「試運転してみてから調整すればいい」と考えていたが、いざ動かすと想定した脱水性能が出ない。そういう経験を持つ設備担当者は少なくありません。実機を動かしてからわかる問題の多くは、スラリーの性質を事前に測っていれば、設計の段階で対処できたものです。フィルタープレスの試運転条件は、スラリーデータを根拠にパイロットテストで検証し、その結果をスケールアップに変換することで、事前に確定できます。

「試運転してから考える」がなぜうまくいかないのか

液体に微細な固体が混じったドロドロの液体(スラリー)は、業種や工程によって粒径・粘度・温度・pHが大きく異なります。同じ「廃水スラリー」という名称でも、粒径が10μmと50μmでは、液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター(ろ布)への目詰まり速度が変わり、必要なろ過圧力の設定値も変わります。

試運転後に発覚する不具合の多くは「スラリーが想定と違った」に起因します。たとえば粘度が高いスラリーを想定外の速度で送ると、ろ布の表面に積み重なる固体の層(ケーキ層)が均一に形成されず、脱水ムラが生じます。圧力を上げて解消しようとしても、ろ布の損傷を招くだけで含水率は改善しません。

設備導入後にギャップが生まれる背景には、「スラリーの測定結果」と「フィルタープレスの設定条件」が切り離されたまま設計が進む、という流れがあります。スラリーデータがなければ、設計者は経験則と類似案件の数値を参考にするしかなく、その誤差が試運転時の問題として現れます。

パイロットテストで何を測るか 4つのスラリー特性

実機稼働の前にテクニカルセンターでパイロットテスト(小型機を使った事前試験)を行うことで、スラリーの挙動を実際のろ過条件に近い状態で確認できます。必要なサンプル量は概ね10〜20リットルで、現場から持ち込んだサンプルで測定可能です。

測定すべき項目は主に4つあります。

粒径分布は前提条件です。粒子が細かいほどろ過抵抗が高く、粗いほど低い傾向があります。同じ圧力で試験しても、粒径によって得られる含水率が大きく変わります。

粘度と温度の関係も欠かせません。スラリーの粘度は温度依存性が高く、10℃違うだけで流動性が変化します。実機で処理するときの温度帯を測定条件に揃えておかないと、パイロットテストの結果が実機に転用できません。

pHはろ布の材質選定を左右します。酸性・アルカリ性の度合いを確認せずに標準的なろ布を選ぶと、使用開始から数カ月で劣化が進み、交換サイクルが短くなります。

最後はろ過抵抗の実測値です。同じ圧力をかけたときに、単位時間あたりどれだけの液体が透過するかを測ることで、実機でのろ過速度の予測値を計算できます。この数値がスケールアップ計算の出発点になります。

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パイロットテストの結果を実機設計に変換する手順

パイロットテストで得たデータを、実機のフィルタープレス設計に変換するには順序があります。「とにかく含水率を下げたい」という要望だけでは、設計条件は決まりません。

まず目標含水率を確定します。分離後の固形分に残る水分の割合(含水率)を何パーセントにしたいかが決まらなければ、圧力条件も時間設定も計算できません。含水率が5%改善するだけで、産廃処理費(概算で約2万円/トン)に換算すると年間数百万円の削減につながる現場もあります。目標値は現場コストと照らし合わせて設定するのが現実的です。

目標が決まれば、パイロットテストで得たろ過抵抗の実測値をもとに、実機に必要なろ板枚数とろ過面積を計算します。処理量(1時間あたりのスラリー投入量)と目標サイクルタイムを掛け合わせると、必要な面積の概算が出ます。この段階で実機サイズの選定ができます。

続いて圧力プログラムの設定です。マキノでは「常に最大圧力が正解ではない」という考え方をとっています。大気圧の約15倍に相当する圧力(1.5MPa)まで対応できる設備でも、スラリーの性質によっては段階的に加圧するほうが含水率が下がることがあります。パイロットテストで複数の圧力条件を試し、最適なプログラムをデータで確認することが、実機稼働後のトラブルを防ぐうえで重要です。

