圧力を上げても含水率が下がりません。ろ過サイクルが終わるたびにケーキが軟らかく、後工程に支障が出ます。
こうした現象は「ろ過機の性能が不足している」のではなく、スラリーの性質に合っていない圧力プロファイルで運転していることが多いです。
本記事では、難ろ過性スラリーに対してなぜステップ加圧・多段圧搾が有効なのか、その物理的なメカニズムから解説します。

難ろ過性スラリーで含水率が下がらない本当の原因

フィルタープレスの脱水性能は、スラリー(液体に微細な固体が混じったドロドロの液体)の粒子径・粘度・圧縮性に大きく左右されます。
「難ろ過性」とは、この3つの要因が重なって通常の運転条件では目標の含水率(分離後の固形分に残る水分の割合)に達しにくいスラリーの総称です。

代表的な難ろ過性スラリーの特徴は2つあります。
1つ目は微細粒子が多いケースです。粒子径が小さいほどろ布(液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター)の目詰まりが起きやすく、液体が抜けにくくなります。
2つ目はケーキ層(ろ過が進むにつれてろ布の表面に積み重なる固体の層)の圧縮性が高いケースです。
圧縮性の高いスラリーは、圧力を急激に上げると粒子が押し固まってしまい、逆に液体の出口をふさいでしまいます。

この「圧力を上げると詰まる」という逆説的な現象が、難ろ過性スラリーへの対処を難しくしています。
単純に圧力を最大まで上げれば解決するわけではなく、ケーキ層の形成プロセスに合わせた圧力制御が必要になります。

圧力を一気に上げてはいけない理由

フィルタープレスの運転で「初期から高圧をかければ早く終わる」と考えるのは誤解です。
圧力を急激に上げると、ケーキ層がまだ均一に形成されていない段階で粒子が圧縮・崩壊し、ろ布表面に緻密な詰まり層が形成されてしまいます。
この状態では液体の透過経路がふさがれ、それ以上圧力をかけてもろ液が出てこなくなります。

適切な圧力プロファイルは、ケーキ層の形成段階に合わせて段階的に圧力を上げていくことです。
初期は低圧でケーキ層を均一に形成し、層が安定してきたら中圧でろ液を絞り出し、最終段階で高圧の圧搾をかけます。
この「低圧→中圧→高圧」の順で圧力を制御するアプローチがステップ加圧です。

各段階での圧力値と保持時間は、スラリーの圧縮特性によって変わります。
最適なプロファイルはラボテストで確認するのが確実で、感覚だけで設定すると「圧力は高いのに含水率が下がらない」という状況に陥りやすいです。

ステップ加圧とケーキ層形成の関係

ステップ加圧が有効な理由を、ケーキ層の物理的な挙動から理解しておくと設定の根拠が明確になります。

ろ過の初期段階では、スラリー中の粒子がランダムにろ布表面に堆積し始めます。
この段階のケーキ層はまだ構造が粗く、液体の通り道(空隙)が多い状態です。
ここで低圧をかけることで、粒子を無理に押しつぶさずに均一な層を形成できます。

層が形成されて安定してきた段階では、中程度の圧力をかけてケーキ層内の空隙から液体を押し出します。
この段階が含水率低下の主要なフェーズです。
最後の高圧圧搾段階では、ケーキ層の空隙にまだ残っている水分を最大限に絞り出します。

マキノのWAP型では水圧圧搾に加えて空気乾燥を組み合わせることで、含水率60%以下という水準も実現しています。
通常の単純加圧式では到達が難しいこの水準は、圧搾のステップ制御と材質・ろ布の最適設計が組み合わさって初めて達成できます。

多段圧搾が実現する含水率の水準

ステップ加圧・多段圧搾を適用した場合の脱水性能は、スラリーの種類によって異なりますが、代表的な水準として以下が参考になります。

フィルタープレスの一般的な含水率は50〜70%の範囲に収まることが多いです。
遠心分離機(70〜85%)やベルトプレス(85%以上)と比べてフィルタープレスは本来優位性がありますが、スラリーの性質に合った圧力設計をしなければその性能を発揮できません。

難ろ過性スラリーで単純加圧のみを用いると含水率が70%を超えるケースがありますが、ステップ加圧と圧搾式の組み合わせで55〜65%程度まで下げられることが多いです。
さらにWAP型の水圧圧搾+空気乾燥を用いることで60%以下の水準も射程に入ります。

含水率が5%下がるごとに、産廃ケーキの重量・輸送コストが大幅に削減されます。
産廃処理費の目安として約2万円/tと想定すると、年間数百トン規模の処理で数百万円の差になります。

マキノが難ろ過案件に採用する設計アプローチ

マキノは1932年の創業以来、6,000例以上の納入実績の中で様々な難ろ過性スラリーに対応してきました。
一品一様の設計思想のもと、スラリーの粒径・粘度・温度・圧縮特性を測定し、最適な圧力プロファイル・ろ布・機種を選定します。

ラボテストでは約10〜20リットルのスラリーサンプルをお預かりし、複数の圧力パターンで脱水試験を行います。
試験結果から「どの圧力プロファイルで何%まで含水率を下げられるか」を数値で確認できるため、導入前の性能予測の精度が高いです。

「今の機械を使い続けているが含水率が改善しない」という場合は、圧力プロファイルの最適化で対応できるケースと、機種・機構の変更が必要なケースがあります。
まず現状のスラリーデータと運転条件をご共有いただければ、どちらのアプローチが適切かを判断できます。

フィルタープレスの詳細はこちら


まとめ

難ろ過性スラリーへの対処で最も重要なのは、圧力を「いくら」かけるかではなく「どのタイミングでどの程度ずつ上げるか」という圧力プロファイルの設計です。
急激な加圧はケーキ層の詰まりを引き起こし、逆に脱水性能を低下させます。

ステップ加圧・多段圧搾はこの問題をケーキ層の形成プロセスに合わせた段階的な圧力制御で解決し、通常の単純加圧では届かない含水率水準を実現します。
マキノのWAP型は水圧圧搾と空気乾燥の組み合わせでさらに高い脱水性能を提供しており、難ろ過性スラリーの課題解決において有力な選択肢となります。

現状の含水率に課題があり、圧力を上げても改善しないという場合は、まずラボテストを通じて最適な圧力プロファイルを確認することをお勧めします。

ご質問・ご相談など
お気軽にお問い合わせください

FAQ|よくある質問

Q:ステップ加圧と単純加圧では、処理時間に差がありますか?


ステップ加圧は圧力を段階的に上げるため、1サイクルの時間が単純加圧より長くなることがあります。
ただし含水率が低くなることでケーキの重量・体積が減り、次工程の処理負担が軽減されます。
サイクルタイムと脱水性能のバランスは、処理量・スラリーの性質・目標含水率をもとにラボテストで最適点を探ります。

Q:既存の単純加圧式にステップ加圧の設定を後から追加できますか?


給液ポンプの仕様と制御盤の構成によって対応可否が変わります。
インバータ制御が可能なポンプとシーケンス制御の改修で対応できるケースもあります。
既設機の図面と現状の運転条件をご共有いただければ、改造の可否と費用をご提示できます。

Q:難ろ過性スラリーのラボテストには何リットルのサンプルが必要ですか?


スラリーの性質にもよりますが、概ね10リットルからポリタンク1本(20リットル程度)をお預かりできれば複数の圧力パターンで試験できます。
難ろ過性スラリーは条件を変えて複数回試験が必要な場合があるため、余裕を持った量をお持ちいただくとスムーズです。
まずご相談いただければ必要量の目安をお伝えします。

関連記事