メッキ・表面処理工場の排水には六価クロム・ニッケル・亜鉛などの重金属が含まれ、法令に基づく処理が義務付けられています。
処理工程で発生する水酸化物スラリー(重金属を水酸化物として沈殿させたドロドロの液体)は含水率が高く、通常の脱水方法では固化・減容が難しいです。
本記事では六価クロムの除去プロセスとフィルタープレスの役割、難ろ過性スラリーに対応するための設計ポイントを解説します。

メッキ・表面処理排水が「難しい」理由

メッキ・表面処理工程では使用する薬品の種類が多く、排水の性状が工程ごとに大きく異なります。
六価クロムメッキ浴の廃液はクロム酸を含む強酸性、ニッケルメッキ浴はニッケルイオンを含む弱酸性、アルカリ脱脂工程は強アルカリ性と、同じ工場内で排水のpH・成分が大きく違います。
これら複数の排水を分別・処理した後に生じるスラリーは、いくつかの特性が重なって脱水を難しくします。

難しさの第一は粒子径の細かさです。水酸化物(水酸化クロム・水酸化ニッケルなど)の粒子は微細で、ろ布(液体だけを通すフィルター)の目詰まりが起きやすいです。
第二はスラリーの粘性です。水酸化物スラリーはゼラチン状になりやすく、圧力をかけても液体が抜けにくい「難ろ過性」の性状を持つことが多いです。
第三は薬品耐性の要求です。スラリーや廃液のpHが低い(酸性)環境では、フィルタープレスの接液部に耐腐食性が求められます。金属製のろ過板では腐食・コンタミネーション(処理液への金属混入)が問題になります。

六価クロム除去プロセスとフィルタープレスの位置づけ

六価クロム(Cr⁶⁺)はその毒性・発がん性から排水基準が厳しく、工場排水中の許容濃度は0.2mg/L以下(水質汚濁防止法)と定められています。
一般的な除去プロセスは以下の手順で行われます。

ステップ1は還元処理です。六価クロムを含む酸性廃水に亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤を添加し、毒性の低い三価クロム(Cr³⁺)に変換します。
ステップ2は中和・凝集沈殿です。三価クロムを含む廃水にアルカリ(石灰・水酸化ナトリウムなど)を加えてpHを調整し、水酸化クロムとして沈殿させます。凝集剤を加えることでスラリーの沈降性を高める。
ステップ3が固液分離です。沈殿した水酸化クロムを含むスラリーを脱水・固化し、産廃として処理できるケーキ状にします。

フィルタープレスはこのステップ3を担う設備です。スラリーをろ過板とろ布の間に圧力で送り込み、液体だけを分離してケーキを生成します。含水率を下げることでケーキの重量・体積を減らし、産廃処理費の削減に直結します。

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水酸化物スラリーの脱水特性と機種選定のポイント

水酸化物スラリーは難ろ過性であるため、一般的なフィルタープレスの選定基準だけでは対応できないことがあります。
機種選定で確認すべきポイントは主に3つです。

1つ目はろ過面積と処理量のバランスです。難ろ過性スラリーは1サイクル当たりの処理時間が長くなる傾向があります。処理量に対してろ過面積を大きめに確保することで、1日の処理能力を担保します。

2つ目は圧搾式の採用です。単純加圧式では含水率の改善に限界があるスラリーでも、圧搾式(ダイアフラム圧搾)でろ過板内部からケーキを押し込むことで含水率をさらに下げられる場合があります。水酸化物スラリーのように微細粒子が多いケースでは圧搾式が有効になるケースが多いです。

3つ目はラボテストによる事前確認です。水酸化物スラリーの性状は還元剤・凝集剤の種類・添加量によって大きく変わります。実際のサンプルを使ったラボテスト(約10〜20リットルのサンプルで実施)なしに目標含水率を設定することは難しく、マキノではラボテストの結果をレポートとして提供し、機種・ろ布・圧力プロファイルの最終選定に活用しています。

耐薬品性設計が生産性と安全性を守る

メッキ・表面処理排水の処理でもう一つ重要なのが、設備の耐薬品性です。
スラリーのpHが低い場合(酸性廃水の処理ライン)は接液部の腐食リスクが高く、金属製のろ過板や配管が短期間で劣化すると予期しないダウンタイムやメンテナンス費の増大につながります。

