「何年で元が取れるか、数字で示してほしい。」
中小型設備の導入検討をしている工場長や設備担当者から、マキノが繰り返し受ける質問です。
ROI(Return on Investment、投資した資金を何年で回収できるかを示す指標)が曖昧なまま稟議を通そうとしても承認は下りません。この記事では、産廃コスト削減を起点にした試算の組み立て方と、回収期間を最短にするためのフィルタープレスの選定の考え方を整理します。
「安い機種=ROI最短」ではない理由
「中小型機はとにかく初期コストを抑えればよい」という考え方を一度立ち止まって問い直す必要があります。初期投資を下げることと、ROIを最短にすることは同じ方向を向いていないことが多いからです。
フィルタープレスの導入効果は、産廃処理費の削減額で決まります。産業廃棄物(汚泥・スラリー等)の処理委託費は重量単価で課金され、目安は約2万円/トンです。脱水後の含水率(分離後の固形物に残る水分の割合)を下げるほど廃棄物重量が減り、処理費が圧縮されます。
たとえば、コスト重視で単純加圧式を選んだとします。しかし処理するスラリー(液体に微細な固体が混じったドロドロの液体)の粘度が高く、圧搾式なら含水率をさらに5%低下させられる状況だったとすれば、その5%分の産廃削減効果を毎年失い続けることになります。月100トンの処理量で含水率5%の差は年間60トン以上の廃棄物削減、金額換算で年間120万円以上の差です。5年間では600万円の機会損失です。
「削減できるはずのコストを毎年払い続ける」という状態が、安い機種を選んだことで生まれます。ROIを最短にする選定とは、初期コストを下げるのではなく、年間削減額を最大化できる機種を選び、その観点で初期投資との比率を評価することです。
単純加圧式と圧搾式 中小型機でどちらを選ぶか
中小型機の選定でまず問われるのが、単純加圧式にするか圧搾式にするかという判断です。
単純加圧式は、スラリーをポンプで押し込む圧力だけで脱水するタイプです。構造がシンプルなため導入コストが低く、維持費も抑えやすい。食品・電子部品・一般工場の排水処理など、スラリーが比較的扱いやすく、含水率の目標が65%前後でよい用途に向いています。マキノのDMSシリーズ(半自動・コスト重視)やMSASシリーズ(手動・小規模精密ろ過)がこれに対応します。
圧搾式は、スラリーを加圧投入した後にさらに膜を膨らませて機械的に圧搾する仕組みです。最大1.5MPa(大気圧の約15倍に相当する圧力)での圧搾が可能で、単純加圧式より5〜10%程度低い含水率に到達できます。スラリーの粘度が高い場合や含水率60%以下が要求される場合は圧搾式が有利です。MDFWシリーズ(圧搾式・含水率最重視)がこれに対応します。
判断基準はスラリーの性状と含水率の目標値です。「機種カタログから選ぶ」のではなく、「スラリーの性状と削減目標から機種を逆算する」順序が、ROI最短化の前提になります。
ラボテストがROI計算の根拠を作る
ROI試算に必要な数字は「現状の産廃コスト」と「導入後の削減額」です。現状コストは処理委託費の請求書から把握できますが、導入後の削減額は机上の計算だけでは正確に出せません。
マキノでは10〜20リットルのスラリーサンプルを使ったラボテストを実施しています。実機相当の条件で試験を行い、達成できる含水率・ろ過速度・ろ布(液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター)の適性を確認します。この数値が「導入後に確実に達成できる含水率」の根拠になります。
過去の選定失敗事例で多いのが、ラボテストを省略して仕様書の数値だけで機種を選んだケースです。ある化学系工場では、導入後にスラリーの粒径が想定より細かいことが判明し、ろ布が3ヶ月ごとに目詰まりを起こしました。計画した含水率が出ないまま維持費が増え続けた結果、ROIは大幅に悪化しました。ラボテストで粒径・粘度・pH・固形分濃度の4指標を確認していれば防げた問題です。
LCCで比較しないと機種選定を誤る
初期導入コストだけで機種を比べると、維持費が高い機種を選んで後悔するケースがあります。LCC(設備の全使用期間を通じた総費用)で評価することが、実態に即した判断方法です。
フィルタープレスの耐用年数は適切なメンテナンスで20〜30年です。ろ布交換費・ポンプ整備費・電力費をこの年数で積算すると、初期価格の安さが逆転するケースがあります。特に自動化レベルは初期コストに大きく影響しますが、人件費削減効果を加えると全自動機(MDFシリーズ)のLCCが手動機を下回ることが多いです。
