ポンプがスラリーを圧送し始めると、フィルタープレス内に大量の泡が発生してろ過が止まる。
あるいは、ろ液タンクに泡があふれて処理が進まない。
こうした泡によるトラブルは、界面活性剤を含む廃水や特定の工業廃液を処理する現場で起きやすく、設備の選定段階で対策を組み込んでいないと対処に追われます。この記事では、廃水の泡立ちがろ過工程に影響する仕組みと、消泡対策とポンプ選定の考え方を整理します。

泡立ちがフィルタープレスのろ過を妨げる具体的な仕組み

フィルタープレスは、スラリーを加圧してろ布を通すことで固液を分離する設備です。この工程で泡が大量に発生すると、複数の問題が同時に起きます。

泡は気体と液体の界面で安定した膜を形成するため、ろ布の表面に吸着しやすい性質があります。この泡膜がろ過の抵抗になり、液体が通過しにくくなるためろ過速度が落ちます。

また、ポンプがスラリーと一緒に泡を吸い込むとエア噛みが起きます。ポンプがエア噛みを起こすと圧入圧力が安定せず、ろ板内のスラリー充填が不均一になります。圧力が安定しない状態で加圧すると、局所的なろ液漏れやケーキ厚みのばらつきが生じやすくなります。

さらに、泡立ちが激しい場合はろ液の排出管や受けタンクから泡があふれ出し、床面への汚染・作業者への接触リスクが発生します。特に界面活性剤や有機溶剤を含む廃水の場合、泡に有害成分が濃縮されることがあるため、環境・安全面での管理が必要です。

廃水が泡立ちやすい成分と業種別の傾向

廃水が泡立ちやすいかどうかは、スラリー中に含まれる界面活性剤の種類と濃度に大きく依存します。

界面活性剤は分子内に水になじむ部分(親水基)と油になじむ部分(疎水基)を持ち、気液界面に集まって泡膜を安定させる性質があります。濃度が高いほど泡立ちが強く、温度が低いほど泡の持続時間が長くなる傾向があります。

泡立ちが問題になりやすい業種・廃液の例として、洗浄工程の廃液(金属加工・自動車部品・電子部品)、食品工場の洗浄排水(脂質・たんぱく質を含む)、製紙・パルプ工場の廃液(リグニン・界面活性剤含有)、染色工程の廃液(染料・助剤含有)があります。

また、凝集剤の種類によっては廃水の泡立ちを増大させることもあります。特定の高分子凝集剤は撹拌時に発泡しやすい性質を持つものがあり、凝集処理後のスラリーが泡立ちやすくなるケースがあります。凝集剤の見直しで泡立ちが改善することもあるため、この視点も問題解決の選択肢に入れておくことをお勧めします。

消泡技術の選択肢と現場での使い方

廃水の泡立ち対策には物理的な方法と化学的な方法があり、廃水の性状に応じて選択または組み合わせることが基本です。

化学的な方法は消泡剤(アンチフォーム)の添加です。消泡剤はシリコーン系・鉱物油系・ポリエーテル系などがあり、泡膜に作用して気泡を破壊することで消泡します。効果が速く現場での対応が比較的容易ですが、処理後の廃液にシリコーン成分が混入することで後工程や排水基準に影響が出る場合があります。また、消泡剤の効果は持続時間が限られるため、連続処理では定量添加が必要になります。

物理的な方法としては、スラリーが配管・ポンプを通過する際の乱流や落差による発泡を抑えるため、流速の低減や配管設計の見直しが有効な場合があります。脱気槽やバッファタンクでスラリーを一度静置し、泡を抜いてからフィルタープレスに圧送する方法も用いられます。

根本的な対策としては、発泡原因となる成分を上流工程で低減する方法が最も効果的です。洗浄工程で使用する界面活性剤の種類を変える、使用量を減らすといった工程の見直しが泡立ち対策の出発点になることも多いです。

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泡立ちやすい廃水処理に適したポンプの選定ポイント

泡立ちやすいスラリーのフィルタープレスへの圧送では、ポンプの選定がろ過の安定性に直接影響します。

遠心ポンプは圧送能力が高い一方、エア噛みに弱い特性があります。泡を含んだスラリーを遠心ポンプで圧送すると、インペラ内に気泡が入り込んで揚程が下がり、圧力が安定しなくなります。泡立ちが激しい廃水には不向きなことが多いです。

一方、ダイヤフラムポンプや一軸ねじポンプは、液体と一緒に気泡が混入していても比較的安定した圧送が可能です。MDP型ポンプ(マキノ独自の一軸ねじポンプ)はスラリーの圧送安定性に優れており、泡立ちやすいスラリーや粘性の高いスラリーの処理に適した特性を持ちます。

また、ポンプの吐出圧力が高すぎると、スラリー通過時の乱流が増えて新たな発泡を生じさせることもあります。フィルタープレスに必要な圧入圧力と、スラリーの発泡しやすさを考慮したうえで、ポンプの種類と設定圧力を選定してください。

泡立ちやすい廃水を処理する設備の新規導入や既存設備の改善を検討している場合は、廃水の成分と処理量をまとめてマキノへご相談ください。

泡立ち対策は発生源の制御とポンプ選定で決まる

廃水の泡立ちはフィルタープレスのろ過速度低下・ポンプのエア噛み・現場の汚染リスクという複合的なトラブルを引き起こします。消泡剤の添加・配管設計の見直し・上流工程での成分低減という3つのアプローチを、状況に応じて組み合わせてください。

ポンプの選定も重要な要素で、泡立ちやすいスラリーにはエア噛みに強い機種を選んでください。圧送圧力の設定も発泡を助長しないよう注意が必要です。

泡立ちによるろ過トラブルは複数の要因が絡み合うことが多く、廃水成分・設備設計・運転条件を総合的に見直すと、解決への近道が開けます。

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FAQ|よくある質問

Q:消泡剤を使う場合、ろ液の排水基準に影響しますか?


シリコーン系消泡剤は一般的な排水基準の分析項目(COD・BODなど)には影響が少ないとされますが、業種・地域によって独自の排水基準がある場合は事前に確認が必要です。また、ろ液を再利用する工程がある場合は、消泡剤成分の持ち込みによる影響を評価することをお勧めします。消泡剤の種類や添加量については廃水の処理フロー全体を考慮して選定するため、ご不明な点はご相談ください。

Q:ポンプのエア噛みが起きているかどうかを現場で確認する方法はありますか?


エア噛みが発生しているときは、圧力計の針が不規則に変動したり、通常より低い圧力域で安定しなくなるといった症状が現れます。また、ポンプ本体から通常とは異なる振動音や断続的なノイズが発生することもあります。圧力が安定しない状態が続く場合は、吸入配管の気泡混入経路を確認するとともに、ポンプの種類や吸入条件の見直しをご検討ください。

Q:脱気槽を設置するとどのくらいの効果が期待できますか?


脱気槽はスラリーを一時的に静置して気泡を液面に浮かせる設備で、激しい泡立ちを物理的に抑制できます。消泡剤に頼らずに対処できるため、排水基準や下流工程への影響を避けたい場合に有効な手段です。ただし設置スペースと設備コストが必要なため、処理量と泡立ちの程度に応じてコスト対効果を評価することが必要です。