食品工場の固液分離において、どの濾材を使うかという選択が製品の品質を左右することがあります。
同じフィルタープレスを使っていても、濾材の素材・目開き・表面仕上げが変わるだけで、ろ液の透明度・有効成分の収率・洗浄のしやすさが大きく異なります。
「以前の機械と同じ布で大丈夫だろう」という判断が、品質クレームや収率ロスにつながったという声は現場でも少なくありません。
この記事では、抹茶・酒造・飲料という三つの食品プロセスを例に、濾材選定のポイントを整理します。

食品工場の固液分離で濾材がなぜ重要なのか

固液分離の主役は「設備」ではなく「濾材」です。
フィルタープレスはあくまで加圧と圧搾の機構を提供するにすぎません。
「何をどこまで通すか・何を堰き止めるか」を実際に決めているのは、ろ布(液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター)です。

食品工場で濾材選定が特に重要視される理由は三つあります。

食品安全への直結

濾材の素材に金属製の芯材や金属コーティングが使われていると、ごくわずかでも金属成分がろ液に溶出するリスクがあります。
飲料や調味料のように最終製品として口に入るものを扱うプロセスでは、金属コンタミ(異物混入)の可能性がある素材は使えません。
また、濾材の繊維構造が粗かったり、表面に凹凸があると菌が繁殖しやすくなります。
SIP(定置滅菌)やCIP(定置洗浄)に耐えられる素材かどうかという衛生設計の観点も、食品プロセスでは欠かせません。

収率への影響

目開き(フィルターの孔の大きさ)が粗すぎると、製品として回収すべき有効成分が液体側へ流れ出てしまいます。
逆に細かすぎると、早期に目詰まりしてサイクルが短縮し、洗浄頻度が増えて稼働効率が落ちます。
「粒径に対して適切な目開き」を選ぶことが、収率と稼働率の両立につながります。

洗浄性と耐久性

食品工場では1日に複数回の洗浄が必要な現場もあります。
アルカリ洗剤・熱水・蒸気に耐えられる素材かどうか、繰り返し洗浄してもろ布の繊維がほつれたり収縮しないかどうかが、実際の稼働コストを左右します。
濾材のランニングコストは、素材単価だけでなく耐用洗浄回数で判断するのが実態に近い評価方法です。

抹茶・茶葉エキスの固液分離で濾材を選ぶポイント

抹茶は石臼で粉砕した茶葉を水に分散させたものであり、粒子が非常に微細(1〜10μm程度)です。
この微粒子を確実にケーキ側に堰き止めながら、茶葉由来の有効成分(カテキン・テアニン等)をろ液側に回収するという、相反する要求を両立させる必要があります。

推奨される濾材の特性

ポリエステル系の平織りまたはスパンボンド系の不織布で、目開き5〜10μm前後が抹茶エキスの分離に適しています。
ポリエステルはアルカリ洗浄への耐性が高く、繰り返し使用しても繊維構造が安定します。
また、ろ布の表面にカレンダー加工(加熱・加圧による平滑化処理)が施されているものは、茶葉の微粒子が繊維の内部に入り込みにくく、洗浄で落としやすいという利点があります。

一方、天然繊維系のろ布は食品安全の観点から避けるのが無難です。
繊維が吸水・膨潤することで目開きが変化し、ロットごとの分離精度にばらつきが出やすくなります。

酒造(もろみ・酒粕脱水)で濾材を選ぶポイント

日本酒の製造において、もろみ(米・麹・水・酵母を発酵させた醪)の固液分離は製品の風味に直結します。
酒粕の剥離性(ケーキがろ布からきれいに外れるかどうか)が悪いと、残留した成分が風味を損なう原因になります。
また、醪には粘度が高い成分が含まれるため、目詰まりへの対策が特に重要です。

推奨される濾材の特性

ナイロン系の綾織りろ布は、酒造用途で長く使われてきた実績のある素材です。
綾織り(縦糸と横糸が斜めに交差する構造)は、通液性と強度のバランスに優れており、粘性の高い醪でも一定の通液速度を確保しやすい特徴があります。
また、ナイロンは表面が比較的滑らかで、酒粕のケーキ剥離性が高いというメリットもあります。

目開きの選定は醪の粒径分布に依存しますが、20〜50μm程度の範囲で検討するケースが多く見られます。
酵母菌体(約5〜10μm)をどこまで回収するか、あるいは液体側に残すかという製造設計の方針によっても最適値は変わります。

飲料・植物エキスの固液分離で濾材を選ぶポイント

果汁・コーヒーエキス・植物抽出液などの飲料製造では、ろ液の透明度(清澄性)が製品価値に直結します。
わずかな微粒子の混入も消費者のクレームになりうるため、ろ液の品質基準が他の食品プロセスと比べて厳格です。
また、柑橘果汁のように酸性が強いものや、熱水抽出を伴うプロセスでは、濾材の耐薬品性・耐熱性が問われます。

推奨される濾材の特性

飲料プロセスで多く採用されるのは、ポリプロピレン系またはポリエステル系の素材です。
ポリプロピレンは酸・アルカリ両方に対する耐薬品性が高く、果汁のように酸性が強い液体を扱うプロセスでも安定して使えます。
目開きは製品の清澄度要求に応じて、1〜5μm程度の精密ろ過に対応した素材を選ぶケースもあります。

さらに、飲料用途では食品衛生法に適合した素材であることの証明が求められる場合があります。
調達時に素材の安全性証明書・溶出試験データを確認しておくことが、後工程での対応を簡略化します。

