酸・アルカリ・塩分を含むスラリーを扱う現場では、通常の鉄製フィルタープレスが短期間で腐食し、メンテナンスコストが跳ね上がることがあります。
腐食性スラリーに対して正しい材質設計がなされていない設備は、どれだけ優れた脱水性能を持っていても長期の安定運転が難しいです。
本記事では、マキノのMSAS/RMSシリーズが採用するステンレス製筐体の設計思想と、耐食性がもたらす経済的価値を解説します。
腐食性スラリーが引き起こす設備劣化の実態
製造現場で扱うスラリー(液体に微細な固体が混じったドロドロの液体)は、中性で粒子が均一なものばかりではありません。
化学プラント・食品工場・医薬品製造・電子材料など多くの分野では、酸性・アルカリ性・塩分・有機溶剤を含む腐食性のスラリーを処理するケースが多いです。
通常の鉄製筐体でこうしたスラリーを扱うと、腐食が進行して本体・フレーム・配管継手が劣化します。
腐食による問題は外観上の錆にとどまりません。
ろ液(処理後の液体)に金属イオンが混入して製品品質に影響したり、設備強度が低下してシール部からの漏れや破損につながることがあります。
特に問題になるのは、腐食が進行していても外見からは判断しにくい点です。
定期的な目視点検だけでは内部の劣化を見落としやすく、ある日突然トラブルが発生するケースが少なくありません。
こうしたリスクを設備選定の段階で解消する手段が、ステンレス製筐体の採用です。
ステンレス製筐体が腐食性スラリーに選ばれる理由
ステンレス(SUS304・SUS316Lなど)はニッケルとクロムを含む合金鋼で、表面に形成された不動態皮膜が腐食の進行を抑えます。
酸・アルカリ・塩素イオンに対する耐性が高く、食品・医薬品・電子材料など「ろ液や接液部の清潔さ」が求められる用途で標準的に選ばれる素材です。
鉄製と比較した場合の主なメリットは3点あります。
1つ目は長期的な設備寿命です。適切なメンテナンスを前提とすれば、ステンレス製筐体は腐食による早期劣化を避けられるため、20〜30年の稼働が現実的な水準になります。
2つ目はろ液・ケーキへの金属混入リスクの低減です。食品・医薬品用途では製品への異物混入防止が法規制上も求められており、接液部にステンレスを使うことがそのまま品質管理の要件を満たすことになります。
3つ目はメンテナンスコストの低減です。腐食による補修・部品交換の頻度が減り、設備担当者の負担と部品コストを抑えられます。
MSASシリーズのサニタリー設計思想
マキノのMSASシリーズは、食品・医薬品・電子材料などの精密ろ過用途向けに設計されたステンレス製フィルタープレスです。
手動・小規模精密ろ過に適したシリーズで、衛生管理と精密なろ過精度の両立を設計の核心に置いています。
MSASシリーズの特徴は、接液部全面がステンレス製であることに加え、洗浄性への配慮が設計に組み込まれている点です。
食品・飲料工場では設備の洗浄・除菌(CIP/SIP)が日常的に行われますが、構造の隙間や凹凸に残留物が溜まると洗浄不全の原因になります。
MSASシリーズはこの問題を見越した形状設計がなされており、衛生基準の高い現場での継続使用を前提に作られています。
茶葉エキス・果汁・乳製品・医薬品原料など、異物混入が製品品質に直結する用途で選ばれる背景には、こうした設計思想があります。
RMSシリーズとの使い分け
RMSシリーズはMSASシリーズと同様にステンレス製筐体を採用しながら、より過酷な腐食環境や高圧条件に対応したモデルです。
化学プラントや電子材料の製造工程など、強酸・強アルカリ・有機溶剤を含むスラリーの処理に適しています。
MSASとRMSの選択は、主に以下の観点で判断します。
スラリーのpH・腐食性物質の種類・処理温度・圧力条件を確認し、それぞれの仕様に合ったシリーズを選ぶことが前提です。
マキノでは「サニタリー性を優先するか、化学的耐久性を優先するか」という観点からシリーズを絞り込み、スラリーサンプルのラボテストで最終確認を行います。
