
「ポンプ周りから音がするようになったが、動いているので様子を見ている。」
油圧ユニットの異音や発熱は、作動油(油圧シリンダーを動かすための専用の油)の劣化やエア噛み(油中に空気が混入した状態)が引き金になっていることが多く、放置するとシリンダーの密封不良やバルブ損傷を経て装置停止に至るリスクがあります。
この記事では、フィルタープレスの圧搾・板締め動作を担う油圧ユニットの異音・発熱がなぜ起きるのか、放置したときに何が起こるのか、そして設備寿命20〜30年を維持するための作動油管理の要点を整理します。
油圧ユニットがフィルタープレスで果たす役割
フィルタープレスは、スラリー(液体に微細な固体が混じったドロドロの液体)をろ過板の間に圧入してケーキ(固形物の層)を形成し、高圧で圧搾して水分を絞り出す機械です。この「ろ過板を締める」「高圧で圧搾する」という動作を担っているのが油圧ユニットです。
具体的には、油圧ポンプが作動油に圧力をかけ、油圧シリンダーを押し動かすことでろ過板を締め付けます。マキノのフィルタープレスは最大1.5MPa(大気圧の約15倍に相当する圧力)の高圧圧搾に対応していますが、この圧力を安定して維持するためには作動油の状態が適正でなければなりません。
油圧ユニットの主な構成要素は、油圧ポンプ・油圧シリンダー・作動油タンク・バルブ・フィルターです。どれか1つが不調になると、設定した圧力を維持できなくなり、圧搾不足による含水率(分離後の固形分に残る水分の割合)の悪化や、最悪の場合は装置全体の停止につながります。
異音・発熱の原因を正確に把握する
異音が発生するおもな原因
油圧ユニットからの異音として現場でよく報告されるのは、「キャビテーション音(気泡が潰れるときの高周波音)」「ポンプのうなり音」「配管の振動音」の3種類です。
キャビテーション音はエア噛みが原因であることが多いです。油中に空気が混入すると気泡が生じ、高圧部分でその気泡が急激に潰れる際に衝撃音が発生します。継続すると油圧ポンプの内壁が浸食(キャビテーションエロージョン)され、ポンプ寿命を大幅に縮めます。
ポンプのうなり音は、作動油の劣化(酸化・汚染による粘度変化)やフィルターの目詰まりによって油の流れが妨げられたときに発生します。油が正常な粘度を保っていれば静かに流れるはずの回路が、抵抗の増大によってポンプに過負荷をかけている状態です。
配管の振動音は、バルブの異常や圧力脈動(圧力が周期的に変動すること)から来ることがあります。バルブの弁体が正常に動作していない場合、油の流れが不安定になり配管全体に振動が伝わります。
発熱が起きるおもな原因
油圧ユニットの発熱には3つのパターンがあります。
1つ目は作動油の粘度低下です。作動油は温度が上がると粘度が下がります。粘度が適正範囲を外れると油圧回路内の隙間から油が漏れ(内部リーク)、ポンプが余分な仕事をして発熱します。発熱がさらに粘度を下げるという悪循環に入ります。
2つ目はリリーフ弁(圧力が設定値を超えたときに油を逃がす安全弁)の設定不良です。圧力を逃がすたびに油のエネルギーが熱に変換されるため、リリーフ弁が頻繁に作動する状態が続くと油温が上昇します。
3つ目は油の循環不良です。冷却機構の詰まりや油量不足によって熱が逃げなくなった状態です。作動油タンクの油量が適正値を下回ると、少ない量の油が急速に温度上昇します。
異音・発熱を放置するとどうなるか
「まだ動いているから」という判断で異音・発熱を放置した場合、故障は段階的に進みます。最終的に装置停止に至るまでの典型的な経路を整理します。
最初に起きるのは、油圧シリンダーの密封不良です。作動油が劣化・汚染されると、シリンダー内のシール(密封部品)が早期に摩耗します。シールが劣化すると油圧が保てなくなり、ろ過板の締め付け力が低下します。締め付け不足のまま圧搾を続けると、スラリーがろ過板の継ぎ目から漏れ出します。スラリー漏れは床面・配管・電気系統を汚染するだけでなく、洗浄時間によるライン停止を招きます。
次に起きるのはバルブの損傷です。汚染された作動油には異物粒子が含まれており、これがバルブの弁座(弁体が着座する精密加工面)を傷つけます。バルブが正常に機能しなくなると圧力制御ができなくなり、設定した最大1.5MPaを維持することが難しくなります。圧搾力が不安定になると、バッチごとに含水率がばらつき製品品質の管理が困難になります。
最終段階は装置停止です。油圧ポンプ本体がキャビテーションや過負荷で損傷すると、油圧ユニット全体が機能を失います。ポンプ交換には部品調達・工期を含めると数日から数週間のダウンタイムが発生し、生産ラインの停止に直結します。予防保全ではなく「壊れてから直す」対応では、修理費用だけでなく機会損失が加わります。
設備寿命20〜30年を維持するための作動油管理
日常点検で確認する3つのポイント
