「ろ布を交換するたびに、思ったより費用がかかっている気がする」と感じている設備担当者は少なくありません。購入単価だけを見ていると、洗浄費・廃棄費・交換作業の手間が見えないまま積み上がっていきます。ろ布のランニングコストは、交換周期・洗浄方法・廃棄の扱いという3つの要素を合算してはじめて実態が見えてきます。

ろ布にかかる費用は「購入費」だけではない

液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター(ろ布)は、フィルタープレスの消耗品の中でも交換頻度が高く、年間コストに占める割合が大きい部品です。ところが、現場では「1枚いくら」という購入単価しか把握されていないことが多く、実際のランニングコストが可視化されないまま予算が組まれているケースが目立ちます。

ろ布のランニングコストは、大きく3つに分かれます。

  • 交換費(ろ布の購入費+交換作業の人件費)
  • 洗浄費(洗浄薬品・水道代・作業時間)
  • 廃棄費(産廃として処理する費用)

この3つを足し合わせたものが「ろ布の年間ランニングコスト」です。交換周期が半年か3年かで総額は大きく変わりますし、洗浄を適切に行えば交換周期自体を延ばせます。購入単価の安いろ布を選んだ結果、交換頻度が上がって総コストが増えた、というケースも現場ではよく起きています。

交換周期はなぜこれほど現場によって違うのか

「交換は大体1年に1回」と話す担当者もいれば、「半年もたない」という現場もあります。この差はどこから来るのでしょうか。

ろ布の寿命を決める主な要因は3つです。液体に微細な固体が混じったドロドロの液体(スラリー)の性質、ろ過にかける圧力、そして洗浄の頻度と方法です。スラリーに含まれる固体の粒子が細かいほど目詰まりが進みやすく、ろ布への負荷は高くなります。粒子が鋭利だったり、化学的に腐食性が高かったりすれば、物理的・化学的な劣化が早まります。

圧力の面では、運転開始直後に一気に高圧をかけると、ろ布に大きな初期負荷がかかります。マキノが推奨するスローアップ制御(徐々に圧力を上げる方法)を取り入れることで、この初期負荷を下げ、ろ布の寿命を延ばせます。目安として言えば、交換周期が半年だった現場がスローアップ制御の導入後に1年以上に伸びた例は珍しくありません。

洗浄タイミングの遅れも寿命を縮める大きな原因です。ろ布の表面に固体の層(ケーキ層)が残ったまま次のろ過を繰り返すと、目詰まりが固定化されて洗浄では回復できなくなります。「まだ使える」と判断を先送りにするほど、次の交換が早まるという逆説的な結果につながります。

洗浄費の実態と、コストを下げる考え方

洗浄にかかる費用は、水洗いだけで済む場合と薬品洗浄が必要な場合で大きく異なります。水洗いであれば水道代と作業時間が主なコストですが、化学薬品を使う場合は薬品代が加わります。また、逆洗(水を逆方向から通して目詰まりを押し出す方法)を自動で行う設備では、その頻度と水量もコストに影響します。

洗浄費を削ろうとして洗浄回数を減らすと、ろ布の劣化が早まり交換費が増えます。つまり洗浄費の節約は、交換費の増大とトレードオフになりやすいのです。コスト管理として意味があるのは「洗浄の頻度を下げる」ことではなく、「適切なタイミングで適切な方法で洗う」ことです。

マキノでは納入実績6,000例以上の現場データをもとに、スラリーの性質ごとの洗浄推奨サイクルをお伝えしています。適切な洗浄と点検を続けることで、消耗品コストを10%以上削減できた現場が実際にあります。

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廃棄費は「見えないコスト」になりやすい

ろ布を廃棄する際、多くの場合は産業廃棄物として処理が必要になります。産廃処理費用の目安は約2万円/t前後ですが、ろ布の素材や汚染物質の種類によっては特別管理産廃として扱われ、処理費が上がるケースもあります。

ここで問題になるのが、廃棄費が予算に計上されていないことです。購入費と交換作業費は明確に発注・支払いが発生するため記録に残りやすいのですが、廃棄は「その都度処理している」程度の認識で、年間累計額が把握されていない工場は少なくありません。

