
「同じ機種を入れたはずなのに、なぜ隣の工場より含水率が高いのか」という疑問を持つ担当者は少なくありません。
原因の多くは機種そのものではなく、スラリーの性状に合わせた設計パラメータが最適化されていないことにあります。
本記事では、圧力・ろ布・サイクル時間の三つの要素がどのように絡み合って脱水性能を決めるのか、具体的な失敗事例をもとに解説します。
「カタログ値」と現場の含水率がずれる理由
フィルタープレスのカタログには「含水率○%以下」という数字が並んでいます。しかしその数値は、特定の条件で測定されたものであり、自工場のスラリーに当てはまるとは限りません。
処理対象のスラリー(液体に微細な固体が混じったドロドロの液体)の性状は工場ごとに大きく異なります。粒径が細かいほど水が抜けにくく、粘度が高いほどろ過に時間がかかります。原料の温度が変わればスラリーの流動性も変わります。これらの違いを無視してカタログ値を鵜呑みにすると、現場での含水率(分離後の固形分に残る水分の割合)が想定より5〜10%高くなることがあります。
含水率が5%悪化すると何が起きるか。年間1,000トンの固形物を処理する工場では、単純計算で50トン分の余分な水分がそのまま産廃として運び出されます。産廃処理費が約2万円/tとすれば、年間100万円規模の差になります。数字にすると、カタログ値への過信がどれほど高くつくかが見えてきます。
失敗事例から見る「汎用機選定」の落とし穴
ある製造業の工場では、既存設備の老朽化に伴いフィルタープレスを更新しました。担当者は「前と同じ機種でいい」と判断し、同型の汎用機を導入しました。ところが、数年前から原料の仕入れ先が変わっており、スラリーの粒径が以前より細かくなっていました。
結果として含水率は旧設備より8%高い水準で安定してしまい、処理量を確保するためにサイクル時間を延ばすと今度はタクトが追いつかなくなりました。設備費を抑えようとした判断が、運用コストと生産性の両面で裏目に出た形です。
この事例が示すのは、「大は小を兼ねない」という原則です。処理量に余裕があるから大きい機種でいい、という発想では含水率は改善しません。スラリーの性状が変われば、最適な設計も根本から変わります。
よくある三つのミスマッチ
現場でよく見られるのは、次の三つのパターンです。圧力設定が低すぎてケーキ層(ろ布表面に積み重なる固体の層)が十分に圧縮されないケース、ろ布(液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター)の目開きが粒径に合っておらず微粒子が抜けていくケース、そしてサイクル時間が短すぎて十分にろ液が排出されないまま工程を終えるケースです。
いずれも「機種が悪い」のではなく「機種に対してパラメータが合っていない」状態です。逆に言えば、これらを正しく合わせることができれば、既存の機種でも含水率を改善できる余地があります。
脱水性能を決める三つのパラメータ
含水率を下げるには、圧力・ろ布・サイクル時間を一体として考える必要があります。一つだけ変えても期待した効果が出ないことが多く、三つの組み合わせが性能を決めます。
圧力設定 高ければよいわけではない
加圧力を高くするとケーキ層が締まり、水分が押し出されやすくなります。しかし粒径の細かい軟らかいスラリーに過剰な圧力をかけると、ケーキ層が詰まってろ液の通路を塞ぎ、かえって脱水効率が落ちることがあります。マキノでは1.5MPa(大気圧の約15倍に相当する圧力)の高圧圧搾技術を持ちますが、最適な圧力はスラリーの性状ごとにラボテストで確認します。「高圧をかければ含水率が下がる」という単純な関係ではありません。
ろ布選定 目開きと材質が分かれ道
ろ布の目開きが大きすぎると微粒子がそのまま通過し、ろ液が濁ったまま流れます。逆に小さすぎると目詰まりが早く、ろ過速度が落ちてサイクル時間が延びます。材質も重要で、酸性・アルカリ性のスラリーや高温スラリーに対しては耐薬品性・耐熱性を持つ素材を選ぶ必要があります。粒径と温度を測定した上でろ布を選定しないと、消耗が早まりランニングコストが跳ね上がります。
サイクル時間 短縮と品質のバランスをどこに置くか
