圧入が途中で止まる、ろ液の出方がばらつく、サイクルごとに脱水の仕上がりが違う。こうした不安定さを抱えながら、「ポンプの問題か、ろ布の問題か」と原因を一つひとつ確かめている現場は少なくありません。
実は多くのケースで、見落とされているのはスラリー(液体に微細な固体が混じったドロドロの液体)の粘度変動と、それに対応できていない供給ポンプの組み合わせです。
この記事では、圧入不安定の根本にある二つの要因を整理し、現場で取れる具体的な対策をお伝えします。

圧入不安定は「どこを見るか」で診断が変わる

フィルタープレスの圧入工程では、供給ポンプがスラリーをろ室に押し込み、ろ布(液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター)を通じてろ液が排出されます。ケーキ層(ろ布表面に積み重なる固体の層)が厚くなるにつれて抵抗が増し、圧力が上昇します。この圧力の上がり方が安定していれば、脱水の仕上がりもほぼ一定になります。

圧入が不安定なとき、現場では「ポンプ圧が上がらない」「圧力が途中で下がる」「サイクルが長くなった」といった症状として現れます。ところが、これらの症状は原因が一つとは限りません。ポンプの吐出量不足、配管の詰まり、ろ布の目詰まりなど複数が絡み合うことも多く、一か所だけ直しても改善しないケースが現れます。

そこで診断の出発点になるのが、「スラリーの状態」と「ポンプの特性」を分けて見ることです。この二つを切り離して確認するだけで、原因の絞り込みが大幅に速くなります。

スラリー粘度の変動が圧入を乱す仕組み

粘度が変わると何が起きるか

スラリーの粘度は、原料の濃度・温度・粒子径の違いによって大きく変動します。たとえば、季節による原水温度の変化だけで粘度が20〜30%前後変わることがあります。粘度が上がると、同じポンプ設定でも吐出量が落ち、ろ室への供給が追いつかなくなります。その結果、圧力が思うように上がらず、ケーキ層の形成が不均一になります。

逆に粘度が下がりすぎると、固体成分が均一に分散されずに偏り、ろ布の一部だけに負荷が集中します。ろ布の偏摩耗や液漏れにつながることもあり、安定した脱水ができなくなります。粘度は一定であることを前提にシステムを組みがちですが、実際の現場では季節・ロット・前工程の変化によって日常的にずれています。

粘度変動を見落とす現場の共通パターン

現場で粘度変動が見落とされやすい理由は、測定していないからです。「原料は変わっていないから粘度も同じはず」と判断して、スラリーの粘度を定期的に計測していない工場は思いのほか多くあります。ところが、同じ原料でも保管状態・投入タイミング・前処理の温度で粘度はずれます。

粘度計を導入していない場合でも、吐出圧力と流量の記録を継続的に取っていれば、変動のタイミングを後から追えます。圧力ログと操業日誌を照らし合わせると、「気温が下がった時期から圧入時間が延びている」といった傾向が見えてきます。まず記録をとることが、診断の第一歩です。

供給ポンプの「合っていない」が積み重なる

よくある選定ミスのパターン

供給ポンプの選定で見落とされがちなのは、スラリーの性質に合った形式かどうかという観点です。一般的な遠心ポンプは低粘度の液体には向いていますが、高粘度スラリーや固体含有量が多い液体では能力が大幅に落ちます。カタログスペックの吐出量は水を基準にしている場合が多く、実際のスラリーで同じ数値は出ません。

また、脈動(ポンプが一定の周期で吐出量が波打つ現象)も圧入の不安定要因になります。脈動が大きいポンプを使うと、ろ室内の圧力が周期的に上下し、ケーキ層の形成が乱れます。ろ布への負荷も増し、寿命が短くなります。

ポンプの摩耗が見えにくい問題

接液部に摩耗が生じるタイプのポンプは、少しずつ吐出能力が下がります。初期は問題がなくても、6〜12か月で吐出量が10〜15%落ちることも珍しくありません。現場では「最近サイクルが少し延びた気がする」程度の感覚に留まり、ポンプの摩耗が原因とは気づかないまま使い続けるケースが見られます。摩耗が進んだ状態でフィルタープレスを動かし続けると、ろ布の早期交換や脱水不良による含水率(分離後の固形分に残る水分の割合)の悪化につながります。

