
「もっと圧力を上げれば、もっと水が絞れるはずだ」と考えたことはないでしょうか。
直感としては自然ですが、その判断がスラリーの性質によっては逆効果になることがあります。
この記事では、圧力と含水率の関係に潜む誤解を整理し、スラリーごとに正しい加圧を選ぶための考え方をお伝えします。
「高圧=脱水改善」が成立するケースと成立しないケース
結論から言えば、「圧力が高いほど含水率が下がる」は半分正しく、半分誤りです。
どちらになるかは、処理するスラリー(液体に微細な固体が混じったドロドロの液体)の「圧縮性」で決まります。
高圧が有効なスラリー
炭酸カルシウムや珪砂のように、固体粒子が硬く形が崩れにくいスラリーは、圧縮性が低いといわれます。
圧力をかけても粒子の形は変わらないため、粒子どうしのすき間が保たれたまま水だけが押し出されます。
この性質のスラリーであれば、1.5MPa(大気圧の約15倍に相当する圧力)まで高めるほど含水率(分離後の固形分に残る水分の割合)を下げることができます。
高圧が逆効果になるスラリー
一方、有機汚泥や塗料廃液のように、固体成分が柔らかく変形しやすいスラリーは、圧縮性が高い性質を持ちます。
圧力をかけると粒子自体がつぶれ、ろ布(液体だけを通して固体を堰き止める特殊なフィルター)の表面に積み重なるケーキ層(ろ布上に蓄積する固体の層)が密閉状態になります。
水の逃げ道がふさがれるため、一定の圧力を超えると脱水が進まなくなる、あるいは処理時間だけが延びる、という現象が起きます。
現場では「圧力を上げても含水率が変わらない」「むしろ時間がかかるようになった」と感じるケースがこれに相当します。
圧力だけで脱水効果は決まらない 「圧力×時間×ろ布」の三要素
圧力の設定を正しく行っても、それだけでは十分でないことがあります。
フィルタープレスの脱水性能は、「圧力」「処理時間」「ろ布の種類」の三つが組み合わさって決まります。
圧力を上げても時間が足りなければ意味がない
ケーキ層が形成されるには一定の時間が必要です。
高い圧力をかけても、サイクルタイムが短すぎれば脱水は不十分なまま終わります。
「圧力を上げたのに改善しない」という現場の声には、時間設定の問題が隠れていることが少なくありません。
ろ布の目詰まりが圧力の効果を打ち消す
ろ布が詰まった状態では、圧力をいくら上げても水の通路が確保されません。
特にスラリーの粒径が小さく粘度が高い場合、ろ布の選定ミスが脱水不良の根本原因になっていることがあります。
圧力・時間・ろ布の三要素は相互に影響し合うため、どれか一つだけを変えて効果を評価しようとすると、判断を誤ります。
「最大圧力が正解ではない」という設計思想
マキノが1932年の創業以来、民間製造業6,000例以上の現場で積み重ねてきた知見の核心は、「常に最大圧力が正解ではない」という点にあります。
脱水の目標は「含水率を下げること」であり、「高い圧力をかけること」ではありません。
この二つを混同すると、設備を大型化・高圧化しても期待した効果が得られず、ランニングコストだけが増えかねません。
含水率が5%改善するだけで、年間数百トン単位の廃棄物重量が削減されます。
産廃処理費を1トンあたり約2万円とすると、年間数百万円のコスト削減につながります。
「とりあえず高圧」の判断では、このような改善余地を見落としたままになります。
最適圧力はテクニカルセンターでのテストで実測する
では、自社スラリーの最適圧力をどう判断するか。
マキノでは、導入前にテクニカルセンターでのテストを行い、実際のスラリーを使って最適な圧力帯を実測します。
概ね10リットルから、ポリタンク1本(20リットル程度)のサンプルがあれば試験を進められます。
このテストで確認する項目は、圧力と含水率の関係だけではありません。
処理時間を変えたときの変化、ろ布の目詰まり傾向、ケーキの剥離状態なども合わせて確認します。
この実測データをもとに、圧力・時間・ろ布の三要素を最適な組み合わせで設計するのが、マキノの一品一様設計の出発点です。
「他社で同じ用途の設備を導入したが含水率が目標に届かない」というご相談の多くで、圧力設定の見直しが改善につながっています。
導入済みの設備であっても、テクニカルセンターでのテストで改善余地を確認することは可能です。
スラリーの圧縮性によって選ぶべき機種が変わる
圧縮性の低いスラリーには、単純加圧式のフィルタープレスが適しています。
圧縮性の高いスラリーには、ろ布に内蔵されたダイヤフラムで物理的に絞り込む圧搾式(MDFWシリーズ等)や、水圧圧搾と空気乾燥を組み合わせたWAP型が有効です。
どちらの機種も「最大圧力を上げる」のではなく、「スラリーの性質に合わせた加圧方式を選ぶ」という発想で設計されています。
機種の選定を圧力スペックだけで比較すると、処理コスト・含水率・メンテナンス頻度でミスマッチが生じます。
スラリーの性質を起点に、機種・圧力・ろ布・サイクル時間を組み合わせて選べば、長期的なコストを下げられます。
耐用年数は適切なメンテナンスで20〜30年、投資回収期間は産廃コスト削減額次第で1〜3年が目安です。
まとめ
「圧力が高いほど含水率が下がる」は、スラリーの圧縮性が低い場合には成立します。
しかし有機汚泥や塗料廃液のように圧縮性が高いスラリーでは、一定以上の圧力がケーキ層の詰まりを招き、脱水効率を低下させます。
脱水性能は圧力だけで決まらず、処理時間とろ布の選定が組み合わさって初めて最適化されます。
マキノでは、スラリーのサンプルを預かってテクニカルセンターでのテストを実施し、最適な圧力帯と機種を実測データで提案します。
「圧力を上げても改善しない」「含水率目標に届かない」とお感じであれば、まずはテクニカルセンターでのテストの相談からお問い合わせください。
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FAQ|よくある質問
Q:スラリーの圧縮性が高いかどうかは、どうすれば事前にわかりますか?
テクニカルセンターでのテストで圧力を段階的に変えながら含水率の変化を実測するのが確実です。一般的に有機汚泥・塗料廃液・食品残渣は圧縮性が高く、炭酸カルシウム・珪砂・無機顔料は圧縮性が低い傾向があります。ただし同じ汚泥でも製造工程によって性質が変わるため、実サンプルで確認することをお勧めします。マキノでは10〜20リットルのサンプルからテクニカルセンターでのテストを受け付けています。
Q:現在使っているフィルタープレスの圧力設定を変えるだけで含水率は改善しますか?
スラリーの性質によります。圧縮性が低いスラリーであれば、圧力を段階的に上げることで含水率が改善するケースがあります。一方、圧縮性の高いスラリーでは圧力設定より処理時間の見直しや、ろ布の交換・変更が先に有効な場合があります。含水率が5%改善すると、産廃処理費ベースで年間数百万円の削減につながるため、まず現状のスラリー特性を把握することが出発点です。
Q:テクニカルセンターでのテストにはどのくらいの期間と費用がかかりますか?
期間・費用はスラリーの性質や試験条件によって異なりますので、まずはお問い合わせください。必要サンプル量は概ね10リットルからポリタンク1本(20リットル程度)です。テクニカルセンターでのテストの結果は、機種・圧力・ろ布・サイクル時間の設計根拠として使用するため、導入後のミスマッチを防ぐうえで有効です。すでに設備を導入済みで「性能が目標に届かない」場合も、改善余地の確認に活用できます。