また、中小企業投資促進税制(取得価格の30%特別償却または7%税額控除)や省エネ補助金を組み合わせると、実質的な初期投資負担が下がり、投資回収期間がさらに短縮されます。これらを組み込んだLCC試算を行うことで、稟議に通る数字が揃います。
フィルタープレスの詳細はこちら
中小型機でROI最短を実現するための選定手順
投資回収期間を最短にするための選定手順を5つのステップで整理します。
ステップ1 産廃コストの数値化
ステップ1、現在の産廃コストを数値化する。処理委託費・輸送費・保管費の合計を年間で把握します。処理委託費の請求書だけでなく、輸送・保管に関わるコストも合算することが全体把握の基本です。
ステップ2 含水率の実測
ステップ2、現在の含水率を測定する。脱水後のケーキ(ろ過が進むにつれてろ布の表面に積み重なる固体の層)を取り出し、乾燥前後の重量差から推計する簡易法から始められます。「目視で問題ない」と判断しているだけでは改善余地を見落とします。
ステップ3 ラボテストによる削減量の確認
ステップ3、スラリーの性状を確認してラボテストを実施する。粒径・粘度・pH・固形分濃度の4指標をもとにラボテストを行い、達成できる含水率の実測値を取得します。これが年間削減額の計算根拠になります。
ステップ4、自動化レベルを費用対効果で判断する。全自動機は夜間・休日の無人運転が可能ですが、初期コストは高くなります。現場の人件費実態と削減効果を比べ、自動化の費用対効果を単独で試算します。
ステップ5、LCCと補助金・税制優遇を組み込んで比較する。ろ布交換費・ポンプ整備費・電力費を耐用年数で積算し、税制優遇や補助金の効果を加えた実質回収年数で最終判断します。
マキノが中小型機の選定に強い理由
マキノは1932年の創業以来、フィルタープレスの専門メーカーとして6,000例以上の納入実績を積み上げてきました。東京商工リサーチの評価でA評価(自己資本比率56.4%)を維持しながら、国内の製造業・食品・化学・電子部品メーカーへの納入を継続しています。
中小型機の選定においてマキノが一品一様の設計を貫く理由は、スラリーの性状が工場ごとに異なるからです。粒径・粘度・温度・pHのどれか一つが違えば、最適なろ布・圧力・サイクル時間は変わります。カタログスペックで選んだ機種が現場で性能を発揮しないのは、この設計思想の有無によるところが大きい。
ラボテストの段階から実際の処理条件を再現し、導入後に「想定の含水率が出ない」という事態を防ぐ体制を持っていることが、ROI最短化の実現につながっています。
まとめ
中小型フィルタープレスのROI最短化は、「安い機種を選ぶ」ことではなく「年間削減額を最大化できる機種を選ぶ」ことから始まります。産廃処理量・現状の含水率・処理委託単価の3つを把握し、ラボテストで「導入後の含水率」を実測することで、回収期間の根拠が揃います。
LCCに補助金・税制優遇を組み込めば、実質的な回収期間はさらに短縮できます。稟議に通る数字を用意するための相談は、設備発注の前の段階から受け付けています。
FAQ|よくある質問
Q:ラボテストはどのくらいの量のサンプルが必要ですか。
マキノのラボテストは10〜20リットルのスラリーサンプルで実施できます。実機に近い条件で試験を行い、達成できる含水率・ろ過速度・ろ布の適性を確認します。これにより、導入後の「想定通りの性能が出ない」というリスクを事前に低減できます。採取方法や保管条件についてはご相談時にご案内します。
Q:維持費(ろ布・ポンプ交換)はどのくらいを見込めばよいですか。
ろ布の交換頻度はスラリーの性状・運転時間によって異なりますが、適切なメンテナンスを行えば20〜30年の稼働が可能です。LCC(ライフサイクルコスト)の試算では、ろ布・ポンプなどの消耗品費を加えて年間維持費を算出し、初期投資との合計で評価することをお勧めします。導入前の相談時に概算をご提示できます。
Q:省エネ補助金や投資促進税制は中小型機でも使えますか。
中小企業投資促進税制(取得価格の30%特別償却または7%税額控除)や省エネ補助金は、中小型機でも適用できるケースがあります。適用要件は機種・導入用途・企業規模によって異なるため、導入前に所轄の税理士または経済産業局に確認することをお勧めします。マキノでは補助金活用の相談事例も多く、申請に必要な仕様情報のご提供もできます。
「ROIの数字が出ないと稟議が通らない」「機種が多くてどれを選べばよいか判断できない」そうした状況にある方のご相談をお待ちしています。現在の産廃処理量・含水率・処理委託単価をお聞きするだけで、投資回収期間の概算と最適機種の方向性を一緒に整理します。
ご質問・ご相談など
お気軽にお問い合わせください






