「スラリーを圧入しているときに泡が混入し、圧入が安定しない。」
フィルタープレスの運転現場でこうした問題に直面したとき、多くの担当者はまずスラリーの性状や消泡剤の添加量を疑います。しかし原因はポンプの機構にあることが少なくありません。
この記事では、フィルタープレスへの圧入時に泡立ちが起きるメカニズムと、MDP型ポンプがなぜ気液混合状態に強いのかを技術的に解説します。

フィルタープレスへの圧入で「泡立ち」が起きるとき何が問題なのか

泡立ちとは、スラリー(液体に微細な固体が混じったドロドロの液体)の中に空気が混入し、圧入時に気液混合の状態になることを指します。この状態でフィルタープレスに圧入を続けると、いくつかの問題が発生します。

まず、ろ布(液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター)の表面にケーキ層(ろ過が進むにつれてろ布の表面に積み重なる固体の層)が均一に形成されにくくなります。気泡が存在する部分では固体が偏って積み上がるため、ケーキ層に厚みのムラが生じます。その結果、脱水が不均一になり、含水率(分離後の固形物に残る水分の割合)が計画値より高くなります。

次に、圧力の安定性が落ちます。気体は液体と異なり圧縮性があるため、ポンプからの吐出圧が乱れます。一定圧力での圧入が維持できないと、ろ過サイクル全体の制御が乱れ、バッチごとの品質にばらつきが出ます。

さらに、圧入ポンプ自体が空気を吸い込む「エア噛み」状態になると、ポンプが空回りして吐出量が激減します。最悪の場合はポンプが過熱・損傷するリスクもあります。

泡立ちの原因はどこにあるのか

原因を正確に特定するには、泡の発生源を切り分けることが先決です。

1つ目は、スラリーそのものが発泡しやすい性状の場合です。界面活性成分を含む工場排水・食品系のスラリー・有機物が多い廃水などは、攪拌やポンプの吸引動作そのもので泡が発生しやすい性質を持ちます。この場合、消泡剤の添加やスラリータンクでの静置時間の確保が対策になります。

2つ目は、ポンプの吸引側での空気の混入です。スラリーの液面が下がってタンクの底近くになると、ポンプが空気を吸い込みやすくなります。また、配管の接続部や弁のシール不良から空気が入ることもあります。

3つ目は、ポンプの機構そのものが気液混合に対して弱い場合です。ここが、ポンプの機種選定が問題の根本になるケースです。

ギヤポンプとMDP型ポンプで何が違うのか

フィルタープレスへの供給ポンプとして多く使われるのは、ギヤポンプ(歯車のかみ合わせで液体を送るポンプ)とモーノポンプ(スクリューと筒の組み合わせで送るポンプ)、そしてマキノのMDP型(ダイヤフラムポンプの一種)です。

ギヤポンプは均一な液体の移送には向いていますが、気液混合の状態になると問題が起きやすい。歯車のかみ合わせ部に空気が入ると吐出が不安定になり、スラリーの固形分が大きい場合は摩耗も早まります。モーノポンプもスクリューの隙間に空気が入ると吐出圧が乱れます。

MDP型ポンプはダイヤフラム(膜)の往復運動によって液体を送る仕組みです。ダイヤフラムが引かれるときにスラリーを吸入し、押されるときに吐出する。この動作の性質上、多少の空気が混入していてもダイヤフラムの往復サイクルの中で空気を押し出す形で吐出できます。液体と気体が分離していなくても一定量を送り続けられるため、気液混合状態への耐性が高い。

また、MDP型はピストンとシリンダーが非接触の設計のため、固形分を含むスラリーによる摩耗が少なく耐久性が高いという特長もあります。

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泡立ち対策として現場でできること

泡立ちの問題が発生している場合、以下の順序で確認と対処を進めることをマキノでは推奨しています。

まず、スラリーの性状を確認します。表面に泡が浮いているだけなのか、スラリー全体が発泡しているのかで対処が変わります。スラリータンクを静置して泡が自然消滅するなら発泡性の問題、消えないなら空気混入の問題です。

次に、配管と弁のシールを点検します。吸引側の配管接続部・バルブのシート面・フランジのパッキンに劣化や緩みがないかを確認します。ここからの空気混入は最もシンプルな原因です。

スラリーの液面管理も重要です。タンク内の液面が一定以上あることを確認し、低液面でのポンプ運転を避ける設定(液面センサーによる自動停止など)を導入します。

これらを確認した上でなお圧入が安定しない場合は、ポンプの機種そのものの適性を見直すことが必要です。現在ギヤポンプを使用している場合、MDP型への変更が根本的な解決策になるケースがあります。マキノでは10〜20リットルのスラリーサンプルを使ったラボテストを通じて、スラリーの粘度・固形分・発泡性に合ったポンプ機種を確認できます。

マキノがポンプも含めて一貫設計する理由

フィルタープレス本体の性能はろ布・フィルター板・圧搾機構で決まりますが、その性能を引き出せるかどうかは供給ポンプに大きく依存します。スラリーの粘度・固形分量・発泡性に合わないポンプを使えば、フィルタープレス本体がいくら高性能でも計画した含水率に届きません。

マキノが1932年の創業以来6,000例以上の納入実績を積み上げてきた中で、ポンプを含めたシステム全体の最適設計が一品一様設計の核心だと考えています。東京商工リサーチの評価でA評価(自己資本比率56.4%)を維持できているのも、この設計思想に基づいた導入後トラブルの少なさが評価されているからだと受け止めています。

まとめ

フィルタープレスへの圧入時に泡立ちが発生する原因は、スラリーの発泡性・配管からの空気混入・ポンプ機構の3つに分類されます。消泡剤だけでは根本解決にならないケースがあり、ポンプ機種そのものの見直しが必要な場合があります。
MDP型ポンプへの変更は気液混合状態への耐性が高く、ポンプ機構に起因する圧入不安定の根本解決策になります。ラボテストでスラリーの性状を確認することで、最適なポンプ機種と設定条件を特定できます。

泡立ちやスラリーの圧入不良でお困りの場合は、10〜20リットルのサンプルをお送りいただくだけでラボテストを実施できます。まずはご相談ください。

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FAQ|よくある質問

Q:既存のギヤポンプをMDP型に交換するだけで泡立ちは改善しますか。


ポンプの機種変更だけで改善するケースもありますが、スラリーの発泡性が高い場合や配管からの空気混入がある場合は並行対処が必要です。MDP型への変更を検討する際は、スラリーの性状(粘度・固形分・発泡性)のデータをもとに、ラボテストで圧入安定性を確認することをお勧めします。交換だけで解決できるかどうかも、そこで判断できます。

Q:消泡剤を添加すれば泡立ちは解決しますか。


消泡剤は表面活性による発泡を抑える効果がありますが、空気の物理的な混入が原因の場合は効きません。また、消泡剤がスラリーの性状(粘度・pH)を変化させることで、ろ布への付着や含水率に影響が出るケースもあります。消泡剤の添加は対症療法として有効な場面もありますが、根本原因の特定と並行して進めることが重要です。

Q:MDP型ポンプのメンテナンス頻度はどのくらいですか。


MDP型はピストン非接触構造のため、スラリーによる摩耗が少なく、ギヤポンプと比べてメンテナンス間隔が長くなる傾向があります。ダイヤフラム(膜)の交換が主な消耗品管理になりますが、スラリーの性状・運転時間によって頻度は異なります。定期的な点検周期については、導入時にご相談ください。