「洗浄しやすい設備を選べばコンタミは防げる」——この発想が、医薬品製造の固液分離設計で最初につまずく落とし穴です。
洗浄性の前に問われるのは、接液部に使われている素材と、設備の構造そのものがコンタミの発生源になっていないかという点です。
この記事では、医薬品製造における高純度抽出工程の要件・金属コンタミが発生する構造的な原因・MSASシリーズが精密ろ過に適合する設計根拠を解説します。

医薬品製造の固液分離工程に求められる要件

医薬品製造において固液分離工程が担う役割は、有効成分の回収率を最大化しながら、不純物・異物・コンタミを厳格に排除することです。
製造工程は薬機法およびGMP(医薬品の製造管理・品質管理基準)の規制下に置かれており、設備の素材・洗浄性・記録管理に至るまで要件が定められています。
固液分離設備に求められる主な条件は以下の3点です。

条件1|金属コンタミを出さない素材設計

鉄・亜鉛・銅など一般的な金属素材が接液部に使われていると、スラリー(液体に微細な固体が混じったドロドロの液体)との接触によって金属イオンが溶出するリスクがあります。
医薬品原料や中間体への金属混入は有効成分の変質を引き起こす場合があり、規制当局の査察対象になります。
接液部には耐食性に優れたステンレス(SUS316L等)またはそれ相当の素材を使用することが前提となります。

条件2|有効成分の損失を最小化する精密ろ過

有効成分の回収率は、ろ布(液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター)の選定とケーキ層(ろ過が進むにつれてろ布の表面に積み重なる固体の層)の管理によって決まります。
目が粗すぎるろ布では有効成分が液側に逃げ、目が細かすぎると通液性が落ちて処理効率が低下します。
処理するスラリーの粒径分布・粘度・濃度に合わせてろ布を選定することが、回収率の確保に直結します。

条件3|洗浄・分解・記録管理への対応

GMP要件では、設備の洗浄手順・洗浄バリデーション・機器台帳の整備が求められます。
設備の構造が複雑で分解・洗浄に時間がかかるほど、製造ロット間のクロスコンタミ(他の製品成分の混入)リスクが高まります。
洗浄しやすい構造設計と、洗浄効果を記録として残せる管理体制が、継続的な規制対応の基盤になります。

フィルタープレスの詳細はこちら

MSASシリーズが医薬品製造工程に適合する設計根拠

MSASシリーズは、マキノが精密ろ過・小規模処理・衛生管理を必要とする用途向けに設計したフィルタープレスです。
全接液部にステンレスを使用し、金属コンタミのリスクを設備の構造レベルで低減しています。
医薬品製造における適合性は、以下の設計原理から来ています。

全接液部ステンレス設計による金属溶出リスクの排除

MSASシリーズはスラリーが直接触れる全ての部位にSUS316L相当のステンレスを使用しています。
SUS316Lは耐食性・耐薬品性が高く、酸性・アルカリ性どちらのスラリーに対しても金属イオンの溶出が極めて少ない素材です。
一般的な炭素鋼製フィルタープレスと比較すると、接液部からの金属混入リスクを設備の構造として遮断できる点が根本的な違いです。

小規模・精密処理に対応したスケール設計

医薬品製造工程では、1バッチあたりの処理量が少量で高付加価値という特性があります。
大型の産業用フィルタープレスは処理量の多い工場向けに最適化されており、小規模バッチへの対応はスケールのミスマッチが生じやすいです。
MSASシリーズは小規模から中規模の精密ろ過を主な用途として設計されており、ラボスケールの検討から実機導入まで同一の設計思想で対応できます。
ラボテストに必要なサンプル量は概ね10リットルからポリタンク1本(20リットル程度)が目安です。

洗浄・分解・メンテナンスのしやすさ

MSASシリーズはGMP要件を意識した洗浄容易な構造設計を採用しています。
分解・洗浄のしやすさは、ロット間のクロスコンタミ防止と洗浄バリデーションの実施精度に直結します。
創業1932年・納入実績6,000例以上の知見から、医薬品・食品・精密化学などコンタミを嫌う業種向けの設備設計を蓄積してきました。

MSASシリーズが適合しないケースと判断の基準

MSASシリーズがすべての医薬品製造工程に最適解とは限りません。
選定の判断材料として、以下の条件が当てはまる場合は別の構成を検討する必要があります。

処理量が大量かつ連続処理に近いラインでは、MSASシリーズよりも全自動・大型の設備が適します。
スラリーに研磨性の高い固形物が含まれている場合、ステンレス製接液部への摩耗影響を事前に確認する必要があります。
また、有機溶剤系のスラリーを処理する場合は、材質の耐薬品性と防爆要件を合わせて確認することが前提です。

マキノが推奨するのは、処理するスラリーのサンプルを使ったラボテストで「このスラリーにMSASシリーズが適合するか」を確認してから導入判断することです。
実際のスラリーで試験を行い、回収率・含水率・コンタミの有無を数値で確認することが、導入後の想定外を防ぎます。

まとめ

医薬品製造の固液分離工程でコンタミを防ぐには、設備の洗浄性ではなく接液部の素材設計と構造から見直す必要があります。
MSASシリーズは全接液部ステンレス設計・小規模精密処理への対応・洗浄容易な構造という3点で、コンタミを嫌う医薬品製造工程との適合性を持ちます。
一方で、処理量・スラリー性状・薬品耐性によって適合しないケースもあるため、ラボテストによる事前確認がリスクの小さい導入判断につながります。
マキノでは処理するスラリーのサンプルをお預かりしてのラボテストに対応しています。まずは試験結果を見てから判断できます。

ご質問・ご相談など
お気軽にお問い合わせください

FAQ|よくある質問

Q:MSASシリーズのラボテストにはどのくらいのサンプルが必要ですか?


必要なサンプル量はスラリーの性状によりますが、概ね10リットルからポリタンク1本(20リットル程度)が目安です。
ラボテストでは実際のスラリーを使って含水率・回収率・コンタミの有無を確認できます。
導入判断の前にテスト結果を数値として確認できるため、想定外のトラブルを防ぐ有効な手順です。

Q:MSASシリーズはGMP要件に対応していますか?


MSASシリーズは全接液部ステンレス設計・洗浄容易な構造という特性を持ち、GMP要件への対応を意識した設計です。
ただしGMPへの適合判断は工場の製造品目・プロセス・規制当局との合意内容によって異なるため、導入前に詳細な仕様確認と検証プロセスが必要です。
マキノでは仕様確認から導入後のメンテナンスまで対応していますので、詳細はご相談ください。

Q:MSASシリーズと大型フィルタープレスの使い分けはどう考えればよいですか?


処理量・バッチサイズ・コンタミ管理の厳格さで判断します。
小規模・高付加価値・精密処理が求められる用途にはMSASシリーズ、大量連続処理を求める産廃・排水処理用途には全自動の大型シリーズが適します。
実際のスラリーと処理量をもとにしたラボテストで最適なシリーズを確認することが、選定ミスを防ぐ最も確実な手順です。