ある砕石工場の設備担当者は、毎年梅雨明けのころになると沈殿池の前に立って同じことを考えていました。「この泥を処分するのに、いくらかかるのだろう」と。
洗浄排水の問題は、廃水処理だけの話ではありません。水を使い続けるための確保と、使った後の排水基準への対応が、常に表裏一体になっています。
この記事では、洗浄廃水をシステム内で循環させるクローズドシステムの設計と、フィルタープレスが果たす役割を具体的に解説します。

砂利・砕石の洗浄工程でなぜ廃水問題が繰り返されるのか

「沈殿池を作れば大丈夫」と思っている現場は、まだ多いかもしれません。
実際には、沈殿池は「問題を先送りする場所」として機能してしまいます。

砂利・砕石の洗浄工程では、原石から泥土・シルト・有機物を落とすために大量の水を使います。洗浄後の廃水は、液体に微細な固体が混じったドロドロの液体(スラリー)の状態になります。比重が重い砂粒や粗い泥土は比較的速く沈みますが、細かいシルト粒子(数マイクロメートル程度のもの)は自然沈降に時間がかかります。

沈殿池の上澄みを河川や地下に流せば、水質汚濁防止法の排水基準を超えるリスクが生まれます。待てば待つほど、池の底に泥土が積み上がり、定期的な浚渫(しゅんせつ)が必要になる。浚渫した泥土を産業廃棄物として委託処分すれば、処理費(おおむね約2万円/t)がかかります。

一方で、洗浄に使う水は絶えず必要です。地下水や河川水の取水には行政の許可が必要で、近年は規制が強化される傾向にあります。水コストを下げたくても、沈殿池からの回収水には細粒子が残っており、そのまま循環させると洗浄品質が落ちる。結果として、きれいな水を外部から買い続ける選択をとらざるを得ない工場が少なくありません。

この構造を変えなければ、廃水問題は繰り返されます。

クローズドシステムとはどういう仕組みか

クローズドシステムとは、工場内の水をほぼ完全に循環させて外部への排水をゼロにする、あるいは最小化する設備設計のことです。砂利・砕石工場に適用する場合、大きく3つの工程で構成されます。

第1工程 沈殿・凝集処理

洗浄排水を一時貯留した沈殿槽(クラリファイアまたはシックナー)に送り込み、凝集剤を加えて粒子を集合・沈降させます。凝集剤の種類と添加量はスラリーの性状によって異なりますが、適切に選定すれば細かいシルト粒子も数十分以内に沈降させられます。沈降した泥土は槽の底部に濃縮スラリーとして集まり、上澄みの清水は回収して洗浄工程に戻します。

第2工程 フィルタープレスによる脱水

濃縮されたスラリーをフィルタープレスで固液分離します。加圧ろ過によって分離後の固形分に残る水分の割合(含水率)を50〜70%まで下げ、固形分は脱水ケーキとして排出します。このとき分離された液体(ろ液)は清澄度が高く、循環水として再利用できます。

脱水ケーキの重量は、脱水前の泥状スラリーと比べて大幅に減ります。含水率を5%下げると、年間数百トン単位での重量削減になり、産廃処理費の削減に直結します。場内への埋め戻しが可能な組成であれば、処分コスト自体をなくせる場合もあります。

第3工程 循環ラインへの戻し

回収した清水とろ液を、洗浄工程の補給水として戻します。蒸発や製品への付着分を補う少量の補給水は必要ですが、外部への排水はほぼゼロに近づきます。排水基準違反のリスクが根絶され、取水量の大幅な削減も同時に実現します。

「排水処理をしていれば問題ない」という前提は成立しなくなっています

従来型の排水処理(沈殿後に基準をクリアした上澄みを放流する方法)と、クローズドシステムとでは、解決しようとしていることがそもそも異なります。

従来型は「排水を基準内に収める」ことが目標です。排水はゼロではなく、放流のたびに水質管理のリスクを負い続けます。沈殿池の泥土も増え続けるため、浚渫コストと処分費は毎年発生します。

クローズドシステムは「外に水を出さない」ことが目標です。排水基準を守るための管理コストが不要になり、沈殿池の泥土蓄積も大幅に抑制できます。フィルタープレスで脱水した固形物の管理だけに絞られるため、廃棄物処理の計画も立てやすくなります。

水質汚濁防止法の規制は、排水基準の厳格化が続く方向にあります。現在は基準を満たしている工場でも、将来の法改正によって対応が必要になる可能性を考えると、今のうちにクローズド化を検討する実務的な理由は十分にあります。

また、地下水や河川水の取水許可は更新のたびに審査が入ります。循環率を高めておくことで取水量を証明する必要がある場面でも、数値として対応しやすくなります。

砂利・砕石のスラリーにフィルタープレスが選ばれる理由

脱水機には、ベルトプレス・遠心分離機・フィルタープレスと複数の選択肢があります。砂利・砕石の洗浄廃水に対してフィルタープレスが選ばれる理由は、3点に集約されます。

