「先月より明らかに時間がかかっている」と気づいたとき、何が原因かすぐに答えられる担当者は多くありません。突然の異常と違い、じわじわ延びるトラブルは数週間かけて積み重なるため、最初の変化を見落としがちです。
原因が1つとは限らず、ろ布・原液の性状・ポンプ・配管・圧力設定のどれか、あるいは複数が同時に変化していることもあります。
この記事では、ろ過時間の徐々な延長が起きているときに確認すべき5つのポイントを、順を追って整理します。

「突然の異常」と「じわじわ延長」は原因の性質が違う

フィルタープレスの不具合は、大きく2種類に分けられます。ある日を境に急激に悪化するケースと、数週間〜数カ月かけて少しずつ悪化するケースです。

突然の異常は原因が比較的特定しやすく、ポンプ故障や配管の急激な詰まり、ろ布の破損など単一の原因であることが多いです。一方、じわじわ延長するタイプは複合原因のことが多く、「どれか1つを直せば戻る」とならないケースが少なくありません。

ろ過時間が毎サイクル少しずつ延びているなら、まず運転ログを振り返ってください。1カ月前と今の数値を並べて、どの時点から変化が始まったかを確認してください。その変化のタイミングに、スラリー(液体に微細な固体が混じったドロドロの液体)の供給量変更やろ布の洗浄・交換など、何らかの操業上の変化が重なっていないかを見ます。

チェックポイント1 ろ布の目詰まりと劣化

ろ布(液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター)は、フィルタープレスのなかでろ過性能に直結する部品です。使い続けるうちに固体粒子がろ布の繊維間に詰まり、液体の通り道が狭くなります。これがろ過時間延長のもっとも一般的な原因です。

確認すべきことは2点あります。洗浄頻度が適切かどうか。洗浄間隔が長くなっていたり、洗浄方法が変わっていたりすると、目詰まりが進みます。もう1点は、ろ布自体の劣化や損傷です。繊維の毛羽立ち・変形・破れがあると、ケーキ層(ろ布表面に積み重なる固体の層)が均等に形成されず、液体の流れが偏ります。

目安として、定期洗浄後に翌サイクルのろ過時間が改善するなら、ろ布の目詰まりが主因と考えられます。洗浄しても改善しない場合は、劣化による交換が必要なサインです。

チェックポイント2 スラリー性状の変化

処理対象のスラリーの性状が変わると、ろ過時間に直接影響します。担当者が気づかないうちに変化していることも珍しくないので、定期的な確認が必要です。

確認すべき項目は3つです。濃度(固形分濃度が高くなると、ケーキ層が早く厚くなり圧力損失が増えます)、粒径(原料の粒径が細かくなると、ろ布の目が詰まりやすくなります)、粘度(温度低下や成分変化で粘度が上がると、液体が抜けにくくなります)です。

スラリーの性状変化は、原料ロットの切り替えや季節による温度変化、工程の前段での処理条件変更などがきっかけになります。ろ過時間が延び始めた時期に、これらの変化がなかったかを確認してください。

チェックポイント3 供給ポンプの吐出量低下

スラリーをフィルタープレスに送り込むポンプが、経年劣化や摩耗によって吐出量を落としているケースがあります。ポンプの圧力計と流量計の数値を以前のログと比較することで、変化に気づけます。

ポンプの吐出量が落ちると、フィルタープレス内部に必要な圧力が立ち上がるまでの時間が長くなります。結果としてろ過サイクル全体の時間が延びます。ポンプの圧力は規定値を保っているのに流量が落ちている場合、ポンプ内部のライナーやインペラの摩耗が疑われます。

ポンプ点検のタイミングは、メーカー推奨の点検サイクルに従うのが基本ですが、ろ過時間の変化をログで追うことで、交換時期を前倒しで察知できます。

チェックポイント4 供給配管の部分閉塞

ポンプ自体に問題がなくても、配管やフィルタープレスへの供給ポートが詰まっていると、スラリーが均等に送り込まれなくなります。

供給ポートは、固形分が堆積しやすい箇所です。複数ある供給口のうち一部だけが詰まっていると、フィルタープレス内でろ過ムラが生じます。一部の部屋だけに圧力が集中し、ケーキの形成が不均一になり、全体のろ過時間が延びます。

