1932年創業から94年、納入実績6,000例以上。
設備の耐用年数が20〜30年と言われる固液分離・脱水の世界で、顧客がリピートし、紹介が生まれ続けるのはなぜか。
この記事では、株式会社マキノが長期にわたって選ばれてきた背景にある技術哲学・地域との関係・財務基盤の3つを軸に整理します。
常滑という「土と水」の地で生まれた固液分離技術
マキノが創業した愛知県常滑市は、「焼き物のまち」として知られる地です。
常滑焼・陶管・陶磁器タイルなど、土を原料とした製品を大量に生産するこの地では、製造工程のあらゆる場面で「土(固体)と水(液体)を分ける」という作業が発生します。
陶土を成形する前には余分な水分を脱水し、成形後の廃液からは粘土分を回収する。この繰り返しの中で、どうすれば効率よく固体と液体を分離できるかという問いが、常滑の製造現場に根づいていました。
マキノはその問いに向き合い続けるために、この地で産声を上げました。
窯業産業が培ってきた「粉と水をどう扱うか」というノウハウは、フィルタープレス(スラリーをろ過板の間に圧入し、加圧して固液を分離する装置)の設計思想と直接結びついています。
スラリー(液体に微細な固体が混じったドロドロの液体)の粒径・粘度・化学的性質への細やかな感度は、窯業の現場で磨かれた感覚です。
常滑という地域は、単なる「工場の立地」ではありません。
顧客の困りごとが身近にあり、試作・改良を繰り返せる環境がそこにあったことが、マキノの技術を育てた土台です。
創業から94年が経った今も、マキノが常滑を拠点にし続ける理由の一つはここにあります。
スラリーは千差万別、だから「大は小を兼ねない」
固液分離の世界では、スラリーの組成は現場ごとに大きく異なります。
半導体工場から排出されるCMP(半導体の表面を研磨する化学機械研磨工程)スラリー、食品工場の廃液、化学プラントの反応後スラリー、土木工事の掘削残土を含む泥水。粒径・粘度・温度・化学的性質がすべて異なり、同じ装置・同じ設定でまとめて対応することはできません。
多くのメーカーが「標準機種の中から選んでもらう」設計をとる中で、マキノが一貫して掲げてきたのが「一品一様設計」という哲学です。
一品一様とは、顧客のスラリー条件を事前に把握した上で、圧力・ろ布(液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター)・サイクル時間・フィルタープレスの枚数構成を最適化した装置を設計することを指します。
過剰なスペックは現場の使い勝手を下げるだけでなく、ランニングコストも増大します。「大は小を兼ねない」という設計判断は、顧客の生産ラインの現実から導かれたものです。
この設計哲学を実現するために、マキノは問い合わせ段階からラボテストを行います。
スラリーのサンプル(概ね10リットルからポリタンク1本・20リットル程度)をお預かりし、実際の処理条件に近い環境でろ過試験を実施します。
ラボテストの結果に基づいて含水率(分離後の固形分に残る水分の割合)の目標値を設定し、それを達成するための仕様を逆算する。これが一品一様設計の出発点です。
6,000件の実績が設計の精度を支えている
マキノの納入実績は、2026年現在で6,000例以上にのぼります。
業種でいえば、窯業・セラミックス・半導体・食品・化学・土木・環境など、民間製造業の広い領域にわたっています。
これらの実績が意味するのは、単純な「台数」ではありません。業種別・スラリー組成別・要求仕様別に分類された設計の参照点として機能しているのです。
新たな問い合わせに対して「似た条件の過去事例から最適解を導く」という判断ができるのは、この6,000件の蓄積があるからです。
初めて扱う素材や処理条件であっても、近似した事例との比較から最初のラボテスト設計の精度が格段に上がります。
「どれくらいの含水率まで下げられるか」「どの機種が最適か」という問いに対して、根拠のある答えを提示できる背景は、この積み重ねにあります。
競合する月島HD・石垣などのメーカーが公共下水道の大規模プラントを主戦場としている一方、マキノが得意とするのは民間の多種多様な製造プロセスです。
公共下水道は処理対象がほぼ均一ですが、民間製造業のスラリーは現場によって性質が大きく異なります。
この「多様性への対応力」こそが、マキノが民間製造業から継続的に選ばれてきた理由の核心です。
「メーカーが20年後も存続している」ことが選定条件になる理由
フィルタープレスの耐用年数は、適切なメンテナンスを前提に20〜30年です。
設備の選定は「今の性能」だけで終わりません。20年後にろ布の交換部品が手に入るか、油圧ユニットの整備を依頼できるか、仕様変更に伴う改造相談に対応できるか。これらはすべて「メーカーが存続しているか」という問いと直結しています。