一つ目は、含水率を低く仕上げられることです。遠心分離機では含水率70〜85%程度、ベルトプレスでは85%以上が一般的です。フィルタープレスは加圧ろ過によって50〜70%まで持ち込めます。含水率10〜20%の差は、廃棄物の処分重量と産廃費の差に直接つながります。

二つ目は、スラリー性状の変化に対応できることです。砂利・砕石の洗浄廃水は、採取する原石の産地・採取時期・洗浄量によって泥土の粒径分布や粘度が変化します。フィルタープレスはろ布の種類・チャンバーの圧力・圧搾時間を調整することで、性状が変わっても安定した脱水性能を維持できます。

三つ目は、砂粒による摩耗環境での耐久性です。フィルタープレスは構造がシンプルで、液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター(ろ布)・ろ板・シールなど消耗部品の交換が容易です。適切なメンテナンスで20〜30年の稼働実績があります。フィルタープレスに送り込む前の段階で粗い砂粒を沈殿槽で除去しておくと、消耗品の交換サイクルをさらに延ばせます。

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導入後の現場はどう変わるか

クローズドシステムが稼働した工場では、洗浄工程の水まわりがシンプルになります。

かつては沈殿池の状態を気にしながら「今月の浚渫費はいくらか」「排水検査は来月か」と頭の片隅に置いておく必要がありました。クローズド化後は、フィルタープレスが排出する脱水ケーキの管理だけに絞られます。ケーキは固体なので、液体の排水と違って日々の監視が不要です。処分計画も量が予測しやすく、年間の産廃費の見通しが立てやすくなります。

水の確保についても変化があります。循環率を70〜80%に高めた工場では、1日あたりの取水量が以前の2〜3割程度まで下がる例があります。地下水や水道水の取水コストが年間で数百万円規模になっている工場では、この削減分だけでも設備投資の回収を早める効果があります。

「設備を入れると維持費がかかる」という懸念は当然です。フィルタープレスのランニングコストはろ布の交換費と電力費が主体で、砂利・砕石用途では年間の消耗品費が予測しやすいとされています。設備投資の回収期間は処理量・スラリー性状・現状の廃棄物処分費によって異なりますが、産廃費削減と取水コスト削減を合算すると、1〜3年での投資回収が見えるケースも出てきます。

まとめ

砂利・砕石工場の洗浄廃水問題は、沈殿池で先送りし続ける限り解消しません。
フィルタープレスを核としたクローズドシステムに切り替えることで、排水基準違反のリスク、沈殿池の泥土処分費、取水コストという3つの課題を一括で前進させられます。

スラリーの性状は工場ごとに異なります。ろ布の選定・チャンバー圧力・処理量に応じた設計は、汎用設備の組み合わせでは再現できません。マキノでは、スラリーのサンプル(概ね10リットルからポリタンク1本程度)を預かり、ラボテストと現地調査をもとに砂利・砕石工場向けの設備設計を提案しています。

洗浄水の確保や廃水処理に課題がある場合、あるいは既存設備の更新を検討している場合は、まずご相談ください。

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FAQ|よくある質問

Q:クローズドシステムを導入すると産廃処理費はどれくらい変わりますか?


産廃処理費(約2万円/t)は廃棄物の重量に比例します。フィルタープレスで含水率を5%下げると、年間で数百トン単位の重量削減になります。
仮に年間50tの削減なら約100万円、100t削減なら約200万円の削減です。
処理量とスラリーの含水率によって効果は変わりますが、既存の沈殿池運用と比較した場合、浚渫コストの削減分も加算すると効果はさらに大きくなります。
ラボテストで現状のスラリーを評価することで、より精度の高い試算ができます。

Q:砂利・砕石の洗浄廃水には砂粒が多く、フィルタープレスが傷まないか心配です。


フィルタープレスに送り込む前の段階で、粗い砂粒は沈殿槽で沈降・除去しておくのが基本です。
除去後の濃縮スラリーは主にシルト・粘土分が中心になるため、フィルタープレス本体への摩耗負荷は大幅に減ります。
ろ布はスラリーの粒度分布に合わせた素材・織り方を選定することで、交換サイクルを最適化できます。接液部の材質選定も含めてご相談いただければ、摩耗対策を織り込んだ設計を提案します。

Q:循環水を洗浄工程に戻すと、洗浄品質に悪影響はありませんか?


フィルタープレスで処理したろ液は清澄度が高く、細粒子の再混入が少ないため、循環水として使用しても洗浄品質への影響は小さいとされています。
一方、沈殿池の上澄みだけを循環させた場合は細粒子が残りやすく、骨材への再付着リスクがあります。フィルタープレスを経由した循環水との差はこの点にあります。
要求される水質基準(コンクリート用骨材・建材用など)に応じてシステムを設計しますので、用途の要件を教えていただければ具体的な回答ができます。

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