
ケーキ厚みの不均一を解消する スラリー分配ポートの清掃と管理が脱水性能を左右する
「脱水はできているのに、チャンバーによって含水率がばらつく」「一部のろ板だけ早く詰まる」——そうした症状に悩んでいませんか。
こうした不具合の原因として見落とされやすいのが、スラリー分配ポート(各チャンバーにスラリーを均等に送り込む入口部分)の詰まりや偏りです。
この記事では、ケーキ層(ろ過が進むにつれてろ布の表面に積み重なる固体の層)の不均一が脱水性能に与える影響・分配ポートが詰まるメカニズム・正しい清掃と管理の手順を解説します。
ケーキ厚みの不均一が脱水性能に与える影響
フィルタープレスはろ板を積み重ねた複数のチャンバーでスラリー(液体に微細な固体が混じったドロドロの液体)を同時に処理する構造です。
すべてのチャンバーに均等な量・均等な圧力でスラリーが流入することで、各チャンバーのケーキ厚みが揃い、脱水効率が最大化されます。
しかし、分配ポートに偏りがあると特定のチャンバーにスラリーが集中し、他のチャンバーには不足します。
ケーキ厚みが不均一になると起きる問題は3つです。
まず厚いケーキが形成されたチャンバーでは脱水に必要な圧力が局所的に上昇し、ろ布への過負荷が生じやすくなります。
次にケーキが薄いチャンバーでは十分な固形分が堆積しないため、ろ液の濁りが増すことがあります。
そして全体の含水率(分離後の固形分に残る水分の割合)にばらつきが生まれ、産廃処理費(約2万円/t想定)の計算通りに削減効果が出にくくなります。
含水率が目標より5ポイント上振れし続けると、年間数百トン単位の廃棄物重量増加につながります。
スラリー分配ポートが詰まるメカニズム
ある工場では、定期的にろ板交換とろ布交換を実施していたにもかかわらず、含水率のばらつきが解消しなかった事例がありました。
調査の結果、スラリー分配ポートの入口部分に固形物が堆積していたことが原因と判明しました。
堆積は少量ずつ積み重なるため、日常点検では気づきにくく、「ろ布が悪いのか、圧力設定が悪いのか」と別の原因を疑い続けてしまうケースがよくあります。
詰まりやすい条件
分配ポートの詰まりが発生しやすいのは、スラリーの固形分濃度が高い・粒径が大きい・粘度が高いといった条件が重なるときです。
運転停止後にスラリーが配管内に残留したまま乾燥・固化すると、次の運転開始時に固形物が分配ポートの入口に引っかかり、徐々に堆積が進みます。
また、スラリーに繊維質や粘着性の高い成分が含まれる場合、ポート内壁に付着したまま蓄積しやすいです。
詰まりを早期発見するサイン
以下の変化が見られた場合は、分配ポートの状態を確認するサインです。
特定のチャンバーのケーキ厚みが他と比べて明らかに薄い・または厚い場合。
脱水サイクルが徐々に延びてきた場合(圧入量の偏りにより全体の処理効率が落ちる)。
ろ液の流量が以前より減少している、または特定のろ液口から流量が少ない場合。
これらは「ろ布の問題」と混同されやすいですが、ろ布を交換しても改善しない場合は分配ポートを優先的に確認します。
分配ポートの正しい清掃と管理手順
ろ布交換やろ板点検と比べると、分配ポートの清掃は後回しにされやすい作業です。
しかし、ろ板・ろ布が正常でも分配ポートに偏りがあれば均一なケーキ形成は実現しません。
清掃の手順と管理の考え方を整理します。
清掃タイミングの設定
分配ポートの清掃は、定期メンテナンスのスケジュールに組み込むことで継続しやすくなります。
目安として、ろ布の定期交換と同じタイミング(3〜6カ月ごと)で分配ポートの目視確認・清掃を実施することを推奨します。
スラリーの固形分濃度が高い工場では清掃頻度を上げることを検討してください。
また、スラリーの性状変更(新原料の導入・濃度変更)があった際は、変更後の初回運転後に早期確認を行うとよいです。
清掃の手順
清掃前に設備を安全停止させ、内部のスラリーと残圧を完全に抜くことが前提です。
分配ポート周辺を分解し、内部の固形物堆積をブラシと洗浄水で除去します。
洗浄後、各ポートの流路に閉塞がないことを確認します。
洗浄に使用した水がスラリーに混入しないよう、乾燥または水抜きを十分に行ってから組み戻してください。
清掃記録と変化の追跡
清掃の日時・状態(堆積の程度)・対処内容を記録に残すことが重要です。
記録を積み上げることで「この工場ではおよそ何週間で詰まりが生じるか」という固有のサイクルが把握でき、突発的なトラブルを計画的なメンテナンスに変えられます。
マキノが推奨するのは、ケーキ厚みのばらつきを定期的に測定し、前回値と比較する習慣を持つことです。
数値の変化が分配ポートの状態を映す鏡になります。
まとめ
ケーキ厚みの不均一は、ろ布やろ板より先にスラリー分配ポートの状態を疑うことが解決への近道です。
分配ポートの詰まりは少量ずつ進行するため気づきにくく、含水率のばらつきや脱水サイクルの延長として現れます。
今と過去を比較する視点——脱水時間・ケーキ厚み・ろ液流量の変化を定期的に記録すること——が、早期発見と計画的なメンテナンスの基盤です。
創業1932年・納入実績6,000例以上のマキノでは、現場の症状から原因を特定するメンテナンス相談にも対応しています。
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FAQ|よくある質問
Q:ケーキ厚みの不均一を放置すると、産廃コストにどう影響しますか?
含水率(分離後の固形分に残る水分の割合)がばらつくと、目標値より高い含水率のケーキが混在し、廃棄物全体の重量が増えます。
含水率が5ポイント上振れし続けると年間数百トン単位の廃棄物重量増加につながり、産廃処理費(約2万円/t想定)換算で年間数百万円の余分なコストが発生するケースがあります。
加えて脱水サイクルが延長されることで、処理能力全体が低下します。
Q:ろ布を交換しても含水率のばらつきが改善しない場合、何を確認すべきですか?
ろ布(液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター)を交換しても改善しない場合は、スラリー分配ポートの詰まりを優先的に確認します。
次にろ板のシール面の摩耗・変形がないか、油圧系の圧力が均等にかかっているかも確認項目です。
症状だけでは原因が特定しにくい場合は、マキノへ現場の状況をお知らせいただければ原因の絞り込みをサポートします。
Q:分配ポートの清掃は自社で実施できますか?
安全停止・残圧抜き・分解の手順を理解したうえで設備担当者が実施できます。
清掃作業自体は難易度が高くありませんが、組み戻し時のシール状態の確認と、洗浄水の混入防止が重要です。
初めて実施する場合や、清掃後も症状が改善しない場合は、マキノのサービス担当にご相談ください。