マキノのMSASシリーズとMDFWシリーズが食品工場に選ばれる理由

食品工場での濾材選定は、設備の仕様と切り離して考えることができません。
濾材の性能を最大限に引き出すには、設備の衛生設計・洗浄性・材質が適合していることが前提です。

MSASシリーズ(手動・小規模精密ろ過・サニタリー仕様)

抹茶や植物エキスの精密ろ過、小規模製造の食品プロセスに向いているのがMSASシリーズです。
ステンレス製の筐体はサニタリー設計(食品・医薬品用途の衛生基準を満たす設計)に対応しており、接液部の表面仕上げ・溶接仕様ともに食品工場の要件を満たしています。
手動操作のため設備投資を抑えながら、精密ろ過が必要な小規模プロセスに柔軟に対応できる点が選ばれる理由です。
また、サニタリー仕様の設備はCIPによる洗浄との相性がよく、濾材交換のタイミングを洗浄履歴と合わせて管理しやすい構造になっています。

MDFWシリーズ(接液部PP樹脂製・金属コンタミゼロ設計)

より大規模な食品工場での圧搾脱水に対応するのがMDFWシリーズです。
最大の特徴は接液部(製品やろ液が直接触れる部分)をすべてPP(ポリプロピレン)樹脂で構成した設計にあります。
金属部品が液に接触しない構造であるため、金属コンタミのリスクを設計の段階でゼロにしています。
食品工場でのHACCP対応(危害分析に基づく衛生管理)や食品安全規格の審査において、金属コンタミ対策の根拠として採用されるケースが増えています。
最大1.5MPaの高圧圧搾による低含水率の実現と、PP樹脂接液部という食品安全設計を両立させている点が、この製品が食品・飲料分野で採用される理由です。

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濾材を選ぶときの実務的な確認ポイント

「どの濾材が正解か」は、スラリーの物性・製品の品質基準・洗浄環境を整理してから判断します。
以下は現場で確認すべき最低限の項目です。

スラリー物性の確認

粒径分布(どの大きさの粒子が何パーセント含まれているか)と粘度が、目開き選定の基準になります。
粒径分布が分からない場合は、まず既存のろ布を使って分離を行い、ろ液の濁度を測定することが手がかりになります。

洗浄環境の確認

アルカリ系・酸系どちらの洗剤を使うか、洗浄温度の上限はどれくらいか、スチームを使うかどうかを確認します。
これらの条件に耐えられない素材を選ぶと、洗浄のたびに繊維が劣化して目開きが広がり、分離精度が低下します。

食品安全要件の確認

使用する濾材素材が食品衛生法または顧客が要求する食品安全規格に適合しているかを、調達時に確認します。
証明書・試験データを入手してライン立ち上げ時に記録しておくと、HACCPや第三者審査の対応が後から容易になります。

まとめ

食品工場の固液分離では、濾材の選定が製品品質・収率・衛生管理の三つに直接影響します。
抹茶プロセスでは微細粒子を堰き止めるポリエステル系の精密ろ布、酒造では剥離性と通液性を両立するナイロン系綾織り、飲料では耐薬品性に優れたポリプロピレン系が、それぞれの要件に応じた選択肢として挙げられます。

素材の選定だけでなく、設備の衛生設計が濾材の性能を支えます。
マキノのMSASシリーズはサニタリー仕様の小規模精密ろ過に、MDFWシリーズは接液部PP樹脂製による金属コンタミゼロ設計で食品安全を担保します。

「今使っている濾材でいいのか」「プロセスを変えたが濾材の見直しが必要か」といった疑問がある場合は、スラリーの物性データをもとにした具体的な相談が最初の一歩です。
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FAQ|よくある質問

Q:食品工場でフィルタープレスの濾材を交換するタイミングの目安はありますか。


明確な「何回で交換」という数値は濾材の素材・プロセス・洗浄条件によって異なりますが、実務上は次の兆候が交換を検討するサインです。
まずろ液の濁度が以前より上昇している場合は、繊維の摩耗や目開きの拡大が起きている可能性があります。
また、同じ圧力をかけても通液速度が以前より遅くなっている場合は、繊維内部への粒子の目詰まりが進行しています。
洗浄を行っても回復しなくなった時点が、実質的な交換のタイミングです。
食品安全の観点では、繊維のほつれや変形が確認された時点で即交換することを推奨します。

Q:抹茶や植物エキスの固液分離で収率が低い場合、濾材が原因のことはありますか。


あります。
目開きが粒径に対して細かすぎると、微細な有効成分がケーキ側に過剰に残留して収率が落ちます。
逆に目開きが粗すぎると有効成分がろ液側に流れ出てしまい、回収率が下がります。
また、ろ布が繰り返しの洗浄で目詰まりしている場合も、通液抵抗が上がって分離が不完全になり、見かけ上の収率低下につながることがあります。
現行の濾材の目開きと粒径分布を照合することが、収率改善の第一ステップです。

Q:酒造用途でフィルタープレスの濾材を選ぶ際に、天然繊維と合成繊維のどちらが適していますか。


伝統的な酒造では木綿などの天然繊維が用いられてきた歴史がありますが、近年は合成繊維系(ナイロン・ポリエステル)が採用されるケースが増えています。
天然繊維は吸水・膨潤による目開きの変化があり、ロット間の分離精度にばらつきが出やすいという課題があります。
ナイロン系の合成繊維は寸法安定性が高く、繰り返し使用しても目開きが安定するため、品質管理の観点から合成繊維系を選ぶ工場が増えています。
ただし製品の風味への影響は製造プロセス全体に依存するため、素材変更の際はテスト運転での確認を推奨します。

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