油圧ユニットの日常点検で確認すべきは「油温」「油量」「油の状態(色・濁り)」の3点です。
油温は、作動油の適正使用温度(一般的に40〜60℃程度)を大きく超えていないか確認します。油温計がない場合でも、油タンクに触れて異常な熱さを感じたら点検のサインです。油量は油面計で確認し、適正範囲の下限を下回っていたら補充します。補充する際は現在使用している作動油と同一銘柄・同一粘度グレードを使います。異なるグレードを混ぜると粘度特性が変わり、かえって不調を招くことがあります。
油の状態は目視で確認できます。正常な作動油は透明感のある薄い黄色から琥珀色です。白濁している場合は水分混入、黒ずんでいる場合は酸化劣化や金属粉の混入が疑われます。どちらも早急に交換・分析が必要なサインです。
作動油の定期交換と油圧フィルターの管理
作動油は使用とともに酸化・汚染が進みます。一般的に年1回以上の交換が推奨されますが、高温環境や過負荷運転が続く現場ではより短いサイクルが適切です。交換時期の判断には作動油のサンプリング分析(動粘度・酸価・水分量の測定)が有効で、数千円程度のコストで油の状態を数値で把握できます。
油圧フィルター(作動油の異物を取り除くフィルター)の目詰まりも見落としがちなポイントです。フィルターが詰まると油の流量が制限され、ポンプへの負荷増大と油温上昇につながります。差圧インジケーター(フィルターの前後の圧力差を示す計器)が設置されている場合は定期確認を行い、規定の差圧を超えたら交換します。
異音発生時の初期対応手順
異音が発生したときに現場でまず行う確認の順序を整理します。
第1ステップは油量・油の状態の確認です。油量不足やエア吸い込みが最も多い原因です。油面が下限を下回っていたら補充し、エア抜きプラグから空気を排出します。
第2ステップはフィルターの確認です。フィルターの目詰まりがポンプの吸い込み不足を引き起こしていることがあります。フィルターを洗浄または交換します。
第3ステップは油温・油の状態の再確認です。上記2点を対処しても異音が続く場合は、作動油そのものの劣化・汚染が進んでいる可能性があります。油の交換と合わせて、専門メーカーへの相談を検討します。
まとめ
油圧ユニットの異音・発熱は「まだ動いている」段階で手を打つことが、設備寿命を最大化する最も経済的な判断です。放置した場合はシリンダー密封不良からスラリー漏れ、バルブ損傷による圧力制御不能、そして装置停止という段階を経て修理費用と生産ラインのダウンタイムが積み上がります。
日常点検で確認するのは「油温・油量・油の色と濁り」の3点です。作動油の年1回以上の定期交換と油圧フィルターの管理を組み合わせることで、フィルタープレス全体の耐用年数20〜30年を維持できます。マキノは1932年創業・納入実績6,000例以上の経験から、油圧ユニットの状態管理がフィルタープレスの寿命を左右する重要因子であることを繰り返し確認してきました。
「異音の原因をメーカーに確認したい」「作動油の交換時期について相談したい」という場合は、お気軽にご連絡ください。
ご質問・ご相談など
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FAQ|よくある質問
Q:作動油はどのくらいの頻度で交換すべきですか
一般的に年1回以上の交換が推奨されますが、使用環境によって適切なサイクルは異なります。高温になりやすい環境や連続運転が多い現場では、より短い間隔が望ましいケースもあります。作動油のサンプリング分析(動粘度・酸価・水分量の測定)を活用すると、油の実際の劣化状態を数値で把握でき、交換時期の判断精度が上がります。油が白濁・黒ずんでいる場合は即座に交換を検討してください。
Q:油圧ユニットの異音対策として自社でできることと、メーカーに依頼すべきことはどう区別しますか
油量の補充・エア抜き・フィルターの洗浄・交換は現場で対応できる範囲です。一方、油圧ポンプ内部の点検・バルブの分解整備・シリンダーのシール交換は専門技術が必要で、誤った対処は損傷を広げるリスクがあります。油量・フィルターを確認しても異音が継続する場合や、油圧圧力の維持が困難になってきた場合はメーカーへの相談が適切な判断です。
Q:油圧ユニットの寿命が来たときは、修理と交換のどちらが得ですか
油圧ポンプ単体の交換と油圧ユニット全体の更新では費用規模が大きく異なります。フィルタープレス本体がまだ十分に使用できる状態(適切なメンテナンスで20〜30年稼働)であれば、油圧ユニットのみを更新して本体の耐用年数を使い切る選択肢があります。故障した部品だけを交換するか、ユニット全体を更新するかは、本体の残存状態・部品の調達性・ダウンタイムの許容度によって判断が変わります。詳しい状況を伺った上でご提案できます。
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