配管内部の堆積も同様です。長期間洗浄をしていない配管では、固形分が内壁に付着して流路が細くなっていることがあります。定期的なフラッシング(水や溶剤での配管内洗浄)を計画に組み込んでいるかどうかを確認してください。

チェックポイント5 圧力設定の問題

フィルタープレスの運転圧力が適正かどうかも、見落とされがちなポイントです。加圧不足のまま運転していると、ケーキ層から液体を押し出す力が不十分になり、ろ過時間が延びます。

確認すべきことは2点です。設定圧力が処理対象のスラリーに合った値になっているかどうか。スラリーの性状が変わったにもかかわらず、以前の設定をそのまま使い続けているケースがあります。圧搾式フィルタープレスの場合は圧搾時間の設定も確認します。圧搾時間が短すぎると、含水率(分離後の固形分に残る水分の割合)が下がらず、次サイクルの脱液に影響が出ます。

また、圧力計自体の精度が落ちていて、実際には規定圧力に届いていないのに計器上は正常値を示している場合もあります。圧力計の校正が最後にいつ行われたかも、この機会に確認してください。

フィルタープレスの詳細はこちら

ログ分析で傾向を特定する

5つのポイントを確認するにあたって、運転ログが手元にあると診断が早まります。最低限、以下の項目を記録していると役立ちます。

各サイクルのろ過開始・終了時刻(ろ過時間の推移)、供給ポンプの圧力・流量、ろ布の洗浄・交換日、スラリーの供給量と性状(濃度・温度)の4点です。

これらを1カ月単位で折れ線グラフにすると、ろ過時間の変化がどのタイミングから始まったか、どの項目と連動しているかが見えてきます。たとえば「ろ布洗浄の翌日だけ時間が戻っている」なら目詰まりが主因、「洗浄しても変わらない」なら他の要因を優先して調べる、という判断ができます。

ログがない場合は、まず今日から記録を始めてください。1カ月分のデータがあれば、傾向の特定に近づきます。

まとめ

ろ過時間がじわじわ延びているときは、ろ布・スラリー性状・供給ポンプ・配管・圧力設定の5点を順に確認します。突然の異常と違い、徐々な悪化は複数の要因が重なっていることが多く、1点だけ直しても改善しないケースもあります。運転ログを手がかりにしながら、変化が始まったタイミングを特定することが、原因の絞り込みを早くします。判断に迷うときや、確認しても原因が特定できないときは、フィルタープレスの専門メーカーへの相談も選択肢の一つです。

ご質問・ご相談など
お気軽にお問い合わせください

FAQ|よくある質問

Q:ろ過時間が延びてきたとき、まず何から確認すればいいですか?


最初にろ布の状態を確認してください。ろ過時間延長の原因のうち、もっとも頻度が高いのがろ布の目詰まりです。定期洗浄の直後にろ過時間が改善するかどうかを見るだけで、ろ布が原因かどうかをある程度判断できます。改善しない場合は、スラリーの性状変化やポンプの吐出量低下など、他の要因を順に確認します。

Q:ろ布を交換したばかりなのに、ろ過時間が改善しません。なぜですか?


ろ布以外の要因が重なっている可能性があります。交換後も改善しない場合、スラリーの濃度・粘度・粒径の変化、供給ポンプの吐出量低下(摩耗・経年劣化)、供給配管やポートの部分閉塞、圧力設定の不足のいずれかを疑います。運転ログで変化が始まったタイミングを確認し、その時期の操業条件に変更がなかったかを照合すると原因が絞りやすくなります。

Q:ろ過時間の延長がそのまま生産コストに影響しますか?


直接影響します。たとえば、1サイクルあたりのろ過時間が30分から40分に延びると、1日あたりのサイクル数が減ります。8時間稼働の場合、16サイクルから12サイクルへと25%処理量が落ちる計算です。さらに、エネルギーコスト(ポンプの稼働時間増加)やろ布の消耗加速も加わります。ろ過時間の変化は、生産計画や設備コストの両面で早めに対処することが得策です。

関連記事