交換周期が短い現場ほど廃棄回数が増え、廃棄費の総額も増えます。交換周期を1年から2年に延ばせれば、廃棄コストもほぼ半減します。交換周期を延ばすことは、購入費の節約だけでなく廃棄費の削減にも直結するわけです。この視点を持てると、洗浄・点検への投資が「コスト」ではなく「削減手段」に見えてきます。

3つの費用を合算して、年間コストを試算する

では、実際にどう試算するかを見ていきます。

たとえば、ろ布を30枚使用している現場で、1枚あたりの単価が1万5千円、交換周期が1年、廃棄費が1枚あたり3千円だとします。年間の交換費は45万円(30枚×1万5千円)、廃棄費は9万円(30枚×3千円)になります。これに洗浄の薬品代・水道代・作業時間を加えると、ろ布だけで年間60〜70万円のランニングコストになっているケースは珍しくありません。

ここから交換周期を1年から2年に延ばせたとすると、交換費は22万5千円、廃棄費は4万5千円に下がります。差額だけで年間27万円以上の削減です。洗浄・点検にかかる費用が年間5〜10万円だとしても、差し引きで20万円前後の改善になります。

数年後の姿を思い描いてみてください。洗浄記録をつけ始め、スローアップ制御を導入し、ろ布の点検サイクルを定めた工場では、消耗品コストが落ち着き、突発的な交換作業も減っていきます。年間70万円かかっていたろ布コストが50万円を切る水準になり、その差額で別の設備投資を検討できる状態になります。それは、管理の方法を変えることで手が届く未来です。

まとめ

ろ布のランニングコストは、購入費・洗浄費・廃棄費の3つを合算してはじめて実態がわかります。交換周期を延ばすことは購入費の節減だけでなく廃棄費の削減にも効き、洗浄への適切な投資が結果としてトータルコストを下げます。現場のスラリー特性に合った洗浄サイクルの設定と、スローアップ制御の活用が、コスト管理の出発点になります。ろ布の管理方法にお悩みの場合は、マキノのテクニカルセンターにご相談ください。

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FAQ|よくある質問

Q:ろ布の洗浄頻度を増やすと、コストはどれくらい変わりますか?


適切な洗浄サイクルを守ることで、ろ布の交換周期が1年から2年程度に延びるケースがあります。
30枚使用・1枚1万5千円の現場では、周期が2倍になるだけで年間22万5千円以上の削減になります。
洗浄にかかる薬品代・水道代・作業時間を考慮しても、多くの場合は洗浄への投資を上回る削減効果が得られます。
ただし洗浄しすぎ(ろ布の繊維を傷める洗浄)も劣化の原因になるため、スラリーに合った洗浄方法の選定が重要です。

Q:スローアップ制御とは何ですか?ろ布の寿命にどう影響しますか?


スローアップ制御とは、ろ過運転の開始時に圧力を一気にかけず、徐々に昇圧していく制御方法です。
運転開始直後はろ布の表面にケーキ層がまだ形成されていないため、急激な圧力がろ布の繊維に直接かかります。この初期負荷を下げることで、ろ布の物理的な損傷を防ぎ、寿命を延ばせます。
実際に、交換周期が半年だった現場でスローアップ制御を導入後に1年以上の周期に改善されたケースがあります。
マキノのフィルタープレスでは、スラリーの特性に合わせたスローアップ制御の設定をご提案しています。

Q:ろ布のランニングコストを下げるために、まず何から手をつければよいですか?


最初の一歩として、現状の年間コストを「交換費・洗浄費・廃棄費」の3項目に分けて書き出してみてください。
多くの現場では購入費しか記録されておらず、洗浄費と廃棄費の合計が購入費を上回っていることに気づくケースがあります。
3つの数字が出れば、どこに削減余地があるかが自然に見えてきます。
その上で、洗浄サイクルの見直しやスローアップ制御の導入を検討すると、手を打つ優先順位が明確になります。
具体的な試算や管理方法については、マキノへお気軽にご相談ください。

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