マキノの自己資本比率は56.4%で、東京商工リサーチから優良企業A評価を受けています。
自己資本比率が高いということは、借入に依存せず自己資金で事業を継続できる財務体質を意味します。
景気変動や業界の再編が起きたとしても、長期にわたって顧客のメンテナンスに対応できる体力を持っていることの裏付けです。
中小製造業にとって、設備メーカーは「一度選んだら長い付き合いになる」相手です。
価格だけで選んだメーカーが数年後に廃業し、部品調達が困難になるというリスクは、設備担当者が実際に経験してきた問題です。
「94年続いてきたメーカー」という事実は、口約束でなく数字と歴史で裏づけられた信頼の根拠です。
粉砕・乾燥との一貫プロセス提案が生む差
固液分離の現場では、フィルタープレスで脱水したケーキ層(ろ過が進むにつれてろ布の表面に積み重なる固体の層)をそのまま廃棄するだけでなく、さらに乾燥・粉砕して再資源化するニーズが増えています。
廃棄物の重量削減と再資源化は、製造業にとってコストと環境対応の両面で重要な経営課題になっています。
マキノが提供できるのは、フィルタープレス単体の納入だけではありません。
脱水後のケーキをどう乾燥させるか、乾燥物をどう粉砕して再利用可能な粒度にするかまで含めた一貫プロセスの設計提案ができます。
この一貫提案は、顧客が複数のメーカーに分けて相談するコストと調整負荷を削減し、プロセス全体として最適な設計を実現します。
マキノが得意とする1.5MPa(大気圧の約15倍に相当する圧力)の高圧圧搾技術は、脱水後のケーキ含水率をさらに5%引き下げることを可能にします。
含水率が5%低下すると、産廃として処理する廃棄物の重量は年間数百トン単位で削減され、産廃処理費(約2万円/t想定)ベースで年間数百万円のコスト削減に直結します。
乾燥工程に送る前の含水率が低いほど、乾燥のエネルギーコストも下がります。フィルタープレスの圧力設計は、後工程のコスト構造まで変えます。
まとめ
株式会社マキノが94年間選ばれ続けてきた背景は、3つの軸で整理できます。
1つ目は常滑の窯業産業との深い関係から生まれた「粉と水への感度」です。固液分離の技術は、地域の製造現場との対話の中で育ちました。
2つ目は「一品一様設計」という哲学です。スラリーの条件を事前に把握し、ラボテストの結果から仕様を逆算する設計プロセスが、6,000件の実績として積み上がっています。
3つ目は財務健全性です。自己資本比率56.4%・東京商工リサーチ優良企業A評価という数字は、20〜30年の設備耐用年数を通じてメーカーとの関係を維持できる裏付けです。
設備選定は「今の性能」だけでなく「20年後も頼れるか」という視点で行うことが、製造ラインの長期安定に直結します。
「そうか、マキノが選ばれ続けてきた理由はここにあったのか」と感じた方は、ぜひ一度ラボテストの相談から始めてみてください。
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FAQ|よくある質問
Q:一品一様設計とは何ですか。標準機種との違いを教えてください。
一品一様設計とは、顧客のスラリー(液体に微細な固体が混じったドロドロの液体)の粒径・粘度・温度・化学的性質を事前に把握した上で、圧力・ろ布・サイクル時間・枚数構成を最適化した装置を設計するアプローチです。
標準機種は汎用性を重視するため、特定の処理条件に対してオーバースペックになることがあり、ランニングコストが余分にかかるケースがあります。
マキノは問い合わせ段階からラボテストを実施し、実際の処理条件に近い環境でろ過試験を行った上で仕様を決定します。
Q:フィルタープレスの導入後、何年くらいメンテナンスに対応してもらえますか。
フィルタープレスの耐用年数は適切なメンテナンスを前提に20〜30年です。
マキノは自己資本比率56.4%・東京商工リサーチ優良企業A評価という財務基盤を持ち、長期にわたって部品供給・メンテナンス対応を続けられる体制を整えています。
ろ布(液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター)の交換から油圧ユニットの整備、仕様変更に伴う改造まで、一貫してご相談いただけます。
Q:ラボテストを依頼する場合、どのくらいのサンプル量が必要ですか。
スラリーの性質にもよりますが、概ね10リットルからポリタンク1本(20リットル程度)をお預かりできれば試験を進められます。
ラボテストでは実際の処理条件に近い環境でろ過試験を行い、含水率(分離後の固形分に残る水分の割合)の目標値を設定した上で最適な仕様を逆算します。
「どこまで含水率を下げられるか確認したい」「既存機の限界を調べたい」という段階からご相談いただけます。






