フィルタプレスの歴史は、陶磁器製造の歴史と深く交差しています。
粘土を水に溶かした泥漿(でいしょう)から余分な水分を抜き、成形できる状態に整える「土と水の分離」は、窯業の根幹をなす工程です。
愛知県常滑市に根を張って90年以上、マキノが蓄積してきた固液分離の技術がどのようにセラミックス・窯業を支えているか、この記事で詳しく解説します。

なぜ常滑でフィルタプレスが育ったのか

愛知県常滑市は、日本六古窯の一つに数えられる「常滑焼」の産地です。
長い歴史を持つ陶磁器の製造地であり、粘土の採掘から成形・焼成まで一貫した産業集積が続いてきた地域です。

この常滑で1932年に創業したマキノは、地場産業である窯業・セラミックス製造の課題に正面から向き合うことで、固液分離技術の精度を高めてきました。
「土と水」の分離は、セラミックス製造における最初の難関です。
粘土スラリーの脱水が不十分だと、成形体にムラが生じ、焼成後の割れや変形の原因になります。
均一な含水率(分離後の固形分に残る水分の割合)を実現することが、高品質なセラミックス製品の出発点です。

セラミックス製造における固液分離の技術的難しさ

セラミックス・窯業のスラリー(液体に微細な固体が混じったドロドロの液体)は、一般的な産業廃水スラリーと性格が大きく異なります。

主な特徴は以下の通りです。
粒径が非常に細かく(1ミクロン以下の超微粒子を含む場合も)、ろ過抵抗が高い。
粘土鉱物特有の膨潤性により、水を保持しやすく脱水が困難。
添加剤(解膠剤・バインダー)がろ過特性に影響する。
製品によって粒径分布・固形分濃度・pH が大きく異なる。

これらの特性から、セラミックス用のフィルタープレスには、一般的な産業廃水処理用とは異なる設計が求められます。
ろ布(液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター)の選定・ろ過圧力・圧搾の有無・圧力パターンなど、スラリーの性状に応じた最適設計が不可欠です。

泥漿脱水から見えるマキノ「一品一様設計」の本質

マキノが長年にわたって標榜してきた「一品一様設計」の思想は、実は窯業・セラミックスへの対応の中で磨かれてきた側面があります。

常滑焼の一般陶器と精密電子セラミックスでは、要求される含水率の範囲がまったく異なり、建材タイルのような大量生産品と研究用の特殊磁器では、生産サイクルも処理量も異なります。
同じ「セラミックス」であっても、最適なフィルタプレスの仕様は個々の工程ごとに変わるのです。

圧力・ろ布・サイクル時間の3要素を現場のスラリー性状に合わせて最適化する手法は、多品種少量生産が当たり前の窯業の現場で徹底的に鍛えられました。
この蓄積が、半導体CMPスラリーや医薬品原体など、より高精度が求められる産業分野への応用力につながっています。

電子セラミックスへの展開と高精度ろ過の要求

現代のセラミックス産業は、伝統的な陶磁器の領域を大きく超えて広がっています。
スマートフォンの積層セラミックコンデンサ(MLCC)、EV向けのセラミック系固体電解質、半導体パッケージ向けの高純度アルミナ基板など、電子デバイスの高性能化に欠かせない素材として需要が拡大しています。

これらの電子セラミックスでは、粒径の均一性・不純物の排除・含水率のばらつき抑制が製品歩留まりに直結します。
1.5MPa(大気圧の約15倍に相当する圧力)の高圧圧搾によって含水率を徹底的に下げながら、ケーキ層(ろ過が進むにつれてろ布の表面に積み重なる固体の層)を均質に仕上げることが重要です。

マキノの圧搾式フィルタプレス(MDFWシリーズ)やWAP型は、こうした高精度要求に応える設計を持ちます。
WAP型では水圧圧搾と空気乾燥を組み合わせることで、含水率60%以下という高水準の脱水を実現します。

窯業廃水・泥水処理への対応も含む総合提案

セラミックス・窯業工場では、製品スラリーの脱水だけでなく、工程排水の処理も課題になります。
釉薬調合・成形後の洗浄・焼成炉の冷却など、各工程から発生する排水は、微細な粘土粒子・重金属・顔料成分を含む場合があります。

排水を直接放流できる水質にするためには、固液分離による懸濁物質の除去が必要です。
マキノでは、製品スラリーの脱水用フィルタプレスと、排水処理用フィルタプレスを組み合わせた総合的なプロセス提案も行っています。

さらに、脱水後の乾燥・粉砕工程も含む一貫プロセスの設計が可能です。
「固液分離から乾燥まで1社で完結する」という体制は、工程間の責任所在が明確になるため、生産管理のしやすさにも直結します。

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常滑から世界へ 土と水の技術が結ぶ産業の縁

常滑市という場所は、マキノにとって単なる所在地ではありません。
窯業のまちで生まれ、土と水の分離に向き合い続けた90年間の蓄積が、今日の多様な産業への対応力を生み出しています。

陶磁器から電子セラミックス・半導体・レアメタル回収まで、固液分離の技術が応用される領域は広がり続けています。
その根底にあるのは、特定のスラリー性状に対して最適な圧力・ろ布・サイクルを設計する「一品一様」の思想です。

セラミックス製造における固液分離にお困りの場合は、まず現場のスラリーをお送りください。
ラボテストを通じて最適な脱水条件を確認し、具体的な提案をお届けします。

まとめ

セラミックス・窯業のスラリーは微細粒径・膨潤性・添加剤の影響など、一般的な産業廃水と性格が大きく異なります。均一な含水率を実現することが、高品質なセラミックス製品の出発点です。
マキノが常滑で90年以上磨いてきた一品一様設計の思想は、この窯業対応の中で鍛えられました。製品スラリーの脱水から排水処理・乾燥・粉砕までの一貫提案で、セラミックス製造の固液分離課題に向き合います。

セラミックス・窯業での固液分離に関して、まずは現場のスラリーをお送りください。
常滑から蓄積した90年以上の「土と水」の経験で、最適な脱水条件を見つけます。

ご質問・ご相談など
お気軽にお問い合わせください

FAQ|よくある質問

Q:陶磁器スラリーの脱水に特化したフィルタプレスはありますか?


マキノでは、粘土スラリーの特性(高粘度・膨潤性・微細粒径)に対応したろ布選定と圧力設定を行った専用設計が可能です。
製品用スラリーと廃水処理用スラリーとでは要求仕様が異なるため、用途別の設計・提案を行っています。
まずはスラリーの基本情報(pH・固形分濃度・粒径目安)をお知らせください。

Q:セラミックス工場の排水処理にフィルタプレスは有効ですか?


有効です。窯業排水には微細な粘土粒子・顔料・重金属が含まれるため、凝集処理と組み合わせたフィルタプレスによる固液分離が広く採用されています。
脱水後のケーキは産業廃棄物として適切に処理される一方、固形分を濃縮することで廃棄物容量と産廃処理費を削減できます。
現在の含水率から5%改善するだけで年間数百万円の産廃費削減につながるケースがあります(産廃処理費約2万円/t想定)。

Q:ラボテストはどのような手順で進めますか?


スラリーを約10〜20リットル(ポリタンク1本程度)お送りいただければ、マキノの試験設備でろ過・脱水テストを実施します。
テストでは最適なろ布種類・圧力・サイクル時間を確認し、実機導入時の性能を予測できます。
テスト結果をもとに、具体的な設備仕様と費用の見積りをご提示します。