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粘度変動に対応できるポンプとはどういうものか

無脈動・非接触の組み合わせが安定を生む

スラリーの粘度が変動しやすい現場で求められるのは、粘度が上下してもほぼ一定量を供給し続けられるポンプです。脈動が少なく、かつ摩耗が起きにくい形式であることが条件になります。

マキノが供給ポンプとして採用するMDP型ポンプは、非接触構造で摩耗を抑え、無脈動で安定供給できる設計です。接液部の部品が触れ合わないため、高固体含有スラリーでも摩耗による能力低下が起きにくく、長期にわたって初期の吐出性能を維持します。脱水サイクルが安定することで、含水率のばらつきが抑えられ、後工程への影響も小さくなります。

粘度変動への対応はポンプだけで完結しない

ポンプを変えるだけで全て解決するわけではありません。スラリーの粘度が大きく変動する場合は、前工程での原料調整や投入温度の管理も合わせて見直すことが有効です。ポンプが安定供給できる粘度範囲に収まるよう、スラリー側を整えることで、両側から圧入の安定化を図れます。

マキノではフィルタープレスの選定から供給ポンプの組み合わせ、前工程との整合まで一貫して提案しています。創業1932年、納入実績6,000例以上の経験から、スラリーの性質や工場の操業サイクルに合わせた最適な組み合わせを提示できます。

現場で今日からできる確認ポイント

トラブルの全体像を把握する前に、まず手元で確認できることがあります。以下の三点を記録するところから始めてみてください。

一つ目は、圧入時間の推移です。同じ条件のバッチでサイクルが延びているなら、粘度上昇かポンプ能力の低下が起きている可能性があります。二つ目は、吐出圧力の波形です。脈動が大きくなっているなら、ポンプの摩耗や液内エアかみが疑われます。三つ目は、スラリー温度の記録です。気温と連動して投入温度が下がっている時期に症状が出やすければ、粘度変動が主因と判断しやすくなります。

これらのデータが3か月分あれば、傾向から原因を絞り込めます。「感覚でわかっていた」ことが数字になるだけで、社内での対策の優先順位も決めやすくなります。

まとめ

圧入が安定しない現場に共通するのは、スラリー粘度の変動を把握できていないことと、その変動に対応できないポンプを使い続けていることです。どちらか一方を直しても、もう一方が原因として残るため、なかなか改善しません。

粘度の測定または圧力・流量のログ取りを始めること、ポンプの吐出能力が経年でどう変化しているかを確認すること。この二点を整理するだけで、トラブルの原因がかなり見えやすくなります。対策の方向が定まれば、設備への投資判断も具体的になります。

マキノでは、現場のスラリー性状やポンプの現状を確認した上で、改善策を一緒に考えます。「何が原因かわからない」という段階からでも相談いただけます。

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FAQ|よくある質問

Q:スラリーの粘度はどのくらい変動するものですか?


原料や前工程の条件によって異なりますが、同じ原料でも投入温度が10℃変わると粘度が20〜30%前後変動するケースがあります。冬場に圧入時間が延びる、夏場は早く終わるといった季節差がある場合、温度起因の粘度変動がほぼ確実に関係しています。粘度計がない場合でも、圧入時間と外気温の関係を3か月記録するだけで傾向が見えてきます。

Q:MDP型ポンプは既存のフィルタープレスにも接続できますか?


既存設備への後付けは配管径・設置スペース・制御回路の確認が必要ですが、多くの場合は対応可能です。マキノでは現地確認を行った上で接続仕様を確認しており、既存のフィルタープレスを活かしながらポンプだけ入れ替えた事例も複数あります。まずは現在使用しているポンプの型番と配管図をご準備いただければ、概算の対応可否を確認できます。

Q:圧入が不安定なのに、ろ布を替えても改善しないのはなぜですか?


ろ布交換が効果を発揮するのは、ろ布の目詰まりや破損が主因の場合に限られます。スラリー粘度の変動や供給ポンプの能力不足が原因の場合、ろ布をいくら替えても症状は変わりません。ろ布交換後に一時的に改善しても1〜2か月で再発するなら、ポンプ側またはスラリー側に根本原因がある可能性が高いです。まず圧入時間と圧力の推移を確認し、ポンプの吐出量が初期値と比べてどう変化しているかを数字で確認することが先決です。

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