
繊維をきちんと回収しているのに、排水処理コストが下がらない。
製紙・パルプ工場でこの矛盾を感じているとすれば、それは回収の問題ではなく、脱水工程の問題かもしれません。
この記事では、繊維回収と排水処理のコストが「どちらかを立てればどちらかが立たない」関係になる理由と、その両方を同時に解消する考え方を整理します。
「回収すればするほど損をする」という矛盾
製紙やパルプの製造工程では、大量の工程水が発生します。
この工程水にはセルロースをはじめとする繊維の微粒子が含まれており、そのまま排水すれば環境負荷になるだけでなく、原料の損失にもつながります。
だから多くの工場では、排水中の繊維をろ過・回収する設備を導入しています。
ところが現場からよく聞こえてくるのが、「回収量を増やしたら、今度は回収後のスラッジ処理に費用がかかりすぎる」という声です。
繊維を回収しても、そのスラッジの含水率が高いままでは重量がかさみ、産廃処理コストが膨らみます。
回収すれば回収するほど、処理費用が増える。これが製紙工場における典型的なコスト矛盾の構造です。
直感では「回収 = コスト削減」のはずが、実態は「回収 = 新たなコスト発生源」になってしまう。
この逆説の原因は、回収量ではなく脱水の深さにあります。
回収スラッジの含水率が1割違うと、何が変わるか
産廃処理費はスラッジの性状や地域によって異なりますが、一般的に1トンあたり約2万円前後が目安とされています。
含水率の差が重量にどう響くかは、具体的に比較するとわかりやすくなります。
含水率85%のスラッジと含水率70%のスラッジでは、同じ固形分量に対してスラッジの総重量が約1.3倍異なります。
固形分が年間100トン発生する工場であれば、この差だけでスラッジ総量が200トン以上変わる計算です。
フィルタープレスが達成できる含水率は50〜70%の範囲で、遠心分離機の70〜85%、ベルトプレスの85%以上と比べて大幅に低い水準です。
この数字の差が、産廃処理費の差として年間数百万円規模で現れてきます。
ある工場の失敗事例から見える「脱水工程の見落とし」
ベルトプレスを導入して繊維回収ラインを整備した工場が、数年後に設備の見直しを検討するケースがあります。
導入当初は「排水中の繊維をしっかり捕集できた」という実感があったものの、スラッジの含水率が常に80%台後半にとどまり、産廃処理のコストが想定より大幅に高止まりしてしまった、というものです。
問題は、ベルトプレスという方式の限界にありました。
ベルトプレスは処理スピードに優れている反面、加圧力に上限があり、繊維系の含水率を一定以下に下げることが難しい。
回収できていても、脱水が甘いためにスラッジが重く、処理費が高くなる。
この事例が示しているのは、繊維回収の効率だけを評価基準にすると、後工程のコストを見落とすリスクがあるということです。
回収量と含水率、両方を同時に見なければ、トータルコストの判断を誤ります。
なぜフィルタープレスが製紙排水に向いているのか
当社がフィルタープレスの普及に長年取り組んできた背景には、固液分離の現場で「脱水の深さ」がいかにコストに直結するかを繰り返し見てきた経験があります。
1932年の創業以来、6,000例を超える納入を通じて、繊維系・無機系・有機系とさまざまなスラッジに向き合ってきました。
その中でも製紙・パルプ系の排水は、繊維の長さや濃度が現場によって大きく異なり、汎用機では対応しきれないケースが多い。だから一品一様の設計思想が必要になります。
フィルタープレスは、ろ板で液体と固体を強制的に分離する方式です。
加圧力を高めるほど含水率が下がり、スラッジの重量が減ります。
製紙排水のように繊維の微粒子が大量に含まれる液には、この「押し込む力」で脱水する方式が特に向いています。
製紙・パルプ工場向けには、高速自動処理に対応したCAFシリーズや、全自動で連続稼働できるMDFシリーズが用途に合わせて選択できます。
特にCAFシリーズは、製紙工場のような大量処理が求められる現場でスループットを確保しながら、含水率を低く抑えることに向いています。
繊維回収スラッジを「産廃」から「有価物」に変える可能性
含水率を下げることで変わるのは、処理コストだけではありません。
脱水が十分に進んだ繊維スラッジは、固形分濃度が高く、再利用の選択肢が広がります。
製紙工程で回収した繊維を、再パルプ化して再投入する、あるいは燃料用途として活用するといったケースは、脱水の深さが前提になります。