仕上げはろ布の選定です。粒径・pH・スラリーの化学的性質をふまえて材質と目開きを決めます。ろ布の選択を誤ると、ケーキ層の剥離性が悪くなり、1サイクルごとの洗浄負荷が増えます。試運転前にこの4つの手順が揃っていれば、初回稼働からほぼ設計通りの性能を引き出せる可能性が高まります。

スケールアップで見落とされがちな2つの差異

パイロットテストと実機では規模が違うため、単純に比例計算するだけでは補いきれない差異があります。見落とされがちな点が2つあります。

一つは給液圧力の変動です。パイロット機は小さいため、ポンプから機体までの配管が短く圧力損失が少ない状態で試験しています。実機では配管が長くなるぶん、給液圧力が途中で落ちることがあります。スローアップ制御(ポンプの圧力を段階的に上げていく制御方式)を取り入れていない場合、初期給液の勢いでろ布が変形したり偏流が起きたりすることがあります。

もう一つはスラリーの経時変化です。テクニカルセンターに持ち込んだサンプルは採取直後と数時間後では粒子の沈降状態が変わっていることがあります。実機では連続的にスラリーが供給されるため、沈降が進んだ状態と新鮮な状態が混在します。パイロットテスト時にサンプルの経時変化も確認しておくと、実機稼働時の挙動予測が立てやすくなります。

こうした差異は、製品ごとのデータ蓄積がある機器メーカーに相談することで、スケールアップ係数として設計に反映させることができます。納入実績が6,000例以上あるマキノでは、業種・スラリーの種類ごとのデータを照合しながら実機設計に落とし込んでいます。

まとめ

フィルタープレスの試運転条件は、スラリーの粒径・粘度・温度・pHをテクニカルセンターで事前に測定し、パイロットテストの結果を実機スケールに変換することで、稼働前に確定できます。目標含水率の設定、必要ろ過面積の計算、圧力プログラムの決定、ろ布選定という順序で進めれば、試運転後の大幅な調整は最小限に抑えられます。「試運転してみてから考える」という進め方では、設備が動いてから初めて問題が表面化します。サンプル10〜20リットルから始められるテクニカルセンターでの事前試験を、実機導入の前工程として位置づけることが、現場での立ち上げをスムーズにする近道です。

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FAQ|よくある質問

Q:パイロットテストに必要なスラリーのサンプル量はどれくらいですか?


テクニカルセンターでの試験は、概ね10〜20リットルのサンプルがあれば実施できます。
大量のサンプルを用意する必要はなく、現場のバケツや容器に採取した量で対応可能です。
ただし、経時変化の影響を確認したい場合は、採取直後と数時間後のサンプルを複数用意しておくと、より精度の高いデータが得られます。

Q:含水率を改善するには、とにかく圧力を上げればよいのでしょうか?


スラリーの性質によっては、圧力を上げるほど含水率が改善するわけではありません。
マキノの設計思想では「常に最大圧力が正解ではない」としており、段階的に加圧する多段圧搾のほうが良い結果になるケースがあります。
最大1.5MPa(大気圧の約15倍)まで対応できる機種でも、パイロットテストで複数の圧力プログラムを試し、そのスラリーに合った条件を実測してから設定します。
圧力を上げすぎるとろ布の損傷が早まり、交換コストが増えることもあるため、データ根拠なしの高圧設定はリスクを伴います。

Q:含水率を改善するとコスト削減にどれくらいつながりますか?


産廃処理費は概算で約2万円/トンが目安です。
含水率が5%改善すると脱水後の固形物の重量が減り、年間の処理量によっては数百万円規模の削減効果が出る現場もあります。
たとえば月間100トンの処理量があれば、含水率5%の改善で月数十万円、年間では数百万円の差になり得ます。
パイロットテストで目標含水率を事前に設定する際、現場のコスト実態と照らし合わせると、どこまで脱水性能を上げる必要があるかが明確になります。

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