
「圧力を上げれば含水率が下がる」と聞いて、そのまま信じていないでしょうか。実は、圧力さえかければ必ず脱水が進むわけではありません。スラリーの性質によっては、むやみに圧力を高めても含水率がほとんど変わらず、サイクルタイムが長くなるだけということが現場では珍しくありません。含水率が下がる本当の理由は、ケーキ層の内部で起きている毛細管現象にあります。その仕組みを理解すると、圧力条件の設定やトラブル時の判断が変わります。
脱水で何が起きているのか
液体に微細な固体が混じったドロドロの液体(スラリー)を脱水するとき、フィルタープレスは液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター(ろ布)を使います。ポンプでスラリーを送り込むと、液体はろ布を通過し、固体粒子はろ布の表面に積み重なってケーキ層を形成します。
ケーキ層が厚くなるほど、液体が通り抜けるのに大きな抵抗がかかります。ポンプ圧力が同じでも、時間が経つにつれて脱水の速度が落ちるのはこのためです。ある時点でポンプ圧力だけでは液体をほとんど押し出せなくなり、それが「ろ過の終点」になります。
問題は、このろ過終点でもケーキ層の内部には水分が残っているという点です。その水分をさらに絞り出す手段が、圧搾です。
含水率が下がる物理的な理由
ケーキ層には無数の細孔(毛細管)があります。粒子と粒子のすき間に液体が入り込んでいて、毛細管力によってその液体は引き留められています。外部から圧力をかけることで、この毛細管力に勝り、細孔から液体を押し出す。これが圧搾脱水の本質です。
重要なのは、細孔の大きさが均一ではないという点です。大きな細孔から小さな細孔へ、圧力が上がるにつれて順番に液体が追い出されていきます。低い圧力では大きな細孔の液体しか出てきません。より高い圧力をかけると、奥の細い細孔に残っていた液体もようやく出てきます。
「高圧をかければかけるほど含水率が下がる」というのは半分正しく、半分は誤解です。スラリーの粒径が細かく、細孔が非常に小さい場合、ある圧力を超えると細孔が変形して閉じてしまい、それ以上圧力を上げても液体が出なくなることがあります。最適な圧力は、スラリーの性質によって異なります。
単純加圧式とダイアフラム圧搾式の違い
圧搾の方法には大きく2種類あります。
単純加圧式は、ポンプでスラリーを送り込む圧力だけでろ過・脱水を行います。圧力源がポンプ一つで、シンプルな仕組みです。ポンプ圧力の範囲内でできる脱水が限界になるため、ある程度以上の含水率低減には向きません。
圧搾式(ダイアフラム型)は、ろ過が終わった後にケーキ層を圧縮するゴム膜(ダイアフラム)を膨らませ、ケーキ層を機械的にさらに押しつぶします。ポンプによるろ過で大きな細孔から液体を除き、ダイアフラム圧搾でより細い細孔の液体を追い出す、2段階の脱水です。マキノのフィルタープレスでは最大1.5MPa(大気圧の約15倍に相当する圧力)でダイアフラム圧搾をかけることができます。
圧搾の媒体には水圧と空気圧の2種類があります。水は圧縮されないため、ダイアフラム全面に均等な圧力を伝えやすいという特性があります。空気圧はコンプレッサーエアを使うため設備的にシンプルですが、気体の性質上、圧力分布にばらつきが生じやすい場面があります。スラリーの性質や求める含水率によって、どちらを選ぶかが変わります。
圧搾後にさらに含水率を下げる空気ブロー
ダイアフラム圧搾で機械的に圧縮した後、ケーキ層に空気を通すことで残った水分をさらに除けます。これを空気ブロー(エアブロー)と呼びます。
ブローには2方向あります。スラリーの入口側から空気を押し込む正ブローと、出口側から引き込む逆ブローです。スラリーの性質やケーキ層の詰まり方によって、どちらが効果的かが変わります。両方を組み合わせる場合もあります。
空気ブローは特に、細孔が小さく圧搾だけでは液体が出にくいスラリーに対して効果を発揮します。ただし、ケーキ層が割れやすいスラリーでは空気の通り道が偏ってしまい、思ったほど効果が出ないこともあります。ここでも、スラリーの特性を見極めることが先です。
