「金属製の設備から溶け出す金属イオンが製品品質に影響している。」
食品・医薬・半導体の製造現場では、脱水機の素材選定が品質管理の最前線になっています。通常の金属製フィルタープレスでは、接液部(スラリーが直接触れる部分)からの金属イオン溶出を完全にゼロにすることはできません。
この記事では、フィルタープレスの接液部をPP(ポリプロピレン)樹脂製にすることで金属コンタミ(製品中への異物混入)のリスクをゼロにするMDFWシリーズの設計思想と、どのような用途・業界に向いているかを解説します。
なぜ金属製フィルタープレスで「コンタミ」が問題になるのか
一般的な工業用フィルタープレスは、ろ過板・フレーム・配管など接液部の多くを金属または金属コーティングで製作します。強度・耐圧性・加工のしやすさで金属が優れているからです。
しかし食品・医薬・半導体業界では、この「金属が触れる」という事実が品質リスクになります。金属はスラリーのpHや温度条件によって微量の金属イオンを溶出させます。鉄・クロム・ニッケルなどのイオンが製品中に混入すれば、食品の変色・医薬品の品質基準違反・半導体製品の歩留まり低下につながります。
金属コーティングや表面処理で溶出を抑えることはできますが、コーティングが経年劣化・剥離した場合のリスクはゼロにはなりません。製品への異物混入(コンタミ)をゼロリスクにしたい場合、接液部の素材そのものを変えることが根本的な解決策になります。
PP(ポリプロピレン)樹脂が選ばれる理由
マキノのMDFWシリーズでは、接液部にPP(ポリプロピレン)樹脂を採用しています。PPが選ばれる理由は、金属コンタミの排除と耐薬品性の両立にあります。
PP樹脂は金属イオンを溶出しません。スラリーがPP表面に触れても、製品中に金属成分が混入するリスクは原理的にゼロです。食品の変色・医薬品の純度基準・半導体向けスラリーの金属不純物規制に対して、素材レベルで対応できます。
耐薬品性も高い。酸・アルカリ・有機溶剤に対する耐性が金属より幅広く、薬品洗浄を頻繁に行う食品・医薬品製造環境での腐食が起きにくい。また、軽量であるためろ過板の交換・メンテナンス作業の負担が軽くなるという現場的なメリットもあります。
ただし、PP樹脂は金属と比べて強度が低く、使用温度や圧力に制約が生じます。MDFWシリーズはこの制約の中で圧搾式の高圧脱水(最大1.5MPa、大気圧の約15倍に相当する圧力)を実現するために、構造設計の工夫を行っています。
MDFWシリーズはどんな現場に向いているのか
MDFWシリーズの接液部PP製設計が最も効果を発揮するのは、以下のような条件が重なる現場です。
1つ目は、製品品質基準に金属不純物の規制がある用途です。医薬品の原薬・中間体・食品添加物・半導体向けのスラリー処理では、金属不純物に対する規格が厳格です。接液部のPP化はこの規格への根本的な対応になります。
2つ目は、強酸性・強アルカリ性のスラリーを扱う用途です。金属製の接液部では腐食が進みやすい条件でも、PP樹脂は安定した性状を維持できます。化学工場での酸・アルカリ系廃液の処理にも対応します。
3つ目は、含水率の最小化を優先する用途です。MDFWシリーズは圧搾式を基本設計とし、水圧圧搾による高圧脱水に対応しています。単純加圧式では到達できない含水率60%以下を実現したい現場で、PP製接液部と高圧脱水の組み合わせが機能します。
金属製との比較で押さえておくべき設計の違い
MDFWシリーズのPP製設計を検討するにあたって、金属製との違いを整理します。
強度と圧力耐性の面では、金属製が有利です。1.5MPaを超える高圧環境や、特に温度が高いスラリー(80℃以上)ではPP樹脂の変形リスクが高まります。MDFWシリーズは圧搾式として1.5MPaまで対応しますが、使用温度と圧力の条件確認はラボテストの段階で行います。
コンタミリスクの面では、PP製が圧倒的に有利です。金属製のコーティング処理では経年劣化・剥離のリスクがゼロにならない一方、PP製は溶出のメカニズムそのものが異なります。
洗浄性の面では、PP製は平滑面に仕上げやすく、スラリーの残留が少ない設計が可能です。食品・医薬品の製造では洗浄・殺菌のサイクルが品質管理の一部であり、洗浄しやすい素材であることが維持管理のコストにも影響します。
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マキノが一品一様でPP製設計を提案する理由
MDFWシリーズのPP製接液部は、すべての現場に一律に提案しているわけではありません。スラリーの性状(温度・pH・固形分濃度・粘度)と製品品質の要求水準を確認した上で、PP製が適切かどうかを判断します。
マキノは1932年の創業以来、フィルタープレスの専門メーカーとして6,000例以上の納入実績を積み上げてきました。食品・医薬・半導体・化学工業への納入の中で、接液材料の選定が含水率と品質の両立にとって重要な設計判断であることを繰り返し経験してきました。東京商工リサーチの評価でA評価(自己資本比率56.4%)を維持しているのも、こうした積み上げた設計知見が導入後の品質安定につながっているからです。
ラボテストでは10〜20リットルのスラリーサンプルから、PP製接液部での脱水条件(最適圧力・ろ布の番手・サイクル時間)を確認します。これにより、導入後に「コンタミが出た」「含水率が想定に届かない」という事態を防ぎます。
まとめ
フィルタープレスの接液部をPP樹脂製にすることで、金属コンタミのリスクを素材レベルでゼロにできます。コーティング処理と異なり、経年劣化・剥離によるリスクが生まれない点が根本的な違いです。
MDFWシリーズのPP製設計は、金属不純物規格が厳しい用途・強酸性アルカリ性スラリー・含水率最小化が求められる現場で特に効果を発揮します。スラリーの温度・pH・固形分濃度をラボテストで確認した上で、最適な接液素材と設計条件を決定します。
「金属コンタミが品質基準に引っかかっている」「現在の設備でコンタミを減らせるか試算したい」そうした相談をお待ちしています。
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FAQ|よくある質問
Q:PP(ポリプロピレン)製のろ過板は耐久性が心配です。どのくらい持ちますか。
PP製ろ過板の耐用年数はスラリーの性状・使用温度・圧力条件によって異なります。適切な設計条件の範囲内で使用すれば金属製と同等の耐用年数(適切なメンテナンスで20〜30年稼働)を期待できます。使用条件がPP樹脂の限界に近い場合(高温・超高圧)は、ラボテストで条件確認を行った上で設計します。
Q:接液部PP製にすると価格は大幅に上がりますか。
PP製接液部は金属製と比べて初期コストが高くなる傾向があります。ただし、金属コーティングの定期補修が不要になること、腐食による交換頻度が下がることを加味すると、LCC(ライフサイクルコスト)での比較では差が縮まるケースがあります。食品・医薬品業界では品質基準への適合コスト(不適合時のリスク含む)も加えた総コストで評価されることをお勧めします。
Q:PP製以外の樹脂素材(PVDF・PFAなど)の選択肢もありますか。
PVDF(フッ化ビニリデン)やPFA(パーフルオロアルコキシ)は、PPより高い耐熱性・耐薬品性を持ちますが、コストも高くなります。PFAS(有機フッ素化合物)規制の動向によってはPFAの使用に制約が生じる可能性もあります。スラリーの温度・pH・有機溶剤含有量に応じて、PP・PVDF・PFAの中から最適素材をご提案できます。