「ステンレスなら何でも同じ」という前提で選定してしまうと、強酸環境でSUS304が腐食するケースなど、素材の細かい違いが運転上のトラブルにつながることがあります。
使用環境に応じた正確な材質選定が、長期稼働の鍵になります。
耐食性設計がもたらす経済的価値
ステンレス製フィルタープレスの初期費用は鉄製より高くなりますが、ライフサイクルコスト(LCC)で比較すると逆転するケースが多いです。
腐食による補修・部品交換・設備更新コストを合算すると、鉄製設備の方が10〜20年の運用で総コストが高くなることがあります。
特に以下の条件が重なる現場では、ステンレス製の優位性が大きいです。
稼働時間が長い(24時間・多頻度バッチ)工場では、腐食劣化のペースが早まりやすいです。
スラリーのpHが5以下または9以上の場合は、鉄製設備の腐食が急速に進むことがあります。
ろ液・ケーキの品質管理が厳格な用途では、腐食による金属混入が製品クレームや法規制違反につながるリスクがあります。
マキノでは1932年の創業以来、6,000例以上の納入実績の中で多様な腐食性スラリーに対応してきました。
「どのスラリーにどの材質が適切か」を判断する設計ノウハウが、MSAS/RMSシリーズの製品設計に反映されています。
適切なメンテナンスのもとでは20〜30年の稼働が期待できる設備寿命が、投資回収の根拠となります。
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まとめ
腐食性スラリーの処理に鉄製フィルタープレスを使い続けると、補修・部品交換・早期更新のコストが積み上がり、トータルの設備コストが高くなります。
マキノのMSAS/RMSシリーズは、接液部全面ステンレス製の筐体設計により、腐食リスクを設計段階から排除した製品です。
MSASシリーズは食品・医薬品・電子材料向けのサニタリー設計、RMSシリーズは化学プラントなど過酷な腐食環境向けと、用途ごとに最適化されています。
素材の選定は「ステンレスなら十分」ではなく、スラリーのpH・腐食物質・温度条件に合わせた正確な判断が必要になります。
腐食性スラリーの処理で設備の劣化・メンテナンスコストに課題を感じている場合は、まずスラリーの性質データをご用意の上、マキノにご相談ほしい。
ラボテストを通じて最適な材質と機種をご提案できます。
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FAQ|よくある質問
Q:MSASシリーズとRMSシリーズはどう使い分ければよいですか?
MSASシリーズは食品・医薬品・電子材料など衛生管理と清潔さを優先する用途向けで、洗浄性(CIP/SIP対応)を重視した設計になっています。
RMSシリーズは化学プラントなど強酸・強アルカリ・有機溶剤を含むより過酷な腐食環境に対応したモデルです。
スラリーのpH・腐食性物質の種類・処理温度・圧力条件をお知らせいただければ、どちらが適しているかをご提案できます。
Q:ステンレス製フィルタープレスの耐用年数はどれくらいですか?
適切なメンテナンス(ろ布交換・シール部点検・定期清掃)を前提として、20〜30年の稼働が期待できる水準です。
腐食性環境では鉄製設備が5〜10年で補修・更新が必要になるケースがある一方、ステンレス製はそのリスクを大幅に低減できます。
ただし使用するスラリーの種類によって劣化の進み方は異なるため、定期点検による状態確認が重要です。
Q:既存の鉄製フィルタープレスからステンレス製に更新する場合、投資回収はどれくらいかかりますか?
腐食性スラリーを扱う現場では、鉄製設備の補修・部品交換・早期更新コストを合算すると、10〜20年のライフサイクルコストがステンレス製を上回るケースが多くあります。
現状の年間メンテナンスコストと想定更新サイクルをもとに、ステンレス製への更新コストと比較したシミュレーションをご提供できます。
まず現状の設備情報とスラリーのデータをご用意の上、ご相談ください。