含水率が85%のスラッジと70%のスラッジでは、同じ重量あたりの繊維含有量が大きく異なります。
含水率70%のスラッジであれば固形分は30%、85%なら15%です。単純に2倍の差があります。
再利用の際に必要な固形分濃度に到達するには、前処理にかかるエネルギーも変わってきます。
「捨てていた繊維スラッジを、原料として戻す」という流れは、サーキュラーエコノミーの観点からも製紙業界で注目されています。
ただしその前提として、脱水が十分でなければ再利用のコストが回収メリットを上回ってしまいます。
フィルタープレスによる高い脱水性能が、有価物転換を現実的な選択にする条件のひとつです。
コスト構造がビフォー・アフターでどう変わるか
脱水方式をベルトプレスからフィルタープレスに切り替えた場合、コスト構造はどう変わるか、整理してみます。
ビフォー(ベルトプレス運用時)
含水率85%前後のスラッジが大量に発生。
年間スラッジ重量が多く、産廃処理費が高止まりする。
繊維の回収量は確保できても、再利用に耐える固形分濃度に届かず、全量を産廃として処理。
排水処理コストと産廃処理コストの両方が積み上がる。
アフター(フィルタープレス運用時)
含水率を60〜70%台に抑えることで、スラッジ重量が削減される。
含水率5%の改善ごとに、年間数百トン規模の重量削減につながり、産廃処理費は年間数百万円単位で下がる計算になります。
固形分濃度が高まった繊維スラッジは再利用の検討対象になり、原料コストの一部回収も視野に入ります。
フィルタープレスの耐用年数は適切なメンテナンスで20〜30年、投資回収期間は1〜3年が多く、長期的なコスト優位性が続きます。
この「ビフォー・アフター」の差は、スラッジ発生量が多い製紙工場ほど大きくなります。
年間の処理量が多い現場ほど、含水率1%の改善が金額として大きく現れます。
10年後の製紙工場を想像してみてください
工場の排水処理棟に並ぶフィルタープレスが静かに稼働し、脱水されたスラッジケーキがラインに乗って工程に戻っていく。
産廃として毎月かかっていた処理費の明細が、数年前より明らかに薄くなっている。
繊維の回収率を上げながら、同時に処理コストも下げる。その両立が当たり前になっている現場です。
こうした未来は遠い話ではありません。
実際に当社の納入先では、脱水性能の改善によって「処理費が減り、しかも再利用の可能性が出てきた」というフィードバックをいただいています。
製紙業界が直面しているコスト圧力と環境規制の強化を考えると、脱水工程の見直しは後回しにできない選択になりつつあります。
まとめ
製紙・パルプ工場の繊維回収と排水処理コストのトレードオフは、脱水の深さを改善することで解消できます。
含水率を下げることで、産廃処理費の削減と有価物転換の両方が現実的になります。
フィルタープレスは、高いスループットと低含水率の両立が求められる製紙排水に有効な選択肢です。
まず現在のスラッジ含水率と年間処理量を確認するだけで、コスト改善の余地が見えてきます。
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FAQ|よくある質問
Q:製紙工場の排水スラッジにフィルタープレスを使うと、どの程度の含水率まで下げられますか?
フィルタープレスで達成できる含水率は50〜70%の範囲が目安です。
繊維系スラッジの性状や処理量によって変わりますが、ベルトプレスの85%以上、遠心分離機の70〜85%と比べて低く抑えられます。
含水率が70%と85%では固形分濃度が2倍異なるため、産廃重量の削減幅も大きくなります。
詳細な試算は現在の処理量と含水率をお知らせいただければご提示できます。
Q:フィルタープレス導入のコスト回収にはどれくらいかかりますか?
当社の納入実績では、投資回収期間は1〜3年が多い傾向です。
産廃処理費(目安1トンあたり約2万円)の削減額が主な回収源になります。
設備導入費用との比較は、現在の処理量と含水率をもとに個別にご試算します。
Q:製紙工場の大量排水にフィルタープレスは処理スピードが間に合いますか?
大量処理が必要な製紙排水には、高速自動処理に対応したCAFシリーズや、連続稼働が可能なMDFシリーズが向いています。
複数台の並列運用や処理能力の設計は、工場の排水量とスラッジ発生量に合わせて行います。
納入実績6,000例以上の中には製紙・パルプ分野も含まれており、現場の条件に応じた機種選定と設計で対応しています。






