
ろ布(液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター)を交換しても漏れが止まらない、特定のチャンバーだけケーキ(ろ過が進むにつれてろ布表面に積み重なる固体の層)の含水率(分離後の固形分に残る水分の割合)が高い。そうした症状が続いているとき、問題の根本はろ布ではなくろ板そのものの変形にあることが少なくありません。
ろ板の歪みは一度の運転では気づきにくく、微小な変形が積み重なって初めて性能低下として表れます。
この記事では、歪みが生じるメカニズムと現場でのサイン、修理・交換の判断基準、そして改修後の再発防止策までを順を追って整理します。
目次
- ろ板の歪みが起きる3つのメカニズム
- 現場でろ板の変形に気づくサイン
- 修理か交換か、判断を誤ると全体に波及する
- 改修後に歪みを再発させないための管理
- まとめ
ろ板の歪みが起きる3つのメカニズム
長年稼働してきたフィルタープレスのろ板が変形する経路は、大きく三つに分けられます。
いずれも「ある日突然」ではなく、運転ごとに積み重なる小さなダメージが原因です。
一つ目は過圧による変形です。
マキノが推奨する運転上限圧力は1.5MPa(大気圧の約15倍に相当する圧力)ですが、リリーフ弁(圧力が上がりすぎたときに自動で逃がす安全弁)の設定ミスや急激な圧力上昇が繰り返されると、板が少しずつ変形します。
1回の運転では検知できないほど微小な変形であっても、年単位で積み重なれば許容範囲を超えます。
二つ目は熱変形と腐食です。
高温のスラリー(液体に微細な固体が混じったドロドロの液体)を長期間処理する設備では、熱応力によって板が反る方向に変形します。
また、腐食性のスラリーを扱う場合は板厚が部分的に薄くなり、シール面(板と板が密着して液体の漏れを防ぐ接触部分)の密着性が低下してスラリー漏れの原因になります。
三つ目はクリープ変形です。
ポリプロピレン等の高分子材料は、長期間にわたって荷重を受け続けると少しずつ変形する性質(クリープ現象)があります。
10年以上稼働している設備では、肉眼では分からない累積変形量が既に許容範囲を超えているケースがあります。
クリープ変形は元に戻らないため、修理ではなく交換の判断が必要になります。
現場でろ板の変形に気づくサイン
ろ板の歪みが進行するにつれて、現場では複数のサインが現れます。
それぞれを早期に拾い上げることが、大きな損失を防ぐことにつながります。
最も分かりやすいのはスラリーやろ液の漏れです。
ろ布を新品に交換しても漏れが止まらない場合は、ろ布ではなくシール面そのものの変形を疑ってください。
次いで多いのが、特定のチャンバーだけケーキの含水率が高くなる症状です。
板全体が均一に押さえられていなければ、圧力のかかり方にムラが生じてケーキの仕上がりに差が出ます。
目視点検では、板面の反り、シール面の段差、フレームとの接触面の摩耗痕を確認します。
さらに、板を平面台(定盤など水平が保証された台)に置いてガタつきがないかを確かめると、目視だけでは見えにくい反りも判断できます。
含水率が5ポイント上昇すると、年間では数百トンの廃棄物増加につながります。
産廃処理費を約2万円/tで換算すると、年間数百万円の余分なコストが発生する計算になります。
「まだ動いている」と判断を先送りにするほど、損失は静かに積み重なっていきます。
修理か交換か、判断を誤ると全体に波及する
ろ板の状態を確認したら、次は修理で対応できるのか、交換が必要なのかを判断します。
この判断を誤ると、手を加えた板の隣にある板にまで悪影響が及ぶことがあります。
修理で対応できるのは、シール面の軽度な傷や段差、摩耗にとどまる場合です。
シール材の補修や表面の研磨・整形によって密着性を回復できます。
板の骨格自体はまだ設計の形状を保っているため、部分的な処置で機能を取り戻せます。
一方、板面に反りや割れ、クリープ変形が生じていて元の形状に戻せない場合は交換が必要です。
腐食によって板厚が設計値の許容範囲を超えて減っている場合も同様です。
歪んだろ板が1枚でも残ると全体のシール性能に影響するため、変形が確認された場合は一括交換を推奨しています。
コスト面では、ろ板の部分交換は設備全体を新規導入する場合の費用の数分の一で実施できるケースが多いです。
「板代がもったいない」と判断を先延ばしにして漏れや含水率悪化を放置し続けるよりも、早期に交換した方が中長期のコストを抑えられます。
改修後に歪みを再発させないための管理
ろ板を修理・交換しても、運転条件や点検サイクルを見直さなければ同じ問題が繰り返されます。
改修後は、以下の管理を設備の標準運用として組み込むことが重要です。
まず確認するのはリリーフ弁の設定値です。
過圧が変形の原因だった場合、弁の設定が適切でなければ新しいろ板も同じダメージを受けます。
設定値を推奨上限である1.5MPa以下に収め、急激な圧力上昇が起きていないかを運転記録から確認してください。
次に、スラリーの性状変化への対応です。
処理対象の原料や配合が変わると、温度・pH・固形分濃度が変化してろ板への負荷が変わります。
スラリー性状が変わったタイミングで運転条件を見直す習慣をつけておくと、変形リスクを早期に抑えられます。
点検サイクルは原則として年1回を基準にしてください。
高温・高圧・腐食性スラリーを扱う設備は半年ごとの点検が望ましい状態です。
点検項目には含水率の推移、脱水サイクルの変化、スラリー漏れの有無を記録に残し、前回との差異から変化の兆候を読み取れるようにしておきます。
記録があれば、問題が表面化する前に「いつから変わり始めたか」を追いかけることができます。
創業1932年・納入実績6,000例以上のマキノは、設備の改修判断や点検サイクルの設計についても現場の状況に合わせてご相談に対応しています。
「自社の設備が今どの状態にあるか分からない」という段階からでも、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
ろ板の歪みは過圧・熱変形・クリープという三つの経路で静かに進行し、含水率の悪化やスラリー漏れとして現れます。
ろ布を交換しても症状が改善しないときは、ろ板そのものの状態を確認する必要があります。
修理で回復できる歪みか、交換が必要な変形かの見極めが、改修の範囲とコストを左右します。
改修後は運転条件の見直しと定期点検の記録を続けることで、再発を防ぎ設備の精度を長く保つことができます。
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FAQ|よくある質問
Q:ろ板が歪んでいるかどうか、現場で簡単に確認する方法はありますか。
目視でシール面の段差や板面の反りを確認するほか、板を平面台(定盤など水平が保証された台)に置いてガタつきがないかをチェックする方法が有効です。
ろ布を新品に交換してもスラリー漏れが止まらない場合や、特定のチャンバーだけ含水率が高い場合は、ろ板の変形を疑うサインとして点検を優先してください。
Q:クリープ変形したろ板は研磨や補修で回復できますか。
クリープ変形(長期荷重によって材料が少しずつ変形する現象)は、元の形状に戻らないため修理による回復は困難です。
板面に反りや全体的な変形が生じている場合は交換が必要になります。
シール面の軽度な傷や段差であれば研磨・補修で対応できますので、状態の見極めが最初のステップになります。
Q:ろ板を一部だけ交換することはできますか。
部分的な交換は技術的には可能ですが、歪んだろ板が1枚でも残ると全体のシール性能に影響が出るため、変形が確認された板については一括交換を推奨しています。
ろ板の部分交換は設備全体を新規導入する費用の数分の一で対応できるケースが多く、早期に対処した方が中長期のコストを抑えられます。