圧力条件の設定を間違えると何が起きるか
高圧をかければ安心、という思い込みは現場でコストに直結します。たとえば、スラリーの粒径が粗く、比較的低い圧力でも十分に脱水できる場合に、必要以上の高圧をかけてもケーキ層の含水率はほぼ変わりません。一方でサイクルタイムが伸び、電力消費とランニングコストが増えます。
反対に、難濾過性と言われる粒径の細かいスラリーに対して低い圧力しかかけないと、ケーキ層の細孔から液体が十分に出ず、含水率が高いまま排出されます。産廃として処理するスラリーであれば、含水率が5%改善するだけで産廃処理費(1トンあたり約2万円)の削減が年間数百万円規模になることがあります。圧力条件を適切に設定するかどうかは、処理コストの話です。
多段圧搾(段階的に加圧するアプローチ)が有効なケースもあります。一気に高圧をかけると細孔が変形・閉塞しやすいスラリーに対して、低圧から順に段階的に圧力を上げていくことで、含水率がより下がる場合があります。最適な圧力とサイクルタイムの組み合わせは、スラリーの粒径・粘度・凝集状態によって変わるため、テクニカルセンターでのスラリーテストを経て決定することが多いです。
まとめ
圧搾脱水で含水率が下がる理由は、ケーキ層の細孔にかかる毛細管圧力を外部圧力が上回ることで、液体が押し出されるからです。ポンプ圧力だけの単純加圧式と、ダイアフラムによる機械的圧搾を加えた圧搾式では、到達できる含水率が大きく違います。さらに空気ブローを組み合わせることで、より低い含水率を狙えます。ただし、高圧が常に正解ではなく、スラリーの性質に合った圧力・サイクルタイムの設定が、含水率と処理コストの両方を左右します。フィルタープレスの含水率は50〜70%が達成範囲であり、遠心分離機やベルトプレスよりも乾いたケーキを得られる点が、固液分離の手段として選ばれる理由のひとつです。
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FAQ|よくある質問
Q:圧搾圧力を上げれば必ず含水率が下がりますか?
必ずしもそうではありません。
スラリーの粒径が細かく細孔が小さい場合、ある圧力を超えるとケーキ層の細孔が変形・閉塞し、それ以上圧力を高めても液体が出にくくなります。
また、粒径が粗いスラリーでは低い圧力でも十分に脱水でき、高圧をかけてもサイクルタイムが伸びるだけで含水率の改善幅は限られます。
マキノでは最大1.5MPa(大気圧の約15倍)の圧搾が可能ですが、実際の設定はテクニカルセンターでスラリーテストを行い、最適値を確認してから決定します。
Q:単純加圧式と圧搾式(ダイアフラム型)では、含水率にどれくらい差が出ますか?
スラリーの種類によって差は大きく変わりますが、同じスラリーで比較すると圧搾式のほうが含水率を5〜15%程度低く抑えられるケースが多いです。
単純加圧式はポンプ圧力の範囲内でのろ過が限界ですが、圧搾式はダイアフラムでケーキ層を機械的に圧縮するため、細孔の奥に残った液体まで追い出せます。
産廃処理を前提とするスラリーなら、含水率5%の改善が年間数百万円の処理費削減につながることがあり、設備投資回収の観点でも圧搾式が選ばれることが増えています。
Q:空気ブロー(エアブロー)はどのような場合に効果がありますか?
ダイアフラム圧搾だけでは細孔から液体を追い出しにくいスラリーに対して、空気ブローが有効です。
特に粒径が細かく、細孔の毛細管力が強いスラリーでは、圧搾後に空気を通すことで残留水分をさらに5〜10%程度低減できる場合があります。
正ブロー(入口側から押す)と逆ブロー(出口側から引く)の2方向があり、スラリーとケーキ層の性状によってどちらが効果的かが変わります。
一方、ケーキ層が割れやすいスラリーでは空気が偏って流れ、効果が限定的になることもあるため、事前のテストが重要です。