サイクル時間を短くすれば1日の処理量は増えますが、脱水が途中で終わるため含水率は上がります。時間をかければ含水率は下がりますが、タクトが落ちて生産計画に影響します。どこで折り合いをつけるかは、処理量の目標と含水率の許容範囲によって決まります。これをスラリーの性状データなしに決めることはできません。
一品一様設計がなぜ含水率の差を生むのか
マキノが「一品一様設計」と呼ぶのは、スラリーの粒径・粘度・温度を実測した上で、圧力・ろ布・サイクル時間を最適な組み合わせで選定するアプローチです。同じ型番の機種であっても、これらのパラメータが違えば現場での含水率は全く異なる結果になります。
6,000例以上の納入実績を通じて蓄積されたデータが、この設計を支えています。「粒径がこの範囲のスラリーには、この圧力帯とこのろ布の組み合わせが有効」という経験則は、短期間のラボテストだけでは得られません。含水率を5%改善できれば、年間数百トン単位の重量削減につながり、産廃処理費だけで年間数百万円の削減効果が現れることもあります。
一方、汎用機の選定では圧力もろ布もサイクル時間も「標準値」に固定されます。スラリーの性状がその標準値の想定に近ければ問題は出ません。しかし少しでもずれると、含水率が高止まりしたまま運用することになります。設備担当者が「機種は合っているはずなのに」と感じるとき、原因のほとんどはここにあります。
フィルタープレスの性能帯と他方式との比較
脱水方式ごとの含水率の目安を見ると、ベルトプレスは85%以上、遠心分離機は70〜85%程度で推移することが多いのに対し、フィルタープレスは50〜70%まで下げられます。ただしこの数値も、適切な設計が前提です。設計が合っていなければフィルタープレスでも70%を超えることがあり、方式の優位性を生かしきれません。
まとめ
「同じ機種なのに含水率が違う」という現象の背景には、スラリーの性状と設計パラメータのずれがあります。圧力・ろ布・サイクル時間は独立した設定ではなく、スラリーの性状データをもとに一体として最適化するものです。カタログ値や他工場の実績をそのまま転用しても、自工場の含水率が改善するとは限りません。
マキノでは導入前のラボテストを通じて、対象スラリーの性状を実測します。そのデータをもとに圧力・ろ布・サイクル時間を組み合わせて選定するため、現場での含水率が設計値に近い形で実現します。含水率5%の改善が年間数百万円の産廃コスト削減につながった事例も、このプロセスの積み重ねから生まれています。
機種選定の段階から性状データを持ち込んで相談できるメーカーを選ぶことが、導入後の後悔を防ぐ最も確実な方法です。現状の含水率に疑問があれば、まずスラリーの粒径・粘度・温度を測定し、その数値をもとに専門家に相談することをお勧めします。
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FAQ|よくある質問
Q:同じフィルタープレスを導入したのに、他社より含水率が高い原因は何ですか?
原因の多くは、スラリーの粒径・粘度・温度に対して、圧力・ろ布・サイクル時間のいずれかが合っていないことにあります。同型機でもこれらのパラメータが標準値のままでは、スラリーの性状が少しでも異なると含水率が5〜10%高くなることがあります。まずスラリーの性状を実測し、その数値をもとに設定を見直すことが先決です。
Q:含水率を5%改善するとコストにどれくらい影響しますか?
年間1,000トンの固形物を処理する工場で含水率を5%下げると、産廃として運び出す重量が年間約50トン減ります。産廃処理費が約2万円/tとすれば、年間約100万円の削減です。処理量が多い工場ではさらに効果が大きくなり、年間数百万円規模になるケースも少なくありません。設備の更新費用との対比で考えると、回収期間は1〜3年程度に収まることが多いです。
Q:導入前に何を準備すれば、最適な設計を提案してもらえますか?
スラリーの粒径分布・粘度・温度のデータがあれば、ラボテストでの検証精度が上がります。データがない場合でも、処理対象の原料名・固形分濃度・1日の処理量を伝えるだけで概算の検討は可能です。マキノでは相談から設計提案まで、原則として数週間以内を目安に対応しています。まず現状のスラリーサンプルを持ち込んでいただくのが最も確実な進め方です。






