「数値がない」と何が起きるか
環境報告書(CSRレポート・統合報告書)の開示要求は、上場企業だけでなく中堅・中小の製造業にも広がりつつあります。
取引先の大手企業がサプライチェーン全体のCO2排出量(スコープ3)開示を求めるケースが増え、一次サプライヤーだけでなく二次・三次サプライヤーにも影響が及んでいます。
こうした背景で「廃棄物削減に取り組んでいます」という定性的な表現だけの報告書は、評価対象として見なされにくくなっています。
具体的に懸念されるのは3点です。
1点目は取引先の調達審査で評価が下がること。大手メーカーがサプライヤー評価にESG指標を組み込む事例が増えており、数値がない場合は「取り組みが不透明」と判断されやすいです。
2点目は補助金・融資の審査で不利になること。脱炭素化・廃棄物削減に関する補助金は申請書の数値根拠が採択率を大きく左右します。
3点目は内部改善の優先順位が見えにくくなること。数値がなければどの工程をいくら改善すれば報告書に載せられる成果になるかが分かりません。
脱水工程の改善が環境KPIに直結する理由
製造工場の排水・廃棄物処理工程でフィルタープレスが担う役割は、スラリー(液体に固体が混じったドロドロの液体)から水分を分離し、固形分(ケーキ)の含水率(分離後の固形分に残る水分の割合)を下げることです。
この含水率が1%下がるごとに、3つの環境KPIが連動して改善します。
1つ目は産廃ケーキの排出量です。含水率が60%から55%に下がれば、同じスラリー量を処理した場合のケーキ重量が約11%減少します。年間100tの廃棄物を出している工場なら約11tの削減であり、廃棄物排出量の前年比改善として報告できます。
2つ目は廃棄物輸送に伴うCO2排出量です。ケーキ重量が減れば輸送回数・輸送距離が減り、輸送に起因するCO2排出量(スコープ3に含まれる)を削減できます。
3つ目は産廃処理費です。産廃処理費は重量課金が一般的で、約2万円/tが目安となります。ケーキ重量11t削減なら年間約22万円の直接コスト削減となります。
これら3指標はいずれも含水率という一つの数値から算出できるため、フィルタープレスの改善前後の含水率データを持っていれば報告書への記載が可能になります。
フィルタープレス導入後に報告できる数値の作り方
環境報告書に載せられる数値を作るには、「導入前の現状値」と「導入後の実績値」を比較できる形で記録することが前提になります。
以下の3ステップで整理すると報告書への転記が容易になります。
ステップ1は現状の含水率と廃棄物量の把握です。現状のスラリー処理量(t/月)、ケーキの含水率(%)、産廃処理量(t/月)・産廃処理費(円/月)を記録します。これがベースラインとなります。
ステップ2は改善後の目標含水率の設定です。フィルタープレスのラボテスト(約10〜20リットルのサンプルで行う脱水試験)を通じて、導入後に到達できる含水率の見通しを数値で確認します。「現状65%→導入後58%に改善見込み」のような試算が得られれば、廃棄物削減量・CO2削減量・コスト削減額を試算できます。
ステップ3は導入後の実績記録です。稼働開始後は毎月の含水率・産廃量・産廃費を記録し、ベースラインとの差分を集計します。この差分が環境報告書に載せるKPIの実績値になります。
マキノは1932年の創業以来6,000例以上の納入実績を持ち、ラボテストの結果を数値レポートとして提供しています。この数値を補助金申請書や環境報告書の根拠データとして活用した事例も多いです。
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補助金採択率を上げるための数値設計
中小企業省力化投資補助金・ものづくり補助金・脱炭素化関連補助金など、製造業の設備投資を支援する補助金の多くは「効果の数値根拠」を申請書に求めます。
「環境負荷を低減できる」という定性的な表現より、「含水率を65%→58%に改善し、産廃排出量を年間XX t削減、CO2換算でXX t-CO2削減、産廃費をXX万円削減する」という数値表現の方が採択委員会での評価が高くなる傾向があります。
特に「削減量を数値で示せるか」は審査項目に明示されている補助金が多いです。
ラボテストで得た含水率改善の見通しと、それに基づいて試算した廃棄物削減量・CO2削減量・コスト削減額を揃えることで、申請書の説得力が増します。
なお、中小企業投資促進税制(即時償却または税額控除7%)は補助金との併用が可能なケースがあります。脱水設備の投資計画を立てる際は補助金と税制優遇の組み合わせを事前に確認しておくとよい。
環境報告書の信頼性を高める一次情報の役割
環境報告書の記載内容が「自社測定値に基づく実績」か「推計値」かによって、ステークホルダーからの評価が変わります。
特に取引先大手や金融機関が確認する場合は、算出根拠の透明性(どのデータをどの計算式で算出したか)を問われることがあります。
フィルタープレスの脱水実績を一次情報として活用する場合のポイントは2点です。
1点目はケーキサンプルの定期分析です。産廃業者への引き渡し時に含水率を測定・記録しておくと、「計測値に基づく廃棄物量の削減」として報告できます。
2点目は産廃マニフェスト(産業廃棄物管理票)との突合です。マニフェストに記載された廃棄物重量と、処理量の記録を紐づけることで第三者が確認可能な根拠資料になります。
マキノは設備の納入後も含水率管理・ろ布のメンテナンスを含むサポートを提供しており、継続的な数値記録の体制づくりを支援しています。
まとめ
環境報告書で求められるのは定性的な取り組みの記述ではなく、廃棄物排出量・CO2排出量・産廃費の改善量を示す具体的な数値です。
フィルタープレスによる含水率の改善はこれら3指標を一括して数値化できる数少ない設備改善の一つであり、導入前後の比較データを揃えることで報告書・補助金申請書の両方に活用できます。
ラボテストで含水率の改善見通しを数値化し、廃棄物削減量・CO2削減量・コスト削減額を試算しておくことが、報告書の信頼性と補助金採択率を同時に高める最初のステップです。
現状のスラリー処理に課題を感じている場合は、まずラボテストの依頼からご相談いただけます。
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FAQ|よくある質問
Q:環境報告書に脱水改善の数値を載せるには、どのようなデータを記録しておけばよいですか?
最低限必要なのは「改善前後のケーキ含水率(%)」「月別の産廃排出量(t)」「産廃処理費(円/月)」の3点です。
これらを導入前から記録しておくと、導入後の差分を算出して廃棄物削減量・CO2削減量・コスト削減額として報告書に記載できます。
産廃マニフェストと突合することで第三者が確認できる根拠資料にもなります。
Q:ラボテストの結果を補助金申請書の根拠データとして使えますか?
はい、マキノのラボテストでは含水率の改善見通しを数値レポートとして提供しているため、補助金申請書の「設備導入による効果」欄の根拠資料として活用いただけます。
廃棄物削減量・CO2削減量・コスト削減額の試算値をセットで示すことで、採択委員会での評価が高まります。
補助金の申請スケジュールに合わせてラボテストのタイミングを調整したい場合はご相談ください。
Q:スコープ3の開示要求が取引先から来た場合、排水処理工程のCO2排出量はどう算出すればよいですか?
廃棄物輸送に伴うCO2はスコープ3のカテゴリー5(廃棄物の処理)に分類されます。
産廃ケーキの重量(t)と輸送距離(km)、輸送手段の排出係数(kg-CO2/t・km)を組み合わせて算出します。
フィルタープレスで含水率を下げてケーキ重量を削減することは、この数値の直接的な改善につながります。算出方法の詳細は環境省の排出量算定ガイドライン(カテゴリー5)をご参照ください。






