フィルタープレス単体に薄いスラリーをそのまま投入しても、処理効率は上がりません。
脱水効率の上限はスラリーをフィルタープレスに送る前の「濃縮工程」によって決まる。この設計思想が、シックナーとの連携で脱水コストを大きく変えます。
この記事では、シックナーの濃縮原理・フィルタープレスとの連携がもたらす脱水効率の改善メカニズム・連携設計の要点を解説します。
シックナーが担う役割と濃縮原理
シックナーは、スラリー(液体に微細な固体が混じったドロドロの液体)を重力沈降させて固形分を底部に濃縮する装置です。
上澄み液はオーバーフローとして回収・再利用し、底部に濃縮されたスラリーだけをフィルタープレスへ送ります。
この前処理工程によって、フィルタープレスに投入されるスラリーの固形分濃度が高まり、ろ過サイクルが短縮します。
濃縮効果を高めるために凝集剤(フロックを形成させて沈降速度を上げる薬剤)を添加するケースが多くあります。
適切な凝集剤を選定すると、粒径が小さく沈降しにくい固形分でも効率よく濃縮できます。
凝集剤の種類・添加量・撹拌条件は処理するスラリーの性状によって異なり、ラボテストで最適条件を確認することが推奨されます。
連携で脱水効率が改善するメカニズム
フィルタープレスの脱水効率を決める主な要素は、投入スラリーの固形分濃度・粒径・粘度の3つです。
シックナーを経た濃縮スラリーはこの3つの点で有利な条件を持ちます。
ろ過サイクルの短縮
固形分濃度が高いスラリーほど、同じチャンバー容積でより多くの固形分を処理できます。
薄いスラリーをそのまま投入した場合、チャンバーが固形分で満たされるまでに大量の液体を通液しなければならず、サイクルが長くなります。
シックナーで事前濃縮したスラリーは固形分が凝集・粗粒化していることが多く、ケーキ層(ろ過が進むにつれてろ布の表面に積み重なる固体の層)が早期に均一に形成されます。
結果としてろ過サイクルが短縮し、単位時間あたりの処理量が増加します。
含水率の改善
均一に形成されたケーキ層は圧搾工程での脱水効率を高めます。
薄いスラリーから形成されたケーキは密度が不均一になりやすく、圧搾圧力が均等に伝わりにくいです。
一方、濃縮されたスラリーから形成されたケーキは密度が均一で、1.5MPa(大気圧の約15倍に相当する圧力)の圧搾工程で効率よく水分を絞り出せます。
含水率(分離後の固形分に残る水分の割合)が5ポイント改善するだけで、年間数百トンの廃棄物重量削減につながります。
産廃処理費(約2万円/t想定)換算では年間数百万円の削減効果が生まれるケースがあります。
ろ布寿命の延長
固形分濃度が低いスラリーを長時間通液し続けると、微細粒子がろ布(液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター)の繊維に侵入して目詰まりが進みやすくなります。
シックナーで凝集・粗粒化した後のスラリーは、ろ布への微細粒子の侵入が少なく、目詰まりの進行を遅らせます。
ろ布交換コストの削減と、交換作業による稼働停止時間の低減につながります。
連携設計で押さえるべきポイント
シックナーとフィルタープレスの連携は、単純に2つの設備をつなぐだけでは期待した効果が出ないことがあります。
以下の設計要素を事前に確認しておくことが重要です。
シックナーの滞留時間と処理量のバランス
シックナーの容量が小さすぎると、スラリーが十分に濃縮される前にフィルタープレスへ送られてしまいます。
スラリーの沈降速度(性状・凝集剤の効果によって異なる)に基づいて、シックナーの容量と投入流量のバランスを設計します。
投入流量が急増するバッチ処理の工場では、ピーク時の流量に合わせたバッファ容量を確保することが必要です。
凝集剤の選定と管理
凝集剤はスラリーの性状に合わせて種類・添加量・添加点を選定します。
添加量が少なすぎると十分なフロックが形成されず、多すぎるとケーキが崩れやすくなったり、ろ液に凝集剤が残留したりする場合があります。
スラリーの原材料や工程が変わった際は凝集剤の条件を見直すことが必要です。
マキノではラボテストで最適な凝集剤条件の確認もサポートしています。
配管・ポンプの設計
シックナー底部の濃縮スラリーは粘度が高く、通常のスラリーより搬送が難しいです。
配管の径・傾斜・ポンプの選定は濃縮後のスラリー性状に合わせて設計する必要があります。
詰まりが起きやすい箇所に点検口を設けるなど、メンテナンス性を考慮した配管設計も重要です。
まとめ
シックナーによる前処理濃縮とフィルタープレスの連携は、ろ過サイクルの短縮・含水率の改善・ろ布寿命の延長という3つの効果をもたらします。
連携の効果を最大化するには、シックナーの容量設計・凝集剤の選定・配管とポンプの設計を一体として設計することが前提です。
「フィルタープレスの性能が上がらない」という課題の一部は、前処理工程の設計を変えることで解決できる場合があります。
創業1932年・納入実績6,000例以上のマキノでは、前処理からフィルタープレスまでの一貫プロセス設計に対応しています。まずご相談ください。
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FAQ|よくある質問
Q:シックナーを導入すると、産廃コストはどのくらい変わりますか?
シックナーとの連携で含水率(分離後の固形分に残る水分の割合)が5ポイント改善すると、年間数百トンの廃棄物重量削減につながります。
産廃処理費(約2万円/t想定)換算では年間数百万円の削減効果が生まれるケースがあります。
ろ過サイクルの短縮でエネルギーコストや人件費も下がるため、トータルのランニングコスト改善として試算することを推奨します。
Q:すでにフィルタープレスがある工場でシックナーを後付けできますか?
既存のフィルタープレスにシックナーを前段として追加することは可能です。
ただし、既存の配管・ポンプ・スペース・電源容量との整合を確認する必要があります。
マキノでは既存設備の状況を踏まえた上で前処理工程の追加提案にも対応しています。まずはご相談ください。
Q:シックナーを使わずに脱水効率を上げる方法はありますか?
スペースや予算の制約でシックナーを設置できない場合、フィルタープレス投入前の配管内で凝集剤を添加してフロックを形成させるインライン凝集の方法があります。
また、ポンプの送液プログラムを見直して固形分が沈降しないよう流速を管理する方法も有効なケースがあります。
いずれもスラリー性状への依存度が高いため、ラボテストで効果を確認してから本格導入することを推奨します。