マキノのMDFWシリーズは接液部を全てポリプロピレン(PP)製で構成しており、金属コンタミネーションをゼロにする設計です。耐酸性・耐アルカリ性に優れ、pH2〜12程度の廃水処理環境でも長期間の使用に対応できます。

またMSASシリーズ・RMSシリーズはステンレス製の筐体を採用しており、薬品飛散が多い現場環境での設備耐久性を高めています。電解研磨による表面仕上げで汚れが付きにくく、洗浄の手間を減らしながら衛生性も維持できます。

材質の選定は処理するスラリーのpH・成分・温度を確認した上で行う必要があり、マキノでは導入前の詳細ヒアリングと材質適性の確認を無償で対応しています。

マキノの対応実績と選定サポート

マキノは1932年の創業以来6,000例以上の納入実績の中で、メッキ・表面処理・化学工場からの難ろ過性スラリー処理を多数手がけてきました。
水酸化クロム・水酸化ニッケル・混合重金属スラリーなど、性状の異なる廃水に対してラボテストと現場データの蓄積から最適なソリューションを提案できます。

「現在の処理設備では含水率が下がらず産廃費が高い」「設備の腐食が早く維持費がかさむ」「処理能力が不足していて処理が追いつかない」といった課題別に、機種選定・材質変更・圧力プロファイルの最適化で対応策を提示します。
まずスラリーの性状データ(pH・主成分・処理量)とともにご相談いただければ、ラボテストの要否も含めて対応プランをご提案できます。

まとめ

メッキ・表面処理工場の排水処理で生じる水酸化物スラリーは、微細粒子・高粘性・pH対応という三重の難しさを持ちます。
六価クロムの除去プロセスで発生する水酸化クロムスラリーの脱水には、圧搾式フィルタープレスと適切なろ布選定が有効で、含水率を下げることで産廃費の削減に直結します。

接液部の耐薬品性設計(PP製ろ過板・ステンレス製筐体)は設備寿命とランニングコストを大きく左右します。
スラリーの性状に合った機種選定のためにラボテストを活用し、導入前に含水率の改善見通しを数値で確認することが成功への近道です。
現在の処理設備に課題がある場合は、まずスラリーデータとともにご相談ください。

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FAQ|よくある質問

Q:六価クロムを含む廃水の処理でフィルタープレスを選ぶ際、特に確認すべき仕様は何ですか?


最優先で確認すべきは接液部の材質です。酸性廃水が残っているスラリーを処理する場合は金属製部品の腐食リスクがあるため、ろ過板・フレームがポリプロピレン(PP)製のフィルタープレスが適しています。
次にろ過面積と圧搾機能の有無です。水酸化物スラリーは難ろ過性になりやすいため、圧搾式を採用してろ過後にさらにケーキを絞る工程を加えると含水率を下げやすくなります。
ラボテストでスラリーの実測値を取ってから選定することをお勧めします。

Q:水酸化物スラリーの処理で目標含水率の目安はどれくらいですか?


水酸化クロムや水酸化ニッケルのスラリーは難ろ過性のものが多く、単純加圧式では含水率が75〜85%程度にとどまるケースがあります。
圧搾式とろ布の組み合わせを最適化することで65〜75%程度まで下げることが可能な場合があります。
ただし凝集剤の種類・添加量・沈殿槽の運転条件によってスラリー性状が大きく変わるため、実際のサンプルでのラボテストなしに数値を保証することは難しい点をご承知おきください。

Q:メッキ工場では複数の金属廃水が混在しますが、一台のフィルタープレスで対応できますか?


複数の廃水を合流・中和してから処理するケース(混合重金属スラリー)と、廃水の種類ごとに分別処理するケースがあり、それぞれ機種の選定条件が変わります。
混合スラリーは成分が複合するため、ラボテストでろ過特性を確認することが特に重要です。
マキノでは廃水フローの整理からご相談いただけますので、どの廃水を合流・分別するかのプロセス設計段階からお声がけください。

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