
「板を締めてから排出まで、実際に何が起きているのか順を追って把握したい」——現場でそう感じる設備担当や技術者は少なくありません。操作マニュアルには手順が並んでいても、各工程の意味まで書かれていることはほとんどないからです。工程の意味がわかると、トラブル時の原因特定が早くなり、運転条件の調整にも根拠が持てるようになります。
この記事では、フィルタープレスの1サイクルを板締めからろ布洗浄まで全7工程に分けて、各工程で何が起きているかを順に解説します。
1サイクルとは何か
フィルタープレスは「バッチ処理」の機械です。原水を連続的に流し続けるのではなく、一定量のスラリー(液体に微細な固体が混じったドロドロの液体)を処理し、固形物を取り出したら次のバッチへ進む、という繰り返しで運転します。この一巡の流れを「1サイクル」と呼びます。
1サイクルにかかる時間は、処理するスラリーの性状や設定圧力によって30分から数時間まで幅があります。含水率(分離後の固形分に残る水分の割合)を低く抑えるほど圧搾・乾燥に時間がかかるため、目標品質とサイクルタイムのバランスを見ながら運転条件を決めることになります。
サイクルは大きく「圧入・脱水フェーズ」と「排出・準備フェーズ」の2つに分けて考えると整理しやすいでしょう。前者でケーキを形成し、後者でケーキを取り出して次のサイクルに備えます。
全7工程の流れ
工程1 板締め
サイクルの起点は、フィルタープレートを油圧シリンダーで強く押し締める「板締め」です。複数枚並んだプレートが密閉状態になり、スラリーを受け入れる空間(ろ室)が形成されます。
締め付け力が不足すると、スラリーを送り込んだときにプレートの隙間から漏れが生じます。マキノの機械では1.5MPa(大気圧の約15倍に相当する圧力)での圧搾に耐えられるよう、油圧力を設計段階から計算して締め付け力を決めています。板締めは「密封の確認」という意味でサイクル全体の前提となる工程です。
工程2 スラリー供給・圧入ろ過
板締めが完了したら、ポンプでスラリーをろ室へ圧入します。スラリーはろ布(液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター)を通過しようとしますが、固体粒子はろ布の表面に留まります。この固体が積み重なったものがケーキ層です。
ケーキ層が厚くなるにつれて、ろ過抵抗が上がります。同じポンプ圧でも送れるスラリーの量が減っていき、やがてろ液(ろ過によって分離された液体)の流量がほぼゼロになります。このタイミングが圧入ろ過の終点です。流量の低下を見て終点を判断するか、タイマーで管理するかは、スラリーの性状や現場の運用に合わせて決めます。
工程3 圧搾(圧搾式のみ)
圧搾式フィルタープレスの場合、圧入ろ過の後にダイヤフラム(ゴム製の膜)を膨らませてケーキを機械的に圧縮する工程が入ります。単純加圧式にはこの工程はありません。
ダイヤフラムの内側に高圧水または高圧空気を送ると、膜がケーキ側へ膨張してケーキ全体を均一に押し込みます。圧入ろ過だけでは抜けなかった水分が、この物理的な圧縮によってさらに絞り出されます。マキノの圧搾式では最大1.5MPaで圧縮できるため、スラリーの種類によっては含水率を50〜70%の範囲でコントロールすることが可能です。
圧搾工程は「同じサイクルタイムでより低い含水率を得たい」場合や、「ケーキを後工程でさらに乾燥させる前処理として水分を減らしたい」場合に有効です。
工程4 正ブロー・逆ブロー
圧搾が終わったあと、あるいは単純加圧式で圧入ろ過が完了したあとに行うのが、空気を使ったケーキ乾燥です。正ブローはスラリーの供給方向と同じ向きに圧縮空気を送り込み、ケーキの空隙に残った液体を押し出します。逆ブローはその逆方向から空気を通し、正ブローでは届きにくかった層の奥まで乾燥を進めます。
空気でケーキを乾かす発想はシンプルですが、圧力・時間・方向の組み合わせによって含水率の下がり方が大きく変わります。正ブロー・逆ブローを組み合わせることで、圧搾だけでは残りがちな水分をさらに低減できます。
工程5 ろ液排出完了の確認
ブロー工程が終わると、ろ室内に残っていたろ液がほぼ排出された状態になります。この時点でろ液の排出口からの流れが止まっていることを確認し、次の開板工程へ移ります。
ろ液が残ったまま開板すると、ケーキとともにろ液が落下して周囲を汚染することがあります。また、ケーキ自体の含水率も高いまま取り出すことになるため、後工程の負担が増えます。確認をひと手間かけることで、排出時のトラブルを防げます。
工程6 開板・ケーキ排出
ろ液の排出を確認したら、油圧シリンダーを緩めてプレートを開きます。プレートが1枚ずつ引き離されると、間に挟まれたケーキが自重で落下します。これを「ケーキ排出」と呼びます。
ケーキが自然落下しにくい場合は、プレートを振動させたり、ろ布を機械的に動かしたりして剥離を促します。ケーキの硬さや粘着性はスラリーの性状によって異なるため、排出方式も一品一様に設計することが重要です。マキノでは6,000例以上の納入実績の中で蓄積したデータをもとに、排出方式を案件ごとに最適化しています。
工程7 ろ布洗浄
ケーキを排出したあとのろ布には、細かい粒子が目詰まりしていることがあります。そのまま次のサイクルへ進むと、ろ過効率が低下するだけでなく、ろ布の寿命にも影響します。
ろ布洗浄は自動洗浄装置(高圧水スプレーが左右に走るタイプ等)を使う場合と、手動で水をかける場合があります。洗浄の頻度やタイミングはスラリーの種類によって異なりますが、定期的な洗浄はろ布の性能を長く保つうえで欠かせません。ろ布の耐用年数はメンテナンス次第で大きく変わるため、洗浄は「コスト管理の一部」として位置づけることをお勧めします。
単純加圧式と圧搾式でサイクルはどう変わるか
単純加圧式は「板締め→圧入ろ過→ブロー→開板・ケーキ排出→ろ布洗浄」という流れで、圧搾工程がありません。構造がシンプルで導入コストを抑えられますが、含水率の低減には限界があります。
圧搾式は圧入ろ過の後にダイヤフラムによる圧縮が入るため、同じスラリーでも単純加圧式より低い含水率でケーキを取り出せます。ブロー工程との組み合わせでさらに乾燥を進めることもできます。ただし、サイクルタイムは圧搾工程の分だけ長くなります。
どちらを選ぶかは、目標とする含水率・後工程の仕様・処理量のバランスで決まります。「含水率を5%下げることで年間の廃棄物処理費用がどれだけ変わるか」を試算したうえで検討すると、投資対効果を判断しやすくなります。
サイクルタイムに影響する3つの要素
同じ機械を使っていても、サイクルタイムはスラリーの性状や運転設定によって変わります。現場で調整できる余地を把握しておくと、処理量の改善につながります。
スラリーの固形分濃度が、サイクルタイムに最も直接影響します。濃度が高いほどケーキ層が速く形成されるため、圧入ろ過の時間が短くなります。逆に薄すぎると、ケーキ層が育つのに時間がかかります。
圧入圧力の設定も見落とせません。圧力を上げると初期のろ過速度は上がりますが、ケーキ層が圧縮されて目詰まりが早くなる場合もあります。スラリーによっては低圧でゆっくり送った方が、トータルのろ過時間が短くなることもあります。
ブローの時間と圧力は、含水率の目標値に合わせて調整する部分です。ブローを長くすれば含水率は下がりますが、その分サイクルが延びます。目標含水率に対してブロー時間を最適化することで、処理効率が上がります。
まとめ
フィルタープレスの1サイクルは、板締め→スラリー供給・圧入ろ過→圧搾(圧搾式のみ)→正ブロー・逆ブロー→ろ液排出確認→開板・ケーキ排出→ろ布洗浄の7工程で構成されます。各工程には「密封する」「ケーキを育てる」「水分を絞る」「乾かす」「取り出す」「次に備える」という明確な役割があり、どれかひとつを疎かにすると後工程に影響が出ます。工程の意味を理解したうえで運転すると、トラブルの兆候に気づきやすくなり、運転条件の調整にも根拠が生まれます。具体的な運転条件や機種選定については、ぜひマキノにご相談ください。
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FAQ|よくある質問
Q:1サイクルにかかる時間はどのくらいですか?
スラリーの性状や目標含水率によって異なりますが、一般的には30分から数時間の範囲です。固形分濃度が高く、含水率の目標が緩やかであればサイクルは短く済みます。圧搾工程やブロー工程を加えると含水率は下がる一方でサイクルは延びるため、処理量と品質のバランスを見て運転条件を決めることが重要です。
Q:圧搾工程を加えると含水率はどれだけ下がりますか?
スラリーの種類によって差はありますが、圧搾を加えることで単純加圧式に比べて含水率を5〜15%程度低減できるケースがあります。マキノの圧搾式では最大1.5MPaで圧縮できるため、難ろ過性のスラリーでも含水率50〜70%の範囲でのコントロールが可能です。含水率が5%下がると廃棄物の重量や輸送コストにも直接影響するため、投資対効果を試算したうえで判断することをお勧めします。
Q:ろ布はどのくらいの頻度で洗浄・交換が必要ですか?
洗浄頻度はスラリーの性状によって異なりますが、目詰まりが進むとろ液の流量が低下するため、定期的な洗浄が欠かせません。自動洗浄装置を導入している場合はサイクルごとまたは数サイクルごとに自動で洗浄が行われます。適切にメンテナンスを続ければろ布の耐用年数は数年に及ぶことも珍しくなく、交換コストを抑えることにもつながります。ろ液の流量や圧力の変化を日常的に記録しておくと、交換時期の予測に役立